ブログパーツ FF35しようずwwwwwwww ジュドーとハマーンがくっついてシャアの反乱に出くわしたらこうなったのその5
RSS、アクセスランキング調整中
好きな女にこれ試してみろw反応ぜんぜん変わるぞ!new!
好きな女にこれ試してみろw反応ぜんぜん変わるぞ!new!

   FF35しようずwwwwの人気ページはここだ!

好きな女にこれ試してみろw反応ぜんぜん変わるぞ!new!
好きな女にこれ試してみろw反応ぜんぜん変わるぞ!new!

ジュドーとハマーンがくっついてシャアの反乱に出くわしたらこうなったのその5


848 名前:新ストーリー書き:02/12/02 16:20 ID:???
セイラの持って来たマイクロチップを受け取り数分後――、
カミーユはアナハイムエレクトロニクス社の材質開発部の担当者に会っていた。
セイラによって……、いや、シャアによってもたらされた
サイコフレームの開発を自家談判しに――。
「ですから、この設計の通りに造ってみて下さい」
突然にやって来た臨時のνガンダム開発担当者に、
職人肌の材質開発部が、すんなり「はい」と言うはずがない。
ましてや、その設計の出所をカミーユが決して口を割らないから尚更だ。
「オクトバーからは何も聞いていないぞ」
渋る担当者の気持ちを分らないでもない。
カミーユとて、シャアに与えられた設計など、喜んで使いたい気分ではないが、
自信の持てない機体を作って、アムロ・レイを見殺しには出来ない。


849 名前:新ストーリー書き:02/12/02 16:20 ID:???
「こっちが勝てなきゃ、意地張ったって仕方ないんだよ」
ミーティングルームで、サイコフレームの使用を渋るカミーユにジュドーが言った言葉だ。
シャングリラの連中は、頭が柔軟で楽だとカミーユは思う。
「男のメンツってものが無いのか!」
ひとり意固地になる自分に、あっ気らかんと
「ズルしてでも生き残った方が勝ちなんだよ」
「盗んだっていうんじゃない。あっちが勝手によこしたんだ」
「くれたもの使って、文句言われる筋合いは無いでしょ」
ときたもんだ。
(勝てなきゃ意味無い……、か……)
これまでのモビルスーツの開発の歴史を振り返ってみても、
情報の奪い合い、試作機の奪取の繰り返しだ。
カミーユ自身が乗っていたMK-Ⅱとてティターンズの新型だった。
(もう、後が無いんだもんな……)
宇宙に戦火が走る時は、刻一刻と迫っている。
それを、カミーユもジュドーも、ハマーンもピリピリと感じ始めている。
なんとしても、完璧な機体をアムロに渡さなければ。
(大尉には、この情報を流した事を絶対に後悔させてやる……!)
カミーユはセイラから受け取ったマイクロチップを手に、材質開発部へ急いだのだ。
「地球が救えるか救えないかが懸かってるんだ!造ってくれ!」
綺麗な顔立ちに似合わない罵声を上げるカミーユに圧され、担当者は思わず了解していた。








859 名前:新ストーリー書き:02/12/03 15:54 ID:???
カミーユがサイコフレームの設計の入ったマイクロチップを持って、
材質開発部に向かったのと同じ頃、
オクトバーはジュドーに呼ばれてミーティングルームにやって来ていた。
「作業クルーに加えて欲しいぃ!?」
最高の愛想笑いを満面に浮かべたビーチャ、モンド、エル、イーノを前に、
オクトバーの口はあんぐりと開けられたままだ。
「こいつら、俺の仲間なんだ」
拝むように言うジュドーだが、オクトバーの反応は決して良いものではない。
「うちはその辺の工場とは違うんだぞ」
「分ってますって」
モンドの軽口に、オクトバーの眉間のしわが深くなった。
「ジャンク屋だけど、腕はいいんだ。俺が保証する」
「別に人手が足りなくて困ってる訳じゃない」
確かに、アナハイムほどの企業に人手不足など無縁だ。
しかし、ジュドーも引き下がらない。
「俺と同じ、元、アーガマのパイロットだよ」
「そうそう。私たち、モビルスーツの事だったら、ただのジャンク屋の知識じゃないよ!」
「俺なんて、ネェル・アーガマの艦長代理までしてたんだぜ。
 あのロンド・ベルのブライト艦長に任命されてね!」
鼻高々にエルとビーチャは言うが、オクトバーはチラリとその風貌を見ただけだ。
「正社員にして欲しいって言ってるんじゃないんです。
 こんな時だから、何かお手伝いがしたいんです」
イーノの低姿勢にはオクトバーも聞く姿勢にはなったが、
それでも、結論ははじめから出ていた。


860 名前:新ストーリー書き:02/12/03 15:55 ID:???
「っう、うん!」
言い難い事を話す時、咳払いから始まるのはオクトバーの癖らしい。
「君らが地球の危機に協力したい気持ちがあるっていうのは分った」
「ふむふむ」と、モンドは身を乗り出した。
技術屋の最高峰、アナハイムに足を踏み入れる時が、刻一刻と迫って来ている気分だ。
が、「しかし……」の声にガクッとその上半身は崩れた。
「我々は企業です。一般人をこれ以上、開発ピットに入れるは、信用に傷が付く」
次の言葉はもう聞かなくとも分っている。
「君らの申し入れは、受け入れられない」
ジャンク屋風情を相手にしながら、それでも精一杯の誠意で律儀に頭を下げるオクトバーに、
ジュドーはそれ以上、何も言えなかった。
ドタバタの中で、戦艦に乗ったあの時の方が異常だったのだ。
これが、普通の大人の対応と言うものだ。


861 名前:新ストーリー書き:02/12/03 15:55 ID:???
「さぁってと!」
落胆で空気が淀むミーティングルームにエルの景気付けが響いた。
「私たちは、私たちのやり方で、ブライト艦長のお手伝いをすればいいのよ!」
「って言ってもどうやって……」
ビーチャもすっかりやる気を失しているし、
モンドなど、アナハイムを目の前にしながら入れなかったショックにうな垂れている。
「私たちジャンク屋でしょ?」
「あぁ……」
「ジャンク屋はジャンク屋にしか出来ない事すればいいのよ!」
「はあ?」
ひとり乗り気のエルだが、そのビジョンは一向に見えてこない。
「ネオ・ジオンが使えそうなジャンクを買い取っているっていうの、アレ、妨害しましょ!」
「妨害ぃ!?」
突拍子もない提案に、ビーチャらだけでなく、居合わせたオクトバーも、セイラも、
何を言い出すのかと目を見開いた。
「そうよ。ネオ・ジオンにはまともなジャンクは渡さない」
「って言っても、どうやって!?」
「ジャンク屋組合に掛け合うのよ。これでも私、組合では顔が知られてるんだから!」
どこから湧き出す自信なのか、もう成功したようなエルの自慢気な顔に、
ビーチャの表情も熱を帯びてきた。
「そ、そうだな……!ココで腐ってても仕方ない」
「そうだね。僕らに出来る事、頑張ってみよう」
「シャングリラ魂を見せてやる!ってね」
イーノもモンドも、もう先を見つめ、それぞれの顔に笑顔が浮かんでいる。
「ブライト艦長には世話になったもんね」
「世話してやったの間違いだろ!?」
イーノが言うのに、ビーチャが茶々を入れ、
ミーティングルームには、不謹慎ながら笑い声が飛んだのだった。


862 名前:新ストーリー書き:02/12/03 15:56 ID:???
「さあ、ジュドー、ハマーンさんも、サイコミュのチェックの続きが待ってるぞ。
 今日、明日にも、ロンド・ベルのメカニックが来るんだ」
シャングリラの面々の方向性が決まったところで、オクトバーが、仕事の顔に戻って言った。
「はいはい」
「了解した。オクトバー」
オクトバーに言われて開発ルームに戻ろうとするジュドーの後で、
ハマーンはリィナにそっと歩み寄った。
「すまんが、リィナ……」
小声で言うハマーンにリィナは分っていると頷いてみせる。
「心配しないで。私、付いていてあげるから」
要点を得ているリィナの賢そうな顔に、ハマーンは安心の微笑を見せ、
ジュドーとオクトバーの後を追った。
(大丈夫。今度は私が側にいてあげるから……)
リィナの視線の先には、沈んだ表情のセイラ・マスがいた。






892 名前:新ストーリー書き:02/12/05 15:55 ID:???
「どうしたんだ?」
遅れてνガンダム開発ルームへ来たハマーンにジュドーは訊ねた。
「いや」
ジュドーの質問には答えようとせずに、
ハマーンはサイコミュのチェックのための、ヘッドセットを頭に装着した。
カミーユが主となり設計したサイコシステムを、
ジュドーとハマーンが分担して、その動作確認のチェックをするのが、
今のところ、ここでのふたりの役割だ。
ガラス越しの分析ルームでは、白衣を着たアナハイムの担当者たちが、
これまでのデータを厳しい表情で睨んでいる。
いまひとつ、サイコミュの作動に俊敏さが足りない。
オクトバーが言うように、今日、明日にもロンド・ベルからは
メカニックがνガンダムの完成度を確認にやって来る事になっている。
施主からクレームが付くと分りきっている出来の今の段階を思うと、
人相すら変わりそうな厳しい状況だ。


893 名前:新ストーリー書き:02/12/05 15:56 ID:???
「ハマーン、シャアのした事、どう思う?」
分析ルームとの音声回線のスイッチを切って、ジュドーはハマーンに言った。
グラナダへ向かうベースジャバの中でも確認はしたはずだが、
ジュドーにはどうしても先程の、
ミーティングルームでのハマーンの苦笑が気になってしまう。
「サイコフレームの情報を流すシャアを、ハマーンはどう思うんだ?」
「その事か」
わざわざ回線を切ってまでも、ハマーンの本心を知ろうとするジュドーに対し、
ハマーンの態度は余りにもそっけなかった。
「そういう事をしたがる男なのだよ。あの男は」
「やっぱり、ハマーンにはシャアの気持ちが分るって言うんだな?」
「何が言いたい?」
「 ! 」
ジュドーの焼もちをハマーンは冷めた言葉で返した。
その瞬間に、分析ルームに置かれた脳波受信計が異様な数値を表示した。


894 名前:新ストーリー書き:02/12/05 15:57 ID:???
「うわっ、な、なんだぁ!?」
音声回線こそ切ってあったが、ふたりが装着したヘッドセットからは、
シャアの登場で、やり場のない苛立ちを抱えるジュドーの感情と、
いつまでも過去にこだわる、幼い恋人を冷ややかに見るハマーンの感情が、
数字という絶対的な値となって露呈しているのだ。
が、そんな事態に遭遇させられた分析官たちは堪ったものではない。
「フィン・ファンネルの回線を切り離せ!暴走するぞ!」
「何してんだよ!実験中でもないのに!」
「音声回線、被験者側で切断してあります」
「誰か、あそこ行って、ふたりを止めてこいよ!」
肉眼でこそ見えないが、ガラス張りの中のふたりの間には、
火花が飛び散っているようにすら見える。
当然、誰もそこへ飛び込もうなどという命知らずは居らず、
ガラスの向こう側の分析官たちの動揺も知らず、
ジュドーとハマーン、ふたりの苛立ちは高まっていた。






921 名前:新ストーリー書き:02/12/06 16:09 ID:???
「な、なんの騒ぎだ!?」
構内緊急ブザーで飛んで来たのは、
ほんの数分前にジュドーとハマーンを分析室に送り届けたばかりのオクトバーだ。
「分りませんよ!あのふたり、なんとかして下さい!」
「フィン・ファンネルへの回線はレジスターしてますが、こっ、これ以上は限界ですっ」
上ずった助手の声に、主任分析官は青くなるばかりだ。
軍属でもない、ただの研究者、技術者の集まりなのだから、
緊急事態に対する馴れなど持ち合わせていないのだ。
「ジュドーの奴、また暴走させる気か!?誰か、カミーユを呼んでくれ!」
こうなったら、同じニュータイプのカミーユ・ビダンしかない。
オクトバーが今までに出会ったニュータイプと言われる人種は、
νガンダムの関係で面識のあるアムロ・レイと、
技術屋として身分を隠して出会ったカミーユ・ビダンだった。
どちらも冷静沈着で、物事を広く大きく見れる人物だ。
それなのに、この、ジュドー・アーシタは
先のふたりよりも若いという事を差し引きしても、目先の事、感じた事にすぐ捕らわれる。
実際に、ハマーンの危機だと言って
ピット内でフィン・ファンネルが動き出した時には肝を冷やした。
「今度はハマーンも側にいるっていうのに、なんだって言うんだよ!?
 分析官、数値取っとけよ!」
誰もが緊張状態だというのに、さすがにオクトバーは仕事の事は忘れてはいなかった。


922 名前:新ストーリー書き:02/12/06 16:09 ID:???
そつないハマーンを前にしたジュドーの眉間には、似合わないしわが刻み込まれている。
「シャアの気持ちが分るっていうのは納得だ。ハマーンも潔かったもんな」
「だからお前は何が言いたい?」
珍しく毒つくジュドーの言い回しに、ハマーンの口調は冷たさを増す。
「俺との最後の決戦の時だってそうだ。ファンネルをたいして使わないで……!」
「一騎打ちと言ったろ?」
「だから、それがムカツクんだよ!」
今更、こんな大昔の敵対していた時の話を持ち出すつもりなど、
ジュドーにはもちろん無かったが、
ハマーンの冷ややかな視線がジュドーの苛立ちを増大させる。
「ハマーンのその潔さは、シャアから受け継いだものなのか!?
 シャアがこういう奴だから、ハマーンはこんな風に……!?」
もはやジュドー自身、何を言っているのか分らなくなっている。
シャアの行動とハマーンの行動。ダブる事柄が多過ぎるのだ。
シャアとハマーンの事など、エゥーゴとネオ・ジオンの対戦よりも、
もっと前、ハマーンがまだ宇宙の彼方にいた時の話だ。
関係無いといくら自分に言い聞かせようとしても、ジュドーはどうしたって、
ハマーンがシャアと出会った14歳の時を知らない。
その時、ハマーンがシャアをどんな眼差しで見ていたのかも。
分らなければ分らないなりに勝手に妄想は膨らんでゆく。
自分ひとりに見せているはずの、悲しいほどに儚いハマーンの姿も
あの、シャア・アズナブルは知っているというのか――!






946 名前:新ストーリー書き:02/12/09 00:17 ID:???
「ジオンが復活した事とかは関係無いんだ。
 ハマーンはシャアの事、本当はどう思っているんだ!?」
ジュドーはハマーンの肩を掴み、その体を勢いのままに振った。
その振動で自身のヘッドセットが床に飛び、
サイコシステムからジュドーの脳波は除去され、分析室の面々は胸を撫で下ろした。
が、数値の問題は去っても、ジュドーとハマーンの間の緊迫は以前続いたままだ。
それに、前の時にはサイコミュの受信装置など付けずして、
ジュドーはフィン・ファンネルを作動させた前科もある。
「カミーユはまだなのか!?」
さすがのオクトバーもその声は悲鳴のようになっていた。


947 名前:新ストーリー書き:02/12/09 00:19 ID:???
「ハマーン!ハマーンはシャアの事……!」
ハマーンに向かうジュドーは執拗に質問を繰り返す――。
「 !? 」
一瞬のハマーンの表情に、ジュドーの揺さぶりが止まった――。
と時を同じくして実験室の扉が乱暴に開け放たれた。
「ジュドー!ハマーン!」
飛び込んで来たのは、もちろん、緊急呼び出しで駆け付けたカミーユだった。
「何のつもりだ!?」
ハマーンに言い寄っていたはずのジュドーに、今度はカミーユが詰め寄った。
「カミーユさん……!?」
カミーユの勢いに呑まれながらも、
ジュドーはハマーンの一瞬の表情の変化を確かめるのは怠らない。
間違いない。ハマーンの目が特異に潤んでいる。
重力装置が作動している構内のため、
その真珠のような涙の粒はハマーンの瞳の中に留まったままだが、
真一文字に唇を噛み締めたその顔は、
カミーユによって強引にハマーンから引き離されるジュドーから、
決して逸れようとはしない。
あらぬ理屈で怒りに身を任すジュドーに対し怒り、失望と落胆の色すら見せている。
「ハマーン……!」
無言のままのハマーンの瞳が、ジュドーの荒ぶった心を冷却させる。
取り戻せない自分の口から発せられた言葉の数々。
「ハマーン……、ご、ごめ……」
「今がどういう状況か分らないわけじゃないだろ!頭冷やして来い!」
ジュドーが率直に謝ろうとした言葉は、全くもってタイミング悪く、
カミーユの罵声でかき消され、ハマーンの耳に届かなかった。
思わず耳を塞ぐ仕草をしたジュドーが、次にハマーンを見た時、
その瞳はもうジュドーを見詰めてはいない。
―― 拒絶 ――
ジュドーは自分のとった言動の幼さを最大級に後悔した。





971 名前:新ストーリー書き:02/12/10 17:35 ID:???
自分のしでかした言動に後悔とするジュドー。
分からず屋な幼い恋人を拒むハマーン。
一番大変な時に、公私混同するふたりに怒るカミーユ。
ニュータイプと言われながら、
それぞれに苦悩を抱えた3人がいるその実験室に、
オクトバーはじめ、分析官たちはなだれ込んだ。
第3者の介入で、先程までほどの緊迫感は消失してはいるものの、
ハマーンが装着したままのヘッドセットを外したり、
ジュドーが切断した音声回線を繋いだりと、
白衣姿の分析官たちはそれぞれに仕事をしている振りをしつつ、
全員がフィン・ファンネルを暴走させる寸前だった
“ニュータイプ”を訝しげに垣間見ている。
数値の上だけでニュータイプを考察する者が、
ジュドーとハマーンの意識レベルでの衝突に興味を持たないわけが無い。
「どういう事なんだ?」
オクトバーが問いただす言葉にも当然、聞き耳を立てた。
が、訊ねておきながら、オクトバーにはその答えを催促する様子がない。
「何があったか知らないが、またファンネルが暴走する所だったぞ。
 頼むから、グラナダを火の海にするのは止めてくれよ」
大人の取り繕った笑顔で、なだめるように言ってみるだけだ。


972 名前:新ストーリー書き:02/12/10 17:36 ID:???
ジュドーとハマーンが男と女の関係であり、
想像も付かないような高い壁を乗り越えて共に生きていようとも、
ジオンが復興した今、ふたりに揉め事が生じないはずが無い。
ふたりの口論の原因など、大人の視点で少し考えれば分る事だからだ。
しかし、だからと言って、今はその問題解決に時間を割く暇は無い。
(ふたりの問題は棚上げだ)
つまらない仕事人間だと自分でも思うが、今はそうでなければいけない。
「さあ、実験に戻るぞ」
オクトバーは、子供に言い聞かせるような口調で、場の空気を元に戻した。


973 名前:新ストーリー書き:02/12/10 17:37 ID:???
分析官がそれぞれの持ち場へ戻ろうとした、その時、
オクトバーを呼び出すアナウンスが鳴った。来客の旨を知らせる内容だ。
「ちっ、まだ未完だっていうのに……」
当然、その来客者はロンド・ベルから
νガンダムの開発状況の確認のため訪れたメカニックである事は、
日頃からオクトバーのボヤキを聞いている者にはすぐに分った。
「遊んでる暇は無いんだぞ。みんな持ち場に戻ってくれ」
言いながらオクトバーが一番その体を重そうに実験室のドアへ向かう。
――と、その体をすり抜けるようにジュドーが先にドアを抜けた。
「俺が行く」
「 !? 」
軽い身のこなしのジュドーは、オクトバーらが呆然とするその前で、
とっとと、手近にあった、カミーユの乗って来たエレカバイクにまたがっている。
「ちょっと頭冷やしてくる」
「な、何言ってんだよ!?」
「ブライトさんトコからの、お客さんを連れてくればいいんだろ?
 頭冷やしついでに行ってくるって言ってんの」
オクトバーの額には冷や汗が噴出しているが、
そんな事はお構いなしに、ジュドーはエレカバイクのグリップを廻した。
青くなるオクトバーの後にハマーンの姿が見える。
ジュドーの突飛な行動に驚いてはいるようだが、止めようという気配は全く無い。
(ホント、ごめん……。ハマーン……)
ジュドーは、嫌な自分をかき消すようにバイクに加速を掛けた。






25 名前:新ストーリー書き:02/12/12 16:20 ID:???
「あぁ!もう、どうすればいいんだよぉ!?」
オクトバーの悲観した嘆き声に、分析官たちは触らぬ神になんとやらで、
そそくさと持ち場に戻っている。
実験室に乗り込んだ時の取り繕った態度は、
ロンド・ベルからの来客と、ジュドーの身勝手な行動で見事に崩れている。
そんなオクトバーに、カミーユは少しでも和らぐ情報をもたらしてやるのだった。
「明日にでも材質開発部から、サイコフレームが届くでしょうから、
 それを装備すれば、だいぶマシになりますよ」
「サイコフレーム……?」
涙目に近いオクトバーは、初めて聞く名称にカミーユを怪訝そうに覗いた。
「材質開発部がやってくれたんですよ」
その情報がシャアからもたらされたものである事を、カミーユは咄嗟に伏せた。
どういう理由でか、それがいいと直感したからだ。
「詳しくは材質開発部から説明があると思いますが、
 アレを使えば、サイコミュの伝達は格段に早くなります」
「本当か……?」
崩れ落ちそうだった体を持ち直したオクトバーに、笑顔を見せるカミーユは、
アナハイムほどの企業で遣り甲斐のある仕事をするのも、楽ではないと思った。
モビルスーツ1機開発するのに、何人の技術者が心労で倒れるのだろう?
苦労して作り上げた機体、それが戦場では一瞬の判断ミスで宇宙の塵となるのだ。
もちろん、パイロットも命がけだが、このオクトバーの様子を見ていると、
モビルスーツでの戦闘は、パイロットひとりで成り立つものではないと実感出来る。
(僕も、人に生かされていたんだな……)
カミーユの脳裏にかつての愛機Zガンダムの印象が浮かんだ。


26 名前:新ストーリー書き:02/12/12 16:20 ID:???
「あ、さっきの騒動の数値、取ってありますよね?」
「ん?あ、ああ……」
「いちお、システムの中に組み込んでおいてください」
カミーユに言われなくとも、了解するオクトバーにそのつもりはあった。
ただでさえ、工期が無い状況なのだ。
偶発的な事故のようなものでも、サイコシステムに読み込ませる例示は多い方がいい。
しかし、これが結果的にひとりのパイロットの死につながるとは、
この時、誰も予想だにしていなかった。


27 名前:新ストーリー書き:02/12/12 16:21 ID:???
ジュドーが去った方向にジッと目を向けたまま黙していたハマーンは、
カミーユとオクトバーの会話など耳に入らず、
「ふっ」と小さなため息をついて実験室の中に戻ろうとしていた。
ジュドーが去った虚脱感――。
ハマーンもまた、ジュドーに拒絶された思いでいたのだった。
(お前も私の前から去るというのか……)
自分にも否がある事は分っている。
しかし、すでに封印した、10代の時の話まで持ち出されて、
相手の機嫌を取って会話が出来るほど、ハマーンも出来てはいないのだ。
「ハマーン」
冷えた箱(実験室)の中に戻ろうとするハマーンの背中をカミーユが呼び止めた。
「なんだ?」
振り返るハマーンの瞳には、虚脱感も悲壮感も表れてはいない。
ジュドー以外の人間に、自分の弱いところを見せるなどという事は、
たとえ、相手がカミーユであろうとも、ハマーンには生理的に出来ない行為なのだ。
しかし、そんなハマーンの態度が、カミーユの修正本能を駆り立てた。
「この際だから、話しておきたい事がある」
言ったカミーユの言葉は本心だ。
前から一度、ハマーンにはジュドーの本音を伝えておきたかった。
「そうか」
カミーユを実験室の中に通したハマーンは、
ご丁寧に分析官が復旧しておいた音声回路を、自らオフに切り換えた。






42 名前:新ストーリー書き:02/12/13 22:12 ID:???
「聞こうか、話とやらを」
被験者用の有線がいくつも繋がれたシートに、足を組んで座ったハマーンは、
持ち掛けておきながら、無言のままのカミーユに発破を掛けると、
そんな態度にあからさまにムッとしたカミーユは、
被験者用とは違う、手近にあったただの椅子に腰掛け、ハマーンを見た。
掛けたシートの種類が違うので、位置的に、ハマーンを見上げる格好となるのだが、
カミーユは、それがアクシズの戦艦、グワダンで
初めてハマーンに会った時を思い出させた。
「どうした?」
更に蔑んだようなハマーンの言葉にカミーユの血はふつと沸く。
(この人……、クワトロ大尉と同じ……)
悲しいかなハマーンは、カミーユにもまた、シャアと同じと見られていた。
「ジュドーが悩むのも無理ないな」
カミーユの言葉に、肘置きに付いた片腕の上の頭部を「ん?」と上げる。
やっと人の話を聞く態度になったハマーンに、カミーユは言葉を続けた。
「自分とハマーンは、目隠しでロープを渡っているようなものだ。
 ジュドーが僕にそう言っていた」
「目隠しでロープを……?」
ジュドーからその言葉を聞いたのは、グラナダで再会したその日だった。
日にちにしてほんの3、4日前の事なのだが、
ナナイとギュネイの特攻やら、νガンダムの開発、セイラ・マスの来訪と、
ドタバタが続いていたので、随分と前のような気がする。
が、ジュドーとハマーンの姿を見るたび、ずっと気になってはいたのだ。


43 名前:新ストーリー書き:02/12/13 22:13 ID:???
「ジュドーがどんな想いで、あなたと生きてきたか、考えた事はあるんですか?」
「ふっ、何を言い出すかと思えば……」
真剣なカミーユに対し、ハマーンはやはり、
ジュドーを相手にしている時と同じ、冷めた口調で切り返した。
「そのような事、お前に答える必要があるのか?」
その返答はあまりにも横柄で、カミーユの眉は不機嫌にピクリと動いた。
「僕は、ジュドーに幸せになってもらいたいんですよ。
 敵味方を超えて、解り合えることを証明しようとしているジュドーだから……!」
「ほぉ。それで私に説教か……」
揚げ足を取るハマーンに、カミーユの我慢も限界に近い。
が、ハマーンにもハマーンの事情がある。
ジュドーの逃避に、追い討ちを掛けるようなカミーユの言動で、
こんな器の小ささは認めたくはないが、立腹しているのだ。
「誰が貴様に私の腹の内を見せるなどと言った?
 ズケズケと人の心に入り込もうとするな」
「なっ……!?」
どうしてこんな女とジュドーは一緒にいるのか理解に苦しむ。
人と人の話の仕方も知らないような高飛車な女の何が魅力なのか……!


44 名前:新ストーリー書き:02/12/13 22:14 ID:???
カミーユがどんな風に自分を感じようと、
しかしそれは、ハマーンにしてみれば、カミーユの勝手な思いでしかないのだ。
ファや、また、フォウには必要とされるカミーユであっても、
ハマーンが必要としているのは、ジュドー・アーシタただ一人であり、
それ以外の者に、己の心の内を見せるつもりなど毛頭無い。
されど、相手があの、カミーユ・ビダンともなれば、
ハマーンの意志には関係なく、入り込まれた経験もある。
冷たい言葉の数々は、ハマーンにとって、カミーユを牽制する狙いも含んでいるのだ。
「お前は私に、ネオ・ジオンの女でありながら、その命を救い、
 共に生きると言うジュドー・アーシタに、
 口答えせず、日々感謝して過ごせと言うのか、カミーユ・ビダン?」
「僕は、そんな事は……!」
「どうかな……?男という者は、すぐに女を支配したがる」
本心を見透かしたようなハマーンの言葉に、カミーユは反発の言葉を失った。
「世の中の女が、全てファのような従順な女だと思うなよ」
修正するつもりのカミーユは、ハマーンに見下ろされ、
逆に、ファとの事まで指摘されている。
男にとってこれほどの屈辱は無く、それでも、なんとか、
カミーユは目の前のフェミニストを睨みつけた。




66 名前:新ストーリー書き:02/12/17 15:40 ID:???
「しかしな……」
カミーユがこれ以上ないというほどの厳しい目つきで見上げた相手の
その声は、一気に戦意を失わせた。
「しかし……、な……」
同じ言葉を繰り返すハマーンの目は、カミーユとは違う、あらぬ方向に向けられ、
実体の無い、どこか遠くの残像を見ようとしていた。
(な、なんだ……?)
先程までの強い女の目と違う、寂しい瞳に、カミーユには
ハマーンが別人になったかのようにすら見える。
「ジュドー・アーシタは違う……」
ポツリと呟く声は、かつて聞いた事の無いハマーンの声だった。
「ジュドー・アーシタは私を利得関係なく愛そうとする……」
去ったジュドーの事を想う時、ハマーンはそこにカミーユの存在を忘れた。
ジュピトリスⅡで、半ば無理やりにルー・ルカから奪った時――、
ムーン・ムンでお互いの気持ちを確かめ合った時――、
身を隠してコロニーを転々として過ごしていた時――、
出会った記念日だと、柄にもなく薔薇の花束をプレゼントされた事さえあった。
思えば、ジュドーはいつもハマーンの身を案じ、
決してその身と心を支配しようなどとはせず、対等な立場で共に生きてきた。
“戦争犯罪人を庇ってやっている”などという態度は一度たりとも無かった。
それは、シャングリラの面々にも伝染し、
ハマーンはかつて無い、平穏な時を過ごしてきたのだ。
ジュドーがハマーンを愛し、ハマーンも、それに劣らずジュドーを愛していたから。
「ジュドー・アーシタ……」
呟くハマーンを前に、カミーユはただひとり取り残されていた。


67 名前:新ストーリー書き:02/12/17 15:41 ID:???
ハマーンがジュドーを強く想う時、エレカバイクのグリップを握るジュドーもまた、
ハマーンとの日々を思い出していた。
強気で素直でなく、恐ろしいほどに頭の切れるハマーンを、
ジュドーは誰よりも、何よりも大切に想っていた。
冷たい言葉でジュドーをあしらうのは、何も今日が初めてという訳ではない。
いや、むしろ、毎日がそうなのだ。
しかし、それでも時々、ハマーンは過去の自分を思い出した時、
戦いで死んでいった者たちの事を思う時、
いつも、まるでその場から消えてしまいそうなほど、果かなく、
そんなハマーンをジュドーが労わると、
その時だけは素直にその胸に顔を埋めるのだった。
ハマーンのポーカーフェイスは、
たったひとりでジオンの上に立っていた者の名残であり、
ハマーン・カーンというひとりの女性の本当の姿を、自分だけは知っていたのに、
それをこの、ハマーンが一番微妙な時に限って理解していなかった。
「クソッ……!」
アナハイムの構内はさすがに広く、風を頬に受けるのも気にせずに、
高速運転するジュドーは、自責の思いが声になっていた。
実験室の中、無情にも過去を蒸し返す自分を前にしたハマーンの涙――。
身勝手に頭を冷やすと言って自分が飛び出した後、
ハマーンはどうしているのだろうか。
「あぁ、もう!早く帰ってハマーンの事、抱きしめたい!」
そう願うからこそ、ジュドーのバイクはますますスピードを上げた。






78 名前:新ストーリー書き:02/12/19 17:46 ID:???
「――ジュドー?」
サイコミュ実験室のハマーンに、
ジュドーの願いはニュータイプ独特の、テレパシーのような形で届いていた。
カミーユへの威嚇すら忘れ、ジュドーへの想いに耽っていたハマーンは、
「ハッ」と周囲を見渡し、
そこにいる気配がジュドーではなく、カミーユ・ビダンである事実で、
やっと、自分がトリップしていた事に気が付いた。
「カミーユ・ビダン……」
「なんですか……?」
素っ気無い、呆れたようなカミーユの声は、ハマーンが感知していたものと同じものを
カミーユもまた、感じていた事を証明していた。
「別に……、夫婦喧嘩は犬も食わないって言いますからね」
「なっ……!?」
飄々としたカミーユの言動に、ハマーンは言い返す言葉を探したが、
耳まで赤くなるだけで、都合の良い台詞を見つけられない。
「あなたとジュドーに何があろうと勝手ですがね、
 νガンダムの開発に支障を来たす事だけは、今後一切、やめて下さいよ」
もうしばらく、ハマーンをいたぶってやるのも面白そうだとも思ったが、
カミーユはぐうの音も出ないハマーンに捨て台詞を残して、実験室を後にした。
さすがに、自分の中の紳士的な部分が、退室が最善と警告していたからだ。
しかし、その顔は、実験室に入った時とは別人かのように妙にニヤけ、
それだけで、ハマーンにダメージを与えるには十二分だった。
(くっ……。カミーユ・ビダンめ……)
ハマーンの羞恥心はピークに達していた。


79 名前:新ストーリー書き:02/12/19 17:46 ID:???
(何だよ、心配して損したってヤツかよ)
ふて腐れながらも、どこか清々しい気分がするのは、
やはり、ふたりの純粋な愛情に触れたからだろうか。
(ジオンだ、シャアだ、なんて言葉が飛び交ってるんだ。揉めるのも無理ないしな……)
カミーユの脳裏にハマーンの寂しげな表情が浮かんだ。
普段とのギャップは余りにも激しく、嫌でも記憶にしばらくは残りそうだ。
(あんな顔見たって言ったら、ジュドーに恨まれるかもな)
材質開発部へ向かおうにも、乗って来たエレカバイクはジュドーに奪取されていた。
とりあえずで、移動用のグリップを握ると、前方からファの接近が目に入った。


80 名前:新ストーリー書き:02/12/19 17:47 ID:???
「カミーユ!」
手前でグリップから手を離したファは、
軽重力の下、勢いに任せてその身をカミーユに体当たりさせた。
嗅ぎ慣れたシャンプーの香りがカミーユの鼻腔をくすぐる。
「ファ……」
ジュドーとハマーンに当てられた後だからだろうか、
ファの体の温もりがカミーユには心地よかった。
が、ファの口から発せられた言葉は、色めいたものからはかけ離れていた。
「ハマーンの事、虐めてたんですって!?」
「はぁ!?」
誰から聞いたのか、随分湾曲した解釈でヘソを曲げるファに、カミーユの方が驚いた。
「ハマーンはね、今、すっごく辛い想いをしているのよ!
 そんな事も分らないなんて、男って、ほんっと、デリカシーが無いんだから!」
どうやら、ファがこの状況下、ハマーンを一番理解していたらしい。
ギュネイの襲撃の前に、カミーユとの事を相談に乗ってもらった事が、
ファにはかなり、ハマーンの深層心理を理解するきっかけになったらしい。
「だいたい、カミーユは、女心ってものをちっとも……!」
キャンキャンと耳元でハマーンを庇う台詞を並べるファに、
カミーユは耳を塞ぎたい思いだが、そんな行為は拍車を掛けるだけだと学習済みだ。
「どこが従順なんだよ……?」
ハマーンの言葉を思い出し、困惑気味に独り言をいうカミーユに、
「なんの話よ!?」
と、ファの罵声が浴びせられた。






102 名前:新ストーリー書き:02/12/21 12:22 ID:???
「ここが正面ゲートねぇ~」
アナハイムエレクトロニクス社の、正規の通用口に辿り着いたジュドーは、
ようやく着いた安堵感で、「ふうっ」と息を漏らした。
広すぎるほどの構内をエレカバイクを飛ばしたジュドーだが、
考えてみれば、元々、正規ルートで入構していないのだから、
本来の玄関口に来るのは初めての事だった。
その立派過ぎるほどの正面ゲートの脇にある詰め所に、
係の者がたまたま不在だったので、
ジュドーは迷わず隣室の待合所風の部屋に顔を突っ込んだ。
「あれぇ~?」
数組の応接セットが点在するその部屋はガランとし、
見渡したところ、ひとりの女性の姿しかない。
「もうどっか、行っちゃったのかなぁ?」
独り言をブツブツと呟くジュドーの事を、それまで、
その身にはやや大きそうなファイルに目を落としていた女性の方が気にしている。
「まさか……、んな訳無いしなぁ~」
いちお、ただひとりの在室者の様子も確認してみるが、
濃紺色したショートカットが似合う女性は、どう見ても、軍属とは程遠い。
せいぜい、納品の確認に来た部品屋の一人娘といった風だ。


103 名前:新ストーリー書き:02/12/21 12:23 ID:???
「どうしよ。オクトバーさんに聞いてみよっかな……」
せっかくバイクを飛ばして来たというのに、
肝心の来客を連れずして戻るは、男の能力を問われる。
「あ、ちょっと、お邪魔しますよっと……」
いちお、レディーのいる部屋に踏み込む事に断りを入れて、
ジュドーは待合室内の内線電話に取り付こうとした。
「オクトバーさん、まだ実験室にいるかな?」
――と、先程から連呼される知る名前に反応し、
それまで浅くソファーに腰掛けていた、彼女の方が急に立ち上がった。
「あなた……、オクトバーさんの所の方……?」
言われて、手に取りかけた受話器から目を離し、振り向いたジュドーは、
初めて、その女性が、軍服らしい服装でいる事に気が付いた。
ソファーに腰掛けた状態では、
ファイルが邪魔をしてその頭部しか視認出来ていなかったためだ。
ジュドーも初めて見るデザインだが、
部品屋の一人娘と思い込んでいた女性は、軍服を可憐に着こなしている。
「え?あなたがブライトさんのトコから来た……?」
「ロンド・ベル隊所属、チェーン・アギです。よろしく」
スラリと背筋を伸ばした状態で右手を差し出す姿は、確かに、軍人らしい行為だ。
チェーンと名乗った女性の軍属離れした容姿に、一瞬ドギマギとはしたものの、
考えてみれば、アーガマのクルーは軍服すら着ない、子供の集団だったようなものだ。
今更、年若い可愛い女性が軍人だからって、驚いてもいられない。
「あ、俺、ジュドー・アーシタ。νガンダムの開発のお手伝いさせてもらってる」
ハマーンとは違う、苦労を知らなそうなその白い手を、
「へへ。どうも」
ジュドーは愛想笑いで握り返した。






122 名前:新ストーリー書き:02/12/24 12:35 ID:???
「えぇ!?コレに乗って行くんですかぁ!?」
エレカバイクに案内したチェーンの顔は地で驚いている。
(やっぱ、バイクはまずかったかなぁ~?)
あの状況で、手っ取り早く逃げ出すために目に付いたバイクに飛び乗ったのだが、
まさか、ロンド・ベルのメカニックが“女の子”とは思ってもいなかった。
しかし、かといって、この目の前のバイクの他に移動の手段がある訳でもない。
「しっかり掴まってれば大丈夫だから」
不安一杯そうなチェーンに、ジュドーは精一杯の笑顔で無理やりに納得させるのだった。
「ホント、すぐだから。νガンダムの開発エリアは!」
言ってはみるが、ここに辿り着くには結構長かった。
(ったく、どうしてよりによって、一番奥に割り当てたんだよ!)
腹の中とは裏腹に、ジュドーの作り笑いはチェーンを前にヘラヘラとしている。


123 名前:新ストーリー書き:02/12/24 12:36 ID:???
「そうそう。そこに足を置いて、手は俺の腰を抱いてくれればいいから」
両足を踏ん張り、バランスを取りながら説明するジュドーの後に、
何とかチェーンは跨った。
スタータースイッチで音も無く火が入る。
「こうですか?」
言われたままに腰に腕を回すチェーンに頷くと、
ジュドーはアクセルを回し、発進態勢に入った。
――と、
「お兄ちゃん!?」
ヘルメットを被らないジュドーの耳に直接聞こえたのは、
他ならなぬ、妹、リィナのジュドーを呼び止める声だ。
声の方向に振り向くと、リィナの背後にセイラ・マスもいる。
「なっ、お前っ、こんなところで何やってんだよ!?」
上半身だけで振り向くジュドーに、リィナは何故だか怒り顔で突進して来る。
「お兄ちゃんこそ、ガンダムのお仕事はどうしたのよ!?
 こんなところで、女の人とサボってるなんて、どういう事よ!?」
「はぁ?」
“女の人と――”そう言われて初めてジュドーは自分の腰をしっかりと抱く、
チェーンの存在を思い出した。
チェーンの方も、何が起こっているのか分らずにしがみ付いたままだった体を、
リィナに言われて慌てて離した。

124 名前:新ストーリー書き:02/12/24 12:37 ID:???
「お兄ちゃん!ハマーンさんを泣かせるような事して、平気なの!?」
リィナの目は、完全に浮気現場を取り押さえた小姑になっている。
「な、何言ってんだよ!この人はぁ~!」
慌てれば慌てるほど言い訳のように見えてしまうのだが、
そんな事は、浮気をごまかした経験など無いジュドーには分らない。
「何よ!?」
問い詰めるリィナの方もまだまだ幼いので、
冷静に見れば何の関係も無いと分りそうなものを誤解し、勝手に怒っている。
「大体、お兄ちゃんはいつもいつも……!」
「いつもって何の話だよ!?」
「さっきだって、ハマーンさんのすっごい悲しそうな波動が!」
ハマーンの辛く悲しい気持ちは、やはり念派となって発信されていたらしい。
それを、感受性の豊かなリィナは敏感にキャッチしていたという訳だ。
「そ、それはぁ……」
言われていることが事実なだけに、ジュドーは蛇に睨まれた蛙だ。

そんなふたり困惑するチェーンに、セイラが手を差し出した。
ジュドーの後から降りようにも、どこを足場にして良いのかも分らず、
オロオロとするチェーンの、支えになるように出したのだ。
「すみません」
ハラリとプリーツスカートを泳がせて降り立ったチェーンは、セイラに礼を言い、
急に崩れたバランスと、その声で、ジュドーとリィナの意味の無い言い争いは終了した。
「いいえ」
セイラはチェーンの軍服に付く、ロンド・ベルのエンブレムを見逃さなかった。
(アムロとブライトのところの子……)
自分とは違うタイプの女性の軍人。
セイラはチェーンの瞳の奥にアムロの面影を見た。






159 名前:新ストーリー書き:02/12/28 17:04 ID:???
「私はロンド・ベル隊所属、チェーン・アギです」
騒がしい兄妹の混乱を静めるため、努めて落ち着きを払って名乗るチェーンに、
「ええー!?ごめんなさい!私ったら!」
と、リィナは真っ赤になって頭を下げた。
が、その横で「ほぉら、みろ」という顔をしているジュドーに
肘鉄を撃つのも忘れてはいない。
「けほっ……、チェーンさん、コレは俺の妹のリィナ」
リィナの不意打ちに腹を押さえながらの紹介に、
チェーンは、にこやかにリィナと握手を交わした。
「それから、こちらはセイラ・マスさん。俺たち兄妹にとっては恩人なん……、だ?」
「――えっ!?あの、セイラ・マスさんでいらっしゃいますか!?」
ジュドーの言葉が終わらぬうちに、チェーンはその名に異様な反応を示していた。
「アムロ大尉から伺ってます。1年戦争の時にはご活躍だったと……!」
「昔のことよ」
興奮するチェーンと、セイラのギャップは激しいが、
チェーンはお構いなしに、かつての英雄を前にして目を輝かせている。
「セイラさんはホワイトベースのクルーにとって、憧れの的だったって!」
「そんな事、なくってよ」
「大尉から一度、お写真を見せてもらった事があるんです。
 先程から、似ていらっしゃる方だとは思っていたのですが……、感激です!」
よほど、アムロが美化して話したのかとも考えられるが、
アムロに熱を上げているチェーンだからこそ、アムロが好意的に話す相手の事は、
尊大に見えてしまうという効果も加わり「感激」とまで言わせるらしい。


160 名前:新ストーリー書き:02/12/28 17:05 ID:???
「えっと、あのぉ~、お取り込みのところ悪いんだけど……」
一応、オクトバーの下にチェーンを届けるという仕事を忘れていないジュドーが、
臆しながら声をかけると、チェーンは自分の任務を思い出し、
同時に、その任務に就く原因であるシャア・アズナブル――、
そして、彼とセイラ・マスの関係についても思い出した。
「今回の事……、大尉もセイラさんの事を心配されていました」
先程までの高揚した表情から一変し、その顔に影を落としたチェーンは、
アムロのしていたと言う「心配」と同じ表情で、セイラを見た。
その一言で、チェーンの言わんとする事を判断したジュドーとリィナも、
複雑にセイラを見詰めた。
「アムロが……」
「セイラさんは、きっとどこかでシャアを自分が撃つ事を願っているはずだと、
 大尉は言ってみえました」
急に硬い顔つきになったチェーンの口から発せられた、
アムロの思いに、セイラは強く頷いた。
「アムロの考えは正しいわ」
セイラの言葉を聞き、チェーンは硬い顔のまま「はい」と短く返事をした。
血を分けた兄を撃って欲しいと願う女性に、掛ける言葉など、自分には見つけられない。
それなのに、目の前のセイラは実に潔い考えをする。
こんな女性だからこそ、アムロはこの人の話をする時、
尊敬と悲観が混じったような顔をするのだとチェーンには分った気がした。


161 名前:新ストーリー書き:02/12/28 17:06 ID:???
そして、セイラもまた、チェーンという女性の存在にアムロを思い出していた。
随分と長く会ってはいないが、あのアムロ・レイがいくら同僚とはいえ、
ペラペラと自分の事を話すとは思えない。
人よりも一歩進んだ関係を結んだ相手。信頼できる関係。
恋人のチェーンだから、
アムロは自分に対する思いを話したのであろうとセイラは直感した。
こんな、どちらかと言うと、守ってあげなくてはと思ってしまうような女性を、
今のアムロは選んでいるのだ。
かつては、母のように包み込む優しさと強さを持った女性――、
マチルダ中尉のような女性を好んでいた少年は、
今は、自分で守るべき存在を持っている。
ホワイトベースから降り、ふたりの間に流れた年月の長さをセイラは実感した。






173 名前:新ストーリー書き:02/12/30 01:40 ID:???
「俺、オクトバーさんの所へ、チェーンさんを届けなきゃいけないんだ」
リィナの誤解は既に解けてはいるが、説明するジュドーに、
今度はリィナの方がその行動を制した。
「お兄ちゃんからもセイラさんに言ってちょうだいよ!」
「え?」
「ファさんは、グラナダの家を自由に使ってくれていいって、鍵を貸してくれたし、
 ハマーンさんも、私にセイラさんの力になるようにって、
 心配してくれているっていうのに……!」
ファとハマーンがセイラに対し、そんな気を使っていたとはジュドーは知らなかった。
女という生き物は、どのような状況においても、
人に気を使うという使命を持っているらしい。
「――セイラさんったら、今から地球に降りるって言うのよ!」
リィナの言葉にジュドーは驚きを隠さずにセイラを見た。
「地球にぃ!?しかも、今から!?」
「地球にですか!?」
それは、ジュドーにも、
ましてや、軍で一般の者よりも多くの情報を持っているチェーンにも信じ難い行動だ。


174 名前:新ストーリー書き:02/12/30 01:41 ID:???
「セイラさん、地球に降りたら危険だって事ぐらい、分ってるでしょ!?」
「そうですよ。シャア・アズナブルの行動は脅しじゃありません!
 現に5thルナが……!」
興奮したチェーンの口から発せられた単語に、ジュドーとセイラの動きが止まった。
「5thルナ?」
その隕石の名前を、ジュドーは宇宙に暮らす者が普通に知る程度に知ってはいる。
「それが……、その石っころが地球に落とされるっていうの?」
「それは……」
チェーンが口ごもるのは、それが軍の機密に触れるからだ。
現段階で民間人に告知出来る情報ではない。
返事はなくとも、それが答えだ。
「ハマーンが言っていた事……、当たったんだ……」
ジュドーは、カミーユの家でシャアの宣戦布告宣言を見た後に、
ハマーンが呟いた言葉を思い出した。

「早急に創った軍が長期戦に耐えうるとは思えん。
 地面にへばりつく馬鹿共を恐怖させ、跪かせるには、やはり隕石落しか……」

今までスィート・ウォーターに動きは無かったが、
ここにきて、ロンド・ベルはその情報を掴んだという事なのだろう。


175 名前:新ストーリー書き:02/12/30 01:42 ID:???
「とにかく、こんな危ない時に、地球になんて降りちゃいけない!」
「大尉だって、セイラさんの身を案じています!」
「セイラさん!」
ジュドーとチェーン、リィナの三人掛かりの言葉にも、セイラは動じはしない。
「はじめから、私は地球に残るつもりだったのよ。例え、兄が地球に何をしようとしても」
「それってどういう事さ?」
勘のいいジュドーが、既にセイラの思惑を分ったような顔をしてわざと聞いた。
「あなたが地球にいる事で、シャアが隕石を落とさなくなるとでも思ってるわけ?」
「兄はそんな事で考えを変えるような人ではないわ」
「だったら、何でセイラさんが地球に降りる必要があるのさ!?」
詰め寄るジュドーに、セイラの言葉は落ち着きを崩さない。
「そうね……」
セイラの身を案じているのは、ジュドー、リィナ、チェーンだけではない。
グラナダに留まれるよう家を提供したファ、
同じ、複雑な立場なのに配慮を怠らないハマーン、更に、アムロの存在もある。
彼らの思いを代弁するよう、熱い視線を向ける三人からセイラは目を反らし、
背中にそれを痛く感じながら淡々と語った。






208 名前:新ストーリー書き:03/01/06 16:45 ID:???
「兄妹と言っても、私と兄は一緒に暮らした時期はほんの僅かだったわ。
 戦争が始まり、離れ離れになったと思ったら、次に出会った時は敵同士だった」
「セイラさん……」
同じ兄を持つ身のリィナは胸を絞めつけられる思いがした。
「今でも時々、夢に見るの……。兄とアムロが生身の体で戦っている時の事を……」
それは1年戦争の末期、ア・パオア・クーの中でも出来事だった。
チェーンはその話に、アムロの腕にある傷を思い出した。
「シャア・アズナブルとやり合った時のものさ」
訊ねたらアムロはそう言っていた。
ただ、その時の目は相手を憎む目ではなく、
どこか、やるせない古い戦友を思い出すような目をしていた。
そして、今のセイラも同じ目をしている。
憎んでいるのかと思いきや、心の内はそうではない。
ただ、シャア・アズナブルという男は、アムロとセイラ――、
少なくとも、このふたりにとって、消そうにも消せはしない、大きな影を落としている。
チェーンは自分たちが敵にする相手がそんな人物だと思うと、身が震えた。


209 名前:新ストーリー書き:03/01/06 16:45 ID:???
「私は兄の選んだ道を理解出来ない」
セイラの口調はハッキリとし、その意思の強さを表現したが、
「でも、兄妹なのね……」
と、フッと肩を落とした顔は、言動の裏腹さを現している。
「どこかで兄が改心してくれる事を期待してしまう……」
「セイラさん……」
ジュドーとここで会う前、セイラとふたりきりの時間があったリィナは、
その時、今回セイラが持参したサイコフレームの情報は、
カイ・シデンというホワイトベースの仲間経由で伝わったものであると聞いた。
その情報をもたらされてから、アナハイムのあるグラナダに向けて地球を発つまでの間、
セイラがどれだけ苦悩し、迷ったか――。
セイラは自分を姉のように慕い、心配の眼差しを送るリィナに語ったのだった。
(どうして、セイラさんのお兄さんも、お兄ちゃんのような人じゃなかったんだろう)
子供染みた発想だと分るが、リィナには兄の存在に苦悩するセイラが不憫に見えて仕方ない。


210 名前:新ストーリー書き:03/01/06 16:46 ID:???
「兄の思想、兄の立場を考えると、僅かな期待でしかないけれど、
 私が地球に留まる事で、私の意思を兄に伝えたいのよ」
「セイラさん……」
ジュドーの拳はギュッと握られたままだ。
「もしも、兄の作戦が成功してしまった時……」
「そんなっ!」
思わず声をあげるチェーンだが、セイラの落ち着きはらった態度の前に声を控えた。
「兄の作戦で私が命を落としたとなったら、兄は悲しむわ……。
 あの赤い彗星が、って思われるかもしれないけれど、私にはそれだけは分るわ。
 兄はまだアルテイシアという妹の存在を捨て切れてはいない。
 自分の犯した作戦で、悲しみを感じる事となったら、
 その時、兄は何か変わるかもしれない」
断言するセイラに、もはや三人には説得出来る言葉が無い。
「それに、アムロが兄の馬鹿げた行動を止めてくれると、信じているわ」
その部分には、チェーンは頷いた。


211 名前:新ストーリー書き:03/01/06 16:47 ID:???
彼女の覚悟を理解してはあげたい。がしかし、「分った」とはジュドーには言えない。
シャアの作戦が成功したら……、5thルナが地球に落下した時、
どれだけの規模の被害が起きるかなど、想像もつかないし、
本当に命を落とすかもしれない。
そんな状況下にリィナの命の恩人を送り出す事など、ジュドーには出来ない事だ。
「俺はセイラさんをみすみす殺す事は出来ない」
しかしセイラは表情を変えなかった。
「だから、俺はアムロさんが乗るνガンダムの開発をがんばる」
「お兄ちゃん?」
それは、ジュドーにとってギリギリの発言だった。
手を振って、セイラを地球に送り出せはしない。
しかし、彼女が自分の意志を通す事は自由だ。
そうした時、自分に出来るセイラを守る事が出来る術は……。
ジュドーの心を理解したセイラは「ありがとう」とだけ答えた。






226 名前:新ストーリー書き:03/01/08 16:04 ID:???
シャア・アズナブルという兄を持ってしまったがために、
いや、ジオンの子供に生まれてしまったがために、
たった一人しかいない兄と別々の道を進むしかないセイラ。
そんな女性の姿に、ジュドーは自分とリィナの関係を思った。
複雑な立場は、今の自分たちも同じだ。
ジオンのハマーンと生きる自分を、リィナは理解してくれている。
しかし、これが、もしも違う意見を持っていたらどうなっただろう。
解って欲しいと思いながらも、リィナとは別々の道を歩まなくてはならなくなるだろう。
シャアとセイラの場合とは、全く、規模は違うが、
兄と妹が分かり合えないというのは、とても辛い事だ。


227 名前:新ストーリー書き:03/01/08 16:05 ID:???
リィナ、セイラと別れ、νガンダムの開発エリアにエレカバイクを走らせるジュドーは、
腰にしっかりと手を回すチェーンの感触に気付く事も無く、
セイラの運命を悲しく思っていた。
恐らく、リィナも、セイラが地球に降りようとすれば最後まで止めようとするだろう。
しかし、それでも、セイラ・マスという女性は、自分の信念を貫くと容易に想像が出来る。
それが分っているからこそ、自分はセイラに宣言した通り、
νガンダムの開発に尽力するしかない。
ジュドーはチェーンの存在も忘れ、バイクをさらに加速させた。
やり切れない思いを抱えた時、一番会いたい人に少しでも早く会うためにも……。


228 名前:新ストーリー書き:03/01/08 16:06 ID:???
ジュドーのバイクが視界に入ると、オクトバーの心音はますます高鳴った。
モビルスーツの開発に係わって十数年。
これほどアクシデントの多い機体は初めてだ。
サイコミュー搭載機を担当するのは初めてな上、
一年戦争の英雄、アムロ・レイの機体という緊張感。
なんとか、カミーユ・ビダンの手を借りて、まずまずの出来に仕上がりつつはあるが、
彼と同時に開発に携わってもらったジュドー・アーシタは、
よりにもよって、ハマーン・カーンを連れているし、
そのふたりによるトラブルには肝を冷やした。
カミーユの言う、材質開発部がやってのけたというサイコフレームとやらが、
どこまでパイロットの能力を引き出してくれるかは未知数だが、
今はとにかく、それを信用するしか他に、自分自身が落ち着く術が無い。
「しっかし、せめて施主さんは丁重にお迎えしたかったがなぁ……」
今更言っても仕方ないのだが、正規の開発員でもないジュドー・アーシタに、
よりにもよって、バイクにふたり乗りさせて客を迎えさせた事に、
オクトバーの憂鬱度は跳ね上がるのだった。






243 名前:新ストーリー書き:03/01/09 18:02 ID:???
緊張した面持ちを隠し切れないオクトバーの正面に、
ジュドーの駆るエレカバイクは、速度を落とすことなくピタリと横付けされた。
「こ、この度は……!」
「ハマーンは?」
オクトバーの丁重な挨拶が始まるや否や、それはジュドーの声でかき消された。
「はあ?」
勝手に自分からこの場を去っておいて、戻ってみれば、今度はハマーンを探す。
ジュドーの行動はオクトバーには分らない事尽くしだ。
ロンド・ベルからの来客の顔を拝むよりも先に、
ジュドーにはいい加減、ひとこと説教をしたいものだが、
状況が状況なだけに、オクトバーは年寄りくさい言葉は腹の底に引っ込めた。
そんな中間管理職の苦悩など露知らず、
ジュドーはバイクが停止した後も、
腰に強く腕を回し続けるチェーンの存在にやっと気付き、その手をそっと握って解いた。
一刻でも早くこの場に着きたくて、
うしろに女性を乗せている事を忘れていたとは、我ながら不覚だ。
「ごめん。ちょっとスピード出し過ぎたみたい」
素直に謝って、今度はちゃんとバイクから降りるのを補佐してあげる。
「ドキドキしたけど……、大丈夫です」
先程と同じように、プリーツスカートの裾をハラリと舞わせたチェーンは、
若干、青い顔をしながら言い、ジュドーはもう一度「ごめん」と謝った。


244 名前:新ストーリー書き:03/01/09 18:02 ID:???
が、そんなやり取りを目の前にするオクトバーの顔には、
先程引っ込めたはずの苛立ちが舞い戻っている。
「ジュドー!誰が女の子をナンパして来いなんて言った!」
「何の事だよ!?」
「お前はロンド・ベルの方を迎えに行ったんじゃなかったのか!?」
「だから連れて来ただろ!」
さすがにチェーンにも、オクトバーとジュドーの口論の主旨は分った。
「ロンド・ベル隊所属の、チェーン・アギです!お世話になります!」
ふたりの怒鳴り声に負けないように声を張り上げるチェーンは、
軍人らしくオクトバーに対し敬礼をし、
当然、それに驚いたオクトバーの言動はピタッと停止した。
「ロンド・ベルのチェーンさん!分った!?」
十二分に聞こえていると分っていながら大声で紹介するジュドーを、
オクトバーは恨めしそうに睨むが、
“使い”を終えたジュドーには、そんな事は関係無い。
ブライトの小言を聞き流していた頃と全く同じ態度のジュドーの目は、
キョロキョロとハマーンの姿を探している。
「それならそうとだなぁ!」
オクトバーが言い掛けた時、フッと陰に消える後ろ姿がジュドーの目に入った。
鮮やかなピンク色の髪を見間違うはずは無い。
(ハ、ハマーン・カーン……!?)
それと同じものを目撃したチェーンは、
胸にあった疑心暗鬼が現実であった事実に息を呑んだ。
「じゃ、俺、ハマーンのトコ行くから!」
「あ、おい、コラッ!」
オクトバーの制止など聞くわけも無く、
ジュドーの体はアッという間にふたりの前から消えた。





256 名前:新ストーリー書き:03/01/12 16:50 ID:???
オクトバーにしてみれば、今はこの、チェーンという女性とふたりきりでは気まずい。
「νガンダムの開発、問題無いんでしょうね?」
“ジュドーがナンパしてきた女の子”から言われる刺のある言葉に、
オクトバーは出来うる限りの愛想笑いを浮かべた。
「長旅でお疲れでしょう。現場へは明日からご案内します」
「明日ですか?」
もちろん、チェーンは今すぐにアムロが乗る機体をチェックしておきたい。
しかし、納期を早めた上に、期日よりも早く自分が訪れているのだ。
アナハイム側の事情も、たまには呑まなければ軍と企業の信頼関係も破たんする。
「書面だけは、先に目を通させてください」
「分りました」
もちろん、その用意は既にしてある。
が、明日までにサイコフレームの装備をし終えるかどうかが、オクトバーにとって勝負だ。


257 名前:新ストーリー書き:03/01/12 16:50 ID:???
「それから、今の彼……、あの、ジュドー・アーシタですよね?」
本人には触れはしなかったが、軍属のチェーンには、もちろん、
ジュドーがどういう人間なのか分かっていた。
「彼の言う、ハマーンって……」
「はあ……」
否定しないオクトバーの態度で、チェーンは事態を把握した。
宇宙に住む者でハマーン・カーンの容姿を知らない者などいない。
やはり、ジュドーが追いかけた鮮やかなピンク色の髪の持ち主は、
あの、ネオ・ジオンのハマーン・カーンであったのだ。
「この件、報告させて頂きますから」
「しかし、カミーユはロンド・ベルのブライト・ノア艦長は
 ふたりの事は認めているって……!」
「カミーユ……!?カミーユ・ビダンもここにいるんですか!?」
そのような報告は受けていないという顔のチェーンに、オクトバーは苦い顔をするだけだ。
「とにかく、隊には報告しておきます」
厳しい表情のチェーンに、オクトバーはただ頷くしかない。
このような事は予測の範囲内であり、チェーンに提出する報告書には、
途中から加勢してもらった民間人4人の功績には、多少色もつけてある。
実際、4人の不眠不休の仕事がなければ、
νガンダムの開発はここまで到達しなかったはずだ。
「報告の義務を怠ったのは私の不足の到るところです。
 しかし、彼らも……、ハマーン・カーンも含め、
 νガンダムの開発に、必要不可欠なクルーである事はお忘れなく」
ハマーンの名を強調するオクトバーに対し、チェーンは答えなかった。
セイラの地球降下を引き止めるジュドーの姿には感動すらした。
その彼の想いを阻むのには気が引ける。
だが、軍人としては若いチェーンの責任感は、このまま黙止しておく事は出来ず、
上官への報告という形で解決を求めようとしているのだった。







265 名前:新ストーリー書き:03/01/14 01:28 ID:???
「ハマーン!」
ジュドーが戻った事を確認しておきながら、その場を去ろうとするハマーンを
ジュドーは俊敏なダッシュで追いかけた。
「待てよ、ハマーン!」
ジュドーの声を振り切るように、顧みもせず走るハマーンにジュドーは焦った。
「さっきの子だったら、ロンド・ベルの子だってば!」
「そのような事、分っている!」
オクトバーと同じ誤解をしているのかもしれないという憶測は即答で返された。
セイラと同じく、ハマーンはチェーンの制服に付くエンブレムを見逃してはいなかった。
どうやら、容姿に惑わされ観察力が鈍るのはリィナを除けば、男という生き物だけらしい。
「だったら、どうして俺を避けるんだよ!?」
「私は避けてなど……!」
駆ける足を止めず答えたハマーンの言葉が終わるよりも、
ジュドーの脚力がハマーンを捕らえる方が素早かった。
「なっ……!?」
ハマーンの短い抵抗の言葉より先に、ジュドーは捕まえたハマーンの肩を引き寄せ、
否応無しに、その体を背後から抱きしめた。
頭で考えるより先に、本能がハマーンを欲しているのだ。


266 名前:新ストーリー書き:03/01/14 01:29 ID:???
「ごめん」
少し息が切れ、吐息混じりのようなジュドーの声だった。
ハマーンの細い体を力一杯抱きしめる。
力加減を間違えば、どこか折ってしまいそうなほどの、この細い体で、
ハマーンがひとり抱えていた悲しみを思うと、ジュドーの方も辛くなってくる。
「さっきはごめん」
振り解こう思えば振り解けるのに、
ハマーンは、もう一度謝るジュドーの腕から逃げようとはしない。
頬と頬が触れる位置にジュドーを許し、ハマーンはその瞳を閉じた。
(ジュドー・アーシタが私の元に戻ってきた……)
それは、今まで感じた事の無いほどの安堵感だ。
ジュドーが自分の傍らにいるというだけで、これほど安心するとは。
ハマーンの手は、自分の胸の上に合わさるジュドーの手に触れていた。
「ハマーン……?」
無言のままのハマーンの行為に、ジュドーはハマーンの顔を覗き込もうとした。
が、その表情はサラリと下りたハマーンの横髪によって、垣間見る事が出来ない。
しかし、ハマーンのジュドーの手を握る力は緩まるどころか、
しっかりとその存在を確かめるように握られたままだ。
『このまま抱きしめていて欲しい』
それはジュドーの心の中に、湧くように聞こえたハマーンの声だった。
ニュータイプ同士だから、嘘偽りの無い本心だけを感じる事の出来る。
ジュドーはハマーンの体を抱き続けた。
互いに理解をしようとする、純粋な愛情は、
嫉妬に狂ったジュドーの醜さも、想いを上手く伝えられないハマーンの不器用さも、
シャアに翻弄されるセイラの運命、
それに伴うジュドーのνガンダムの開発に対する意気込み、
地球に迫る隕石の脅威、全てまとめてふたりは感情を共有した。






281 名前:新ストーリー書き:03/01/15 17:27 ID:???
「アムロ大尉、アナハイムのチェーンさんから入電が入っています」
ロンド・ベル隊の主要艦ラーカイラムのブリッジにアムロが上がると、
ちょうど良かったと、オペレーターが声を掛けた。
「そうか。着いたのか」
それは恋人、チェーン・アギが無事に月に到着した事に安堵する表情だった。
アムロは器用に床を微妙な力加減で蹴り、オペレーターの席へと体を浮遊させた。
「こちらです」
ディスプレイを示したオペレーターは、
「極秘だそうですよ」と意味ありげな顔でアムロに席を譲り、
「ちょっと」と曖昧な言葉を残してその場を去った。
「ったく……」
その後ろ姿を不満気にアムロが見送るのは、彼の気遣いが気恥ずかしいからだ。
何気なくしているつもりなのだろうが、
“チェーン・アギからアムロ・レイに向けた入電なので席を外します”
という態度がみえみえだ。
同じ艦の中でそういう関係の者がいるのはやり難い。
ベルトーチカ・イルマの時に学習したはずなのに、
また同じ事を繰り返している自分にアムロは苦笑いした。
しかし、だからと言って、それを気にして人は恋愛など出来はしないのだ。
この程度のリスク、チェーンの存在を失うと思えば何という事はない。
「極秘って……?」
アムロはチェーンのはにかんだ笑顔を思い出しながら、暗号解読の作業に入った。


282 名前:新ストーリー書き:03/01/15 17:28 ID:???
アムロとオペレーターのやり取りを聞いていた艦長席のブライト・ノアもまた、
彼らの行為を黙認するのだった。
軍の通信でラヴレターを送る奴などいはしない。
ましてや、大尉クラスにもなってそんな浮ついた事をしているのなら、
即修正してやるところだ。
同じ艦にあのガンダムのニュータイプ、アムロ・レイが乗っているという事で、
オペレーターだけでなく、クルーが浮ついているというだけだ。
だが、これが戦闘態勢となった時、アムロの存在がひとりひとりの力となればいい。
戦争の歴史が続く以上、英雄の登場に凡人は彼らを羨望の眼差しで見つめ憧れるのだろう。
気付けば、自分にも“ホワイトベースの艦長”という枕詞が付くようになっていた。
(ニュータイプを数多く見てきたというだけなら、私も突出しているがな)
ブライトはキャプテンシートに肘を付き、
ホワイトベース、アーガマで共に戦った若人を思い出していた。
(この戦争をどう見ているだろうか……)
彼らが見ている前で恥かしい戦い方は出来ない。
ブライトは艦隊の進路を示すモニターを睨みつけた。


283 名前:新ストーリー書き:03/01/15 17:29 ID:???
「艦長!」
急なアムロの声にブライトはオペレーター席のアムロの茶毛の後頭部を見た。
顔も向けずに艦長職を呼べるのは、アムロの特権だ。
「どうした」
「見てくれ」
あくまでも席を立たないアムロに、ブライトはオペレーター席に身を泳がせた。
こうまで言うからには、当然、ラヴレターではないらしい。
ブライトはディスプレー上、外部通信の受信画面に出る、
アムロが暗号解析を済ませた文字を目で追った。
「アナハイムにジュドー、カミーユ、ファ……、ハマーン!?」
当然、声を潜めるブライトに、アムロも小声で聞いた。
「チェーンは、艦長はハマーンの生存を知っていると書いているが……」
「ああ」
アムロはビクリとブライトを見上げた。
「ハマーン・カーンはZZのパイロット、ジュドー・アーシタと暮らしているはずだ」
「なっ……!?」
「私もいちど会った事がある。野心もジオンも捨て、穏やかに暮らしていたさ」
連邦政府がひっくり返るかというような話を、いとも簡単に口にする。
「艦長……」
「驚いたか?軍に飼われて長いんだ。たまにはそっぽ向いてもみせるさ」
呆然とするアムロに、ブライトはらしくない笑みを見せて言ってのけた。



スポンサーサイト




コメントあざっす!!

コメントの投稿

非公開コメント

関連記事
Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

テーマ : 2ちゃんねる
ジャンル : サブカル




おすすめ

プロフィール

ワークス35

Author:ワークス35
 
無料フリゲFF3.5の紹介と
2ch・ふたば☆ちゃんねる
スレッド紹介

「FF35しようず」は
ずっとリンクフリー!


連絡先
メールフォームはこちら




2chスレッド紹介が強め。 
TOP絵ずっと募集中

このブログについて

20100519
FF3.5の画像・SEを更新。
(110.gif改変。
 音量調節ほか。)
その他こまごまと修正。
更新分はこちら
から完成版.zipを
落としてください。 

普通プレイの人、
応援してます。

20090809
日本視覚文化研究会
記事紹介ありがとうございます。
感謝感謝です。


20090809
ねたミシュラン

お笑いニュースYouTubeニコニコ日和

エロアニメブログ


記事の紹介
本当にありがとうございます。
この場を借りて
お礼申し上げます。
これからも
よろしくお願いいたします。


コメント・ツイート
どんどんしてください。

オナシャス



   ___
  /ヽ) / \
 < / ̄Y ̄丶>
`〈X  ≡  ム〉
 丶) i (/
 // ̄ ̄\\
/ 彡 ^  ミ \
\幺ノノ i丶>/
 \マソ)ノソア/
  丶ミュZノ


なんかすげえ心温まるコメが多くて
涙がでちゃいました。
とりあえず
ずっと続けていくつもりなので
お手紙、コメントどんどんしてくださいね
くぎゅううううううううううううううえあああああああああああああああああああ
          ワークス35

にほんブログ村 ネットブログ 2ちゃんねるへ

フィードメーター - FF35しようずwwwwwwww  この日記のはてなブックマーク数
あわせて読みたい
検索フォーム

amazon.co.jpを検索

カレンダーとかまとめて
08 | 2020/09 [GO]| 10
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 - - -

最近の記事一覧 カテゴリ一覧 コメント一覧 トラックバック一覧 プロフィール リンク一覧
[カテゴリ]
WEBコンサルティング・ホームページ制作のバンブーウエイブ
FC2カウンター