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もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら

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4 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/01/01(金) 17:57:55 ID:???
 頭モヒカンにしてヒャッハーしてると思う。


5 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/01/01(金) 20:25:04 ID:???
D.O.M.E.の声が古谷になります。



6 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/01/01(金) 20:39:45 ID:???
まじめに考えると、D.O.M.E.に組み込まれるためには戦前でなければならない
通常Xの世界といえばAW、戦後世界を指すのでD.O.M.E.組み込みの線は無いだろう




70 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/01/08(金) 04:06:09 ID:???
CCAアムロはちゃんと自立した大人の男だけど、AWに放りだされて逞しく生きていけるタイプの人間じゃないからな
いずれは離れるとしても、X一話の前の時点でアムロをフリーデンのクルーにしておくのが無難かも
クロスであってもガンダムXの主役ってガロードだと思うし



アクシズ押し返しの後、ボロボロのνガンダムのコクピットで目を醒ますアムロ。
手にはサイコフレーム(チェーンのモノ)を何故か握っていた。
ガンダムタイプのジャンクという噂をかぎつけてバルチャーに囲まれるアムロはフリーデンに助けられる。

ジャミル=ニートは夢であった少女(ララア)に導かれて、この場所に来、アムロを助けたのだった。
アムロはジャミルの話からここがUCの世界ではない事を知る。
だが、このAWという世界はもしかしたら自分達にもあったかも知れない世界の姿なのだ。
ジャミルはNTである少女、ティファ=アディールの救出を計画する。
アムロは拾われた恩返しと、彼に共感する思いもあり、ティファを救出に協力したのだった。

ティファを奪われたアルタネイティブ社はMSハンティングを生業にする少年・ガロード=ランにティファの奪還を依頼する。
しかしガロードは翻意、ティファの導きによって眠っていたGX9900を起動させた。
それは15年前の悲劇の引き金となったシステムを積んだ機体。ジャミルは叫ぶ――「月は出ているか?」
フリーデン艦橋でのジャミルの声を、ティファを取り戻すために出撃したドートレスのコクピットの中でアムロは聴く(NT能力)


第一話「月は出ている」




75 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/01/09(土) 13:20:15 ID:???
僕はアムロ……ニュータイプと呼ばれる者だ

76 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/01/10(日) 03:12:05 ID:???
ティファを人質にしてこの場を逃れようとするガロード。しかしアムロはティファを傷つけずにガロードを攻撃してみせる。
「うそぉ!?」ガロードが呻き、アムロはティファを回収しようとしたところでアルタネイティブ社の手勢に攻撃をうけ
結果としてティファは再びガロードの手に渡り、ガロードはその場を後にするのだった。

ティファとの二人きりの会話もつかの間、今度はバルチャーによって襲撃をうけるガロード。
私欲が支配する戦場に向かうフリーデンの中のアムロは、その中に純粋なガロードの気配を感じていた。
「あなたに、力を……」そして少年に答える少女の声に、アムロはざわめきを覚える。
ジャミルの震えと焦り、そして月から延びる一条の光、「サテライトシステム?」男の声(DOME)がアムロに語りかけた。

「15年前の悪夢だ……」「急ぐぞ、ジャミル」直感的にアムロは第二射は無いと感じた。
そしてティファが人の死を直に受けすぎてしまっている事も。シャアの反乱で救えなかった少女を思い浮かべる。
あの時の自分にはそんな余裕は無かった。「あ゛あぁ゛ぁあぁぁぁぁ!!!」ティファの悲鳴を感じる……アムロはドートレスのペダルを踏み込んだ。

第二話「人は同じ過ちを繰り返して……全くっ!」





77 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/01/10(日) 04:09:47 ID:???
フリーデンに収容されるティファとガロード。
暴れるガロードに「威勢だけは一人前だな」とジャミル。「若い頃はこれぐらい元気があった方がいい」とアムロ。
ガロードに対してアムロが本能的に好意を向けているのはNTの直感力の為すものか
あるいはAWに来て日が浅く、すぐにフリーデンに拾われた為、厳しくなければ生きられないこの世界を知らないからなのか。

その頃、アルタネイティブ社にフリーのMSを名乗るシャギア=フロストが現れていた。


フリーデンの格納庫の一画に最近居座り始めたMS…いやジャンクがある。
アムロの愛機であるνガンダムだ。16、17mクラスのAWのMSに比べて22mのνガンダムはただでさえ大きい。
ジャミルの好意とキッドの興味によって、アムロが現れた地点に転がっていたパーツまで兎に角集めて置いておいて貰っている状況だ。
νガンダムはジェガンと共通するパーツが多いが、世界が違っていては共通規格になんの意味もない。
アムロ個人としてはどこかのMSを赤く塗りたがる男とは違ってガンダムで無くてはならないという拘りもなく、今借りて使っているドートレスで不満はない。
設計から関わったνガンダムには多少の愛着はあるものの、別世界の技術であるνが在り続ける危険性も考えて完全にスクラップにしてもいいと思っている。
だが、キッド本人はメカニックの誇りにかけてνガンダムを直したいらしい。

翻ってガンダムXである。レオパルド、エアマスターに続いてアムロがこの世界で見た三体目のガンダムであったが、どこか懐かしさを感じさせた。
キッドたちメカニックが夜になってもGXの整備をしている。バルチャーとの戦闘でGXはボロボロだ。
「まあ一番酷いのはアムロがやった部分なんだけど」とはキッドの弁。「やっぱ気になる?コイツの乗るのは自分だから?」とキッドは続ける。
GXがフリーデンのモノになるなら、パイロットはジャミルでいいじゃないかとアムロは返したが、キッドは意外そうに「ジャミルはコクピット恐怖症なんだぜ」と答えた。
しかし、それでもアムロはこの世界の「ガンダム」には乗る気には慣れなかった。別にガンダムに拘りはなかった筈なのに……
アムロは自分をガンダムに乗せたがった恋人の事を少し思い出していた。

アムロとキッドの会話を見咎めたのがサラ=タイレルである。バルチャーの中でも一目置かれるジャミルがパイロット恐怖症というのは他人には知られたくない情報だ。
トニヤやキッドはジャミルが信頼しているアムロを同じく信用するようになったが、サラはまだ警戒を残していた。
だが天然ジゴロのアムロはそんなサラが「GXの存在が情報屋に渡って、フリーデンにも敵が群がってこないか」という心配を抱えている事を見抜く。
ティファの容態も安定してきていることもあり、アムロは最寄りの街に自分が探りに行くことを提案する。ついでにキッドにパーツのお使いも頼まれるのだった。

アムロはジャミルに許可を貰う途中、窓からガロードが花を摘む姿を見、微笑ましく思うのだった。

そしてアムロが不在のフリーデンにオルバ=フロストがやってくる。



第三話「ガンダムに乗ってこそ、アムロ=レイか……」





79 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/01/10(日) 04:37:08 ID:???
オルバ=フロストによって容態が悪化したティファを救う為、再びアルタネイティブ社のラボを襲う事を提案するジャミル。
反発するウィッツ、ロアビィ、フリーデンクルーにジャミルは自分の過去を話す。
NTを守りたいと語るジャミルの意志をガロードも隠れて聴いていて……

ウィッツ、ロアビィはガロードの願いも省みずにフリーデンを後にする。
兵力不足に陥ったジャミルは、他のバルチャー仲間に救援を依頼する。

一方、街のジャンク屋でキッドの注文の品と手に入れ、(メカ弄りの趣味を刺激されて)そのままジャンクを色々見ているアムロ。
ジャンク屋にMSでジャンクを大量に持ってきたエニルとすれ違う。
ロンドベル時代の経験を生かし、情報屋を探り出していると、その情報屋からフリーデンがアルタネイティブ社に向かった事を知る。
アムロは慌ててフリーデンへと戻る為、ジープのハンドルを握った。


バルチャー仲間と共に作戦を練ったジャミルであるが、作戦の要であるサテライトキャノンを持つGXに搭乗することができない。
そこに名乗りを上げたのはガロードだ。躊躇するジャミルだが、事態は急転する。
オルバ=フロストのガンダムアシュタロンが真の姿を現し、ティファを攫っていったのだ。
そしてフリーデンの前にガンダムヴァサーゴがアルタネイティブのMSを連れて立ちはだかる。
「黄昏時か…。死ぬには相応しい時間かもしれないね」 「月を見ぬまま地獄に落ちろ」


走るジープの中で、アムロの腰に付けているサイコフレームが耀き揺れる。
ティファか、フリーデンか、誰かが危機にある――なぜそんなときに自分が居ないんだ!アムロは歯噛みした。
カミーユの事を思う。自分が宇宙に怯えてしまった為に、あの少年を助ける事が出来なかったのではないか。
あの少年が壊れてしまったことがシャアに絶望を与えたのではないか。
そんなとっくに心に区切りをつけていた筈の事が、今更のように甦る。
情報屋の話ではエアマスターとレオパルドがフリーデンを降りたらしい。ジャミルはパイロット恐怖症……
ならばGXは誰が乗る?間に合いそうもない自分が?
いや……
「ジャミル、聞こえてくれ……」



第四話「GXに乗るのはガロード=ランだ」






87 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/01/11(月) 02:13:44 ID:???
ジャミルはガロードの決意にまかせGXを彼に預けた。
しかしシャギアのかるガンダムヴァサーゴの壁は厚い。
ティファをアルタネイティブに渡し、オルバ=フロストも兄の加勢に駆けつける。

危機一髪、ガロードを救ったのはウィッツとロアビィだった。

そしてティファを手に入れたアルタネイティブは、
旧革命軍のMAを使い、フロスト兄弟ごとガロード達を消滅させようとしたのだった。

「状況は!」フリーデンに駆け込んだアムロを向かえたのはジャミルであった。
彼は艦長であって、後部デッキにいるのは相応しくない。
「サテライトキャノンで対抗する」ティファからの思念を頼りにすることで彼女を狙わないように。
「できるのか?」自分が代わろうか?と言いかけたアムロは、「フリーデンを頼む」というジャミルに遮られた。
ジャミルを見送り、自分のドートレスに乗り込むアムロ。テクスやサラからジャミルがムリに力を使えば傷つくだけと知るがもう遅い。
ガロードとティファとジャミル「三人を信じるしかない」、アムロはドートレスで出撃する。
フリーデンを狙うアシュタロンの攻撃をかわし、一撃を加えるアムロ。「ちぃ!ガンダムタイプにドートレスの火器ではダメか!」直撃の筈が。

だがGXのサテライトキャノンは見事に命中し、ティファを救うことに成功したのだ。
フロスト兄弟は撤退し、平穏な夜明けがやってくる。
「大丈夫か、ジャミル」「ああ、感謝する」「感謝?」「フリーデンを守ってくれたことに、だ」
そんな三十路と三十路一歩前の男二人に、ガロードとティファの会話が聞こえてきた。
「さぁ、帰ろうぜ!」 「『帰る』?」 「ああ! ジャミルのところに…なっ?」 「…うん」
ガロードはフリーデンを居場所に決めた。
そしてアムロもまた、その居場所を自然と受け入れているようであった。
「ナイスファイト!」スパナ片手にキッドが、「お疲れさまー」トニヤが、「やっぱり強いな」シンゴが、「ありがとうございます」サラが
アムロを向かえてくれる。そしてアムロはガロードを迎え入れた。


第五話「ただいま。そしてようこそ、ガロード=ラン」


101 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/01/12(火) 04:46:57 ID:???
フリーデンでアムロが異世界の住人であることを知っているのは艦長のジャミルと医者のテクスだけである。
異世界の人間だからどんな病原菌を持っているか、またこちらの世界の病気に抵抗力がないか判らない。
故にジャミルはテクスには事情を話し、彼に定期的に診察を受けさせるように言い含めていた。

その日もアムロは医務室に足を運んだ。どうやら先客がいたらしい。NTの少女がアムロを見返していた。
ララア=スンともカミーユ=ビダンとも違う印象を受ける。「貴方の世界でも哀しいことが沢山あったのですね……」「君達の世界程じゃない」
ティファが自分が異世界の人間であることを知っている事をアムロは不思議と疑問に思わなかった。
「……帰りたくないのですか?」「まさか。帰りたいよ」答えながら、しかし熱烈な帰郷心が浮かばないアムロであった。
あの後アクシズがどうなったのか?シャアは?ブライトは?それはある。しかし同時に自分の役割は終わったという気持ちも拭えなかった。
「NTは争いの道具じゃないって、俺も思ってる」だから今はジャミルに協力している。そうアムロは結論付けた。
「シャア=アズナブルができなかったから?」「ティファ、君はシャアを知っているのか?」「(首を振り)貴方の心の中にその名前がありました。強く……」

ティファとの会話を切り上げたアムロは、医務室の外に立っていたガロードと鉢合わせした。
もちろん、彼のお目当てはテクスでもなければアムロでもない。空いたドアから中の様子をうかがうガロードの若い姿に、アムロは少し気分が晴れたようだった。


一方でガロードからしてみれば中々ティファと話せない上、アムロがティファと仲良く(ガロードからはそうみえた)話しているものだから心模様は曇天だ。
フリーデンの仕事にも身が入らず、ミスを犯してしまう。ジャミルはガロードを咎める事をしなかったが、集団生活になれてない彼は素直に受け取れないでいた。

「懐かしいな。あの年頃の俺なら殴られてた」「軍隊ならそうだろう」「いや、艦長が若くてさ」アムロが14の時、ブライトは19だったのだ。
と、十代半ばを振り返り、見守るだけの余裕ができた満足気な二人に対し、さらに年上のテクスがジャミルのジャッジを批評した。
ガロードは優しくされることに慣れてない、と。ジャミルとアムロは互いに顔を見合わせた。結局自分達もまだまだ、らしい。


案の定、ガロードは飛び出した。目的地は旧連邦の動力施設。だがそこはバルチャーですら、決して触れない危険な施設だ。
そしてジャミルはガロードを助ける為、MSに乗って飛び出した。
「もう遅いよ!」キッドが言う。「ジャミルの奴…!」苛立たしげにアムロは壁を蹴った。フリーデンでガロードの他にMSに乗れるのはアムロしか居ない。
だが、アムロは別の世界の人間だ。帰る場所がある。だからジャミルは危険な動力施設にアムロを向かわせたくなかった。
アムロはそういう気遣いは無用だと、ジャミルが帰ってきたらハッキリ言ってやろうと思った。


そのガロードはエニルからの襲撃を受けていた。さらに動力炉の爆発が迫る。
エニルはそのリミットを察し引き上げたが、ジャミルが駆けつけるまでガロードは知る由も無かった。
「黙って走れ!」ジャミルはそんなガロードを叱咤し、動力施設から離れようとする。

フリーデン内では万が一に備えて乗員に防護服を配っていた。
そして運悪く、トニヤが「ガロードを励ます方法」としておいていったルージュをティファが手にしているのをサラが見てしまう。
彼女の敬愛するジャミルが命を賭けているのに……「不愉快だわ」サラは小さく吐き捨てた。



第六話「俺も、生き残る事だけを考えていたよ……」





228 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/06/13(日) 01:53:50 ID:???
フリーデンに戻ってきたGXは、コクピットを潰したドートレスを抱えていた。
フリーデンの乗組員に戦慄が走る。
ただ一人、年長者であり医者であるテクスだけが冷静に行動し、
すぐさまドートレスの中のジャミルを引き上げて手術を開始した。

アムロが感心したのはその後だった。
ジャミルの手術が成功したとテスクの報告を受けると、フリーデンのクルーは
いつもの調子を取り戻して、談笑しながらそれぞれの仕事をこなしている。
ただ一人を除いては。
「『出撃命令』!? そんなの出していないわ!」

ガロードがガンダムを持って家出をしたらしい。

アムロは思わず頭を抱えて暫く俯いてしまった。
テクスに不審がられるが、アムロはただ苦笑してかわすだけだった。
だってそうじゃないか。まさか「自分もやった事がある」なんてどんな顔で話せばいいんだ?

サラは一気に戦力の減ったフリーデンのカバーの為にロアビィ=ロイをバルチャーサインで呼び出す事に決めた。
ウィッツ=スーを呼ばないのは経済的な理由らしい。
シンゴがガロードに対して愚痴を溢していたが、サラは実務家らしく、口より先にペンが動いたようだ。
自分の時もこんな感じだったのだろうかと、アムロは考えたが
あの時のブライトがサラほどよくやっている姿は(彼には悪いが)想像できなかった。
だいたい、自分がスネた原因はブライトだった。
「帰ってくるのかなぁ…?」
サラも、シンゴも、勿論アムロも“家出”と単純に認識してたが、トニヤだけはそう口を洩らした。

その頃……
「ガンダム売るよ!」
……ガロードはGXをオークションに賭けていた。


「こりゃボビーだね」「手厳しいな」
忙しく回っているフリーデンクルーの中で、アムロは手持ち無沙汰で、自分はパイロットなのだし……と
ドートレスの改造案をキッドに持っていったら一蹴にされた。
これでも会心の出来だったのだが。気がついたら夜になってたぐらい、集中して仕上げた計画書を丸めたアムロは溜息を吐いた。
自分の意見が通らない事は慣れている。だいたい、連邦の上層部がΖか百式でもいいからロンドベルにまわしてくれていれば、
自分はこんな所に居なかったかも知れないのだ。詮のないことではあるが。
「ドートレスに不満があるの?」「ソフトの面で言えば操作性がいいのは分かるけど、俺はもっと過敏な方がいいな」
「へえ、そういう注文は初めてだよ。大抵のヤツが外装やら武器やら言ってくるんだけどさ」
「もちろん、最低限ガンダムタイプに有効な兵器は欲しい。いくら俺が白い悪魔なんて呼ばれてたからって、威力の無い兵器じゃ相手は倒せ…」
……そういえば昔輸送機でアッシマーを落とした事があった気がする。
「白い悪魔?」
記憶の中に韜晦しているアムロを、キッドの質問が釣り上げた。
「……いや、何でもない」
シャアじゃあるまいし、異名を誇るつもりはない。ましてここは別世界なのだから通用しない。
「それよりジープを貸してくれないかな?」「何に使うんだ?」「ガロードを迎えにいくのさ」
本当はティファが言った方がいいんだろうけど、とアムロは付け加えて笑った。


第七話「探しに来てくれた人がいると、案外帰りやすいもんさ」







239 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/06/14(月) 02:41:03 ID:???
「……見つからない」
大見得きって出てきたのであるが、土地勘がないのだから当然と言えば当然か。
いや、これでも元いた世界ではNTと呼ばれていた男
それにロンドベルはコロニーに潜伏するジオン残党の取り締まりが任務だった。
知らない街だからといって、ガロードの一人見つけられなくては今までの自分が泣くと言うものだ。
アムロは日が落ちるのを待った。
裏の情報筋という者達はどうしてか闇を好むのだ。
……その前にエンジンが逝かれたジープの修理をしなくてはならないが
(経費で落ちる、よな?)
俗っぽい事を考えながら入った修理屋で、アムロはGXの写真を見つけるのだった(ついでにレオパルドも)


当のガロードはガンダムを競り落としたエニルと決別し、相変わらず行く当てもない。
エニルの放った「独りぼっちは、寂しいものよ…」という言葉が、少年の心を握りしめる。
そんな彼を追う一つの影があり……


フリーデンにはロアビィとウィッツが合流した。
ウィッツは自分の金塊の隠し場所としてフリーデンを選んだのだ。
尤も、GX不在にジャミル重症は彼にとっては痛い計算外であったが。
そしてフリーデンにエニル達が襲いかかる。


ガロードを襲う影、それはガロードのGXを競りそこねた男だった。
予測してたにも関わらず、ガロードは男に馬乗りにされてしまう。
精神状態の悪さが、いつものガロードのしたたかさに曇りをかける。
しかし、一発の銃声がガロードを救った。その弾丸の主は……
「一度、君とはゆっくり話がしたかった…」
「再会を祝して、お茶でもどう? もちろん君のおごりでね」
フロスト兄弟だった。しかし、ガロードの顔には驚きが浮かんだままだ。
「金欠でね、できれば割り勘がいいな」
兄弟の背後に、良く知った赤毛の青年が銃を構えていたからだ。


「お前達のガンダムを倒し、天国に送る。それが、私達兄弟の望みなのでね」
不敗の自分達に傷をつけたGXを自分達の美学が許さない――兄弟はそう語った。
それはひどく芝居がかっているようにアムロには思えた。
心の底からそう思っている言葉ではない……というよりも、彼らにはもっと彼らを突き動かす怨念のようなものを感じる
アムロのフロスト兄弟の感想だった。
ガンダムに乗ることを断るガロードに、フロスト兄弟はフリーデンを襲うという恐喝を行う。
しかし、ガロードはフリーデンは無関係だと突っぱねた。
「無関係?君の隣にいる彼はフリーデンのクルーじゃないのかな?
 ふふ……まさかお守りつきの家出中だなんて言わないよね、僕たちのライバルがさ」
挑発するオルバに食ってかかるガロードを宥めて、アムロは語った。
「ガロード、ロマンチズムで戦いを起こすのは単なるエゴだ。
 だけど、帰れる場所があって、それを守りたいなら、それは理由になるはずだ」
エニル達とフリーデンの戦いを売りに来た情報屋が街で買い手を探し声を張り上げた
「バルチャーは、いるかい? 儲け話だぜ!
 向こうの森で、ガンダムタイプが船を守ってドンパチやってるぜ!」


カフェの席から一人去り、二人去り、ガロードだけが残った。
「…行くしか、ないのか…?」
答えが出ている自問を口にだし、ガロードは席を立った。


フロスト兄弟のガンダムが飛び立つのをアムロは見上げていた。
MSとジープでは競争にもならない。しかしアムロは信じている。

第八話「ガロード・ランは、必ず行く!」



243 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/06/21(月) 23:40:28 ID:???
火攻めにあうフリーデンに、フロスト兄弟が襲いかかる。
エニルは乱入者の存在を認めるとガンダム同士が戦う隙に本丸であるフリーデンに強襲をかけた。
フリーデンのブリッジに蒼い巨人が迫る……しかし!
「じゃ~んじゃじゃ~~ん! 天下無敵のモビルスーツ乗り、ガロード・ラン様が、ガンダムXと共に助けに来たぜぇ!」


GXの帰還で戦況は動き始める。
護衛機を得たフリーデンはサラの指示で炎を避けるために湖へ
エアマスターとレオパルドも支援に動く。
フロスト兄弟のガンダムはバルチャーに食い下がられ、三つ巴の体を為す戦場は混沌とし始めていた。
そして少年の行動は少女の心までも動かし始める。
「『船を止めろ』とは、どういうことなの?」……嶮しいサラの言葉に、ティファは言葉を詰まらせる。
NTの直感に合理的な説明を、それも15歳の少女に求めるのは難しい。
一方でNTの力は理屈を超越する……ブリッジクルーの意見は割れる。
裁を下したのは復活したばかりのジャミルだった。
「現場の判断より、彼女の意見を優先させるのですか!?」 「ティファの意見が無くとも、判断は変わらん!」

「フッフッフッ…。『灼熱の湖』にようこそ、諸君」

水の上に立つザコット。
敢えて退路を容易し、罠を仕掛ける……その可能性を忘れていたサラは
油を撒かていた湖に火が燃え移るのを呆然を見送るしかなかった。
「心配するな、大丈夫だ」
だが、燃え広がる不安を、ジャミルは力強く受けとめた。

『フリーデンはジャミル=ニートそのものだな』

ティファは思い出す。アムロという異世界の男の言葉を。
二人はNTという存在故に、その感じ方を論理的に説明するのは苦手ではあるが
その言葉の意味は大まかに述べれば『父性』という部分に集約される。
少なくとも歳をとり、世間の中で生きてきたアムロならばそう語るだろう。
クェス=パラヤという少女が求め、自分もシャアも与えることができなかったもの。
さらに付け加えるならば、NTの有無に関わらず、他人との関わり方を知らない
ガロードとティファでのジャミルへの本能的な信頼の差。
「息子は父親に反発するようにできているものだろ?」……とまではアムロもジャミルやティファの前では言わないが。


ガロードは敵の頭を叩く戦術に切り替える。守っていてはジリ貧だからだ。
普段の剽悍な性格に隠れているが、ガロードの判断力、決断力は光るものがある。
長くMS乗りをやっているウィッツやロアビィよりも早い。
だが……
「また逢えたわね、坊や」 「そ、その声は…エニル・エル!?」
ガロードはエニルに、ウィッツとロアビィはフロスト兄弟に阻まれる。
駒が一つ足りない。
強い焦りと危機感がガロードを埋め尽くし、それはNTであるティファをふるわせる。
「言う事を聞けば、仲間の命は助けてあげるわ」――エニルの誘い
「今からでも遅くないわ…。あなたの寂しさを埋めてあげてもいいわよ」――その言葉を

『違う!寂しさを埋める場所が帰る場所じゃ駄目なんだ!』

ガロードの脳裏にアムロの声が響く。
ティファを通してアムロのNTとしての力が距離を越えたのか。
ガロードには判らない。だが、決意は元より変わらない。
彼の中にはティファの姿が、フリーデンクルーの存在が、確かにある。
それをアムロは言葉にしただけだ。
だからこの言葉はより力強く放つことができる。
「俺の…俺の帰る場所は……この船なんだぁぁぁっっ!!!」



244 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/06/21(月) 23:43:16 ID:???
エニルを振り払ったガロードに、ジャミルから通信が入る。
この戦局を打破する策を携えて。
「ガロード…この危機を救えるのは、お前だけだ!」
ジャミルの合図でフリーデンとGXが動く。
その意図を、シャギア=フロストだけは理解し、即座に弟に撤退を促した。

「レーザーの照準合わせから、マイクロウェーブ到達まで4.03秒…! 間に合うか!?」

湖の中心にサテライトシステムのガイドレーザーが振り落ちる。
そして……
「来たっ!」
サテライトキャノンの膨大なエネルギー――マイクロウェーブが、GXの胸部コンデンサに向かい発射される。
それを全力でガロードは回避した。
行き場を失ったマイクロウェーブは水面に激突し……


「マイクロウェーブを直接湖に当てて、水蒸気爆発を起こさせるとはな。
 それにこの、奇跡の雨か……。洒落てるな」
フリーデンのデッキでずぶ濡れになったジャミルを支えるテクスは語った。
そして……

「ガロード、赤い仮面を付けたヤツに見つかる前にジープを泥から抜け出すのを手伝ってくれ!」
近くまで来ていたアムロは、GXに向かって叫んでいた。


「アムロの声がさ、聞こえた気がしたんだ。帰るとこって寂しさを埋めるモンじゃないってさ。
 もしかしてアムロってニュータイ…」
「ガロード、聞いているの!」サラの怒声にガロードは身を竦めた。
ジャミルの怪我が治る間、ウィッツとロアビィはフリーデンの専属になったらしい。
そしてガロードにはペナルティが課せられるというのだ。
「ま、我慢するんだな」笑うアムロに「貴方もです、アムロ。勝手に車で抜けだして。クルーの一員になった自覚を持って下さい」
10も年下の女性にぐうの音も出ないアムロにガロードはドラ声の笑いを隠そうともしない。
「この船に乗る限り、今後勝手な行動は許さん。ペナルティーとして、ティファの世話をするんだ。それからアムロはトイレ掃除一週間」
「おいおい、ペナルティに差がありすぎないか、ジャミル……」
癖っ毛を掻きながらアムロはぼやいた。
そこに、ティファが現れ……「ここが…私達の行くべき場所…」……ジャミルに、フリーデンに道を標した。


フリーデンを見送るフロスト兄弟は笑いあう。
「これで僕達は、宿命のライバルになれたかな? 兄さん」
「そう認識してもらわねば、我々の任務の遂行に支障をきたす。だがオルバよ……
 この間の『僕達の美学』というセリフは、少しばかりやりすぎだと思うがな」


二人の思惑をあの会合で読み切る事はアムロにはできない。
僅かに胸のスミに、二人への警戒を残したまま、フリーデンのデッキでAWの世界を眺める。
「帰る場所は……貴方にとってどういう場所ですか?」
ティファの問いに、アムロは答える。――嬉しい場所だった、と。
一年戦争の時、そう思わなければ自分はララアの亡霊に惹かれて死んでいたのだ。
ティファはそんなアムロに疑問を抱く。「だった」と過去形で語ったアムロに。
アムロはティファが変わったと感じた。少なくともジャミルの為にNTの居る場所を示した。
ガロードと同じように、彼女も孤独と決別したのだろう。
入り口に赤いジャケットが映るを見つけ、アムロはデッキを後にする。
「な、何話してたんだよ」隠れきれずに入り口でアムロに見つかったガロードは照れ隠しに問う。
アムロはガロードをティファの方に押し出しながら答えた。


第九話「旅は今、始まったばかりさ……」




247 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/06/26(土) 02:16:04 ID:???
フォートセバーン……
戦後復興した北米にある雪に閉ざされたこの都市には、守護神がいる。
カリス=ノーティラス。自衛部隊のリーダー。そして……
「私は戦後の時代に生まれた、新しいニュータイプなのです」


フリーデンはティファの描いた絵の示した場所――フォートセバーンに向かっていた。
ティファの描いた絵は正確で、写真とほぼ一致したため、行動はスムーズだった。
「すごいもんだな、こっちのニュータイプは」関心するアムロにトニヤが返す。
「こっちの?」「い、いやなんでもない。それよりニュータイプを見つけてどうするんだ?」
ジャミルが言うには場合によってはティファのように保護する、
力を悪用されてるようならある程度強硬な手段も辞さない……
「でも、その本人が悪人だったりしたら、シャレんなんないわよね~! アハハハハッ……あれ?」
それが最悪のケースだな……トニヤの言葉にアムロは微志を定めた。


「はい、それはそこ! …う~んと、もう少し左かな~?
 おぉっと! そいつは注意して運んでくれよ~? 年代物なんだからね」
フリーデンの一室でロアビィがクルーを駆り出して指示を飛ばしていた。
長期契約なので私財を投げ打って娯楽屋を作る気らしい。……事後承諾で。
そんな訳でサラにジャミルから承諾を得る代わりに女性は会費タダという交渉をロアビィは受けていた。
「丸くなったな」サラを差して語るアムロは丸い物体を抱えている。
「何ソレ?」「娯楽室にはマスコットもいるかと思ってさ」覗き込んだウィッツに、その丸い物体は
「ハロ!ハロ!」「うわ!こいつ、動くぞ!?」緑の悪魔……もとい、ペットロボのハロである。
「新手の仮面か何か?」「こんな仮面があるわけないだろ。ペットロボだよ」「へー、アムロってこういうの作れるんだ、カッワイイ~!」
ドートレスのカスタマイズの相談ついでに、キッドの所からパーツを貰って組み立てたらしい。
「簡単な作業ぐらいならできる」「そいつは便利だね。この娯楽室のマスターってトコ?」「ハロを雇いたいなら会費チャラが条件だ」
先述の交渉で女性陣は会費タダ、テクスとはビリヤードに敗れて会費タダ、アムロもハロ貸し出しで会費チャラ
さらに微笑ましい少年少女から会費とをとるわけにもいかず……
「タダの奴ばっかり!」ロアビィは叫んだ。


ティファが自分と同質の存在を感じられるなら、相手もまた同じ。
その道理をアムロはすっかり忘れていた。
戦闘配備について尚も、ただのバルチャーが相手だと思っていた。
血相を抱えたティファがMSデッキに現れるまでは。
「ティファは何を言いにきたんだ?」コクピットからメカニックのナインに尋ねる。
話によるとガロードを引き留めているらしい。
「ガロードが負ける?予知夢なのか」
「そんなことより、大丈夫ですか、このドートレス……言われたとおりに仕上げましたけど」
急な出撃でまだ一度も動かしていないのだ。
「問題ないさ。操縦は覚えた。速度には馴らしていけばいい。武器はGXと同型のサーベルと
 キッドの作ったビームマシンガンだな。相手がガンダムタイプだって問題ないさ」
「いえ、実はエネルギーがドートレスのじゃ足りなくて」
「おいおい……」
本来増設する予定だったエネルギータンクを増設する時間がなかったというのだ。
「残量には気をつけるさ。早めにフリーデンに戻って補給する」
「お願いしますよ」「ガロードのフォローもな。出るらしい」
ティファを振り切ってGXに向かうガロードがドートレスのモニターに映る。
「どうでもいいけど、このドートレスの色は……」
「アムロの機体の色でしょう?チーフが。白い悪魔なんですから」
「……まあいいさ。アムロ=レイ、ドートレス先行するぞ!」



248 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/06/26(土) 02:17:50 ID:???
敵はスノーボードに乗っている……と形容するのが相応しい、ある意味奇抜な機体だった。
「雪上戦闘用のMSか!」フォートセバーンに配備されているジュラッグだ。
アムロが知るよしもないが、ボード型のそれは宇宙革命軍が砂地や雪上での戦闘を想定した
スレッジと呼ばれるもので、ジュラッグも一律で寒冷地用に改造されている。
そしてAWに生きる人間なら、同型の機体が多数存在することは敵が相当の組織力を持った
危険な相手であると判断するだろう。実際、NTの予知を覆そうと流行ったガロードを除く
ウィッツとロアビィは慎重に行動している。

「しがみついていれば!」アムロのドートレスのライフルが、雪上をジャンプしたジュラッグを捉える。
スレッジによる雪上の移動は捉えるのは容易ではない。
だがスノーボーダーのようなジャンプを動作に入れることはアムロにとって撃って下さいと言っているようなものだ。
僅かな滞空時間、それは物理法則に支配される無防備な時間なのだ。
「威力が高い。これなら普通のドートレスのライフルで充分だった」
武器の選択を一瞬アムロは後悔する。
だが並走するジュラッグの背面に跳ぶと二機と串刺しにするように撃ち抜いた。これで節約になる。

「うっそぉ……」ブリッジではアムロの神業にトニヤが感嘆の声を挙げる。
ジャミルですら喉の奥で呻きを挙げていた。
だが、アムロの操縦技術に関心する一方、量産機とは明かに異なるMSがGXを圧倒しているのを忘れてはいない。

「あの白い機体……キュベレイか?」実際に見たことはないが、形状は似ていた。
世界が異なるが、類似する部分があるのは不思議ではない。向こうとこちらと、両方に『ガンダム』が存在したように。
「NTなのか」キュベレイから導き出される推論、それはあの白いMSがサイコミュを搭載しているのではいかというものだ。
そのアムロの予感は現実になる。

「そう…。僕がニュータイプだ」
「黙れ! お前がニュータイプなら、なおさら負けられないんだ!」
(逃げて、ガロード…! 今のあなたでは、その人に、勝てない!)

三人の少年と少女の思惑が交錯する中、ハッキリとした悪意がガロードに向けられたのをアムロは感じ取った。
「ちぃ……邪魔をするな!」ジュラッグを片付けて白いMS――ベルティゴに銃口を向ける
だが……「弾切れ!?」……カチ、カチ、と引き金の音だけが虚しく響く。
「特別な力を持たない人間が、この僕に勝てるはずが無いんです!」
ビットがGXを蚕食し、ガロードは気絶に追い込まれる。
「人々の幸せのため、至福に満ちた世界を築くために、貴方の命を使います」
ベルティゴのパイロットの言葉は、信念に満ちているようにみえるがその実、とても無垢なものに感じられた。
アムロは叫ぶ。


第十話「ニュータイプはそんなに便利じゃない!」







251 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/06/27(日) 01:46:34 ID:???
「今僕に話しかけてきたのか貴方ですか……貴方のニュータイプなのですか?」
ガロードを人質にし、ティファを攫ったカリスがアムロの叫びを認識する。
「ニュータイプが何故、その力を否定するのです」
「否定はしていない!盲信はするなといっているんだ」
アムロの持つサイコフレームが耀きを増す。するとエネルギー切れをおこしていた筈の
ビームサーベルが刃を形成し、ベルティゴの腕先を切断した。
「この僕が読み切れなかった……やはりニュータイプ!」
しかし奇蹟は長く続かず、サイコフレームが耀きを失うと、ドートレスも沈黙した。
そのコクピットにベルティゴのライフルが突き付けられる。
「貴方も一緒に来て貰います」「……分かった。だが三人は狭いな」
カリスは指示を出し、アムロは自らドートレスを降りると、彼の部下のジュラッグに乗り込んだ。


ジャミルはキッドのGXの改良案を許可するとブリーフィングルームへと足を運んだ。
「あの野郎、ノコノコ敵についていくなんでどうゆうつもりだ!」
「ヘットハンティングってヤツじゃないの?アムロのあの腕、見たでしょ」
「もしそうだとしたら、私達は敵のニュータイプに加えて彼まで相手にしなくてはいけません」
「はん!上等だ。信用を裏切るヤツはMS乗りの風上にもおけねぇ!俺がぶっ潰してやる」
「正直、アムロにしてもニュータイプにしても、かなりキッツい相手だよねぇ。
 あんなのが居てなんで今まで噂にならなかったのか不思議なくらい」
「アムロってさぁ~…全然自分の事話さなかったもんね。ま、そんなのみんな一緒だけどね」
喧々囂々のクルー達にジャミルは割ってはいる。
「アムロは元軍人だ」
「え?」「軍人って……」「そういえばアムロってキャプテンの1コ下だもんね」「なにぃ!?俺よか10も年上だってのかよ!?」
一通り騒いだのを待って、ジャミルは続けた。
「おそらく、相手の目的もまたニュータイプ集めだろう。アムロを求めたのもそういう理由だ」
「ちょっと待て、アムロもニュータイプだったってのかよ!」「まあ確かに、それならあの強さも納得だけど?」
「……戦中、私の他に沢山のニュータイプが居たと前に話したな。
 ニュータイプにはティファのように生まれながらにその力を顕現させた者と
 ある日突然、その力を覚醒させた者がいた。そのような者達は戦場で覚醒することが多かった」
「それでは……」やはりアムロはニュータイプなのか?と続けようとするサラをジャミルは遮った。
「ニュータイプの数が戦局を左右すると言ってもいい状況で、軍はニュータイプと思われる者、覚醒する可能性のある者
 いわばニュータイプ候補と言える人間を集めていた。その主な条件は"戦場で著しい戦果を挙げた者"だ。
 ニュータイプは兵士として優れていたからな。逆に言えば兵士として優れているものはニュータイプの可能性が強いということだ」
「そうか。アムロのあの強さを見れば相手はアムロをニュータイプだと思っても不思議じゃない訳か」
シンゴの言葉にジャミルは頷く。
「アムロはニュータイプではない」……少なくとも、コチラの世界におけるNTの定義からは外れる、とジャミルは知っていた。
「だが彼は特殊部隊にも所属していた……優れた軍人だ」これも嘘ではない。彼はロンド・ベルという特設部隊に居たらしい。
特殊部隊、という響きに皆が驚きの溜息を吐く。ロアビィなどは口笛を吹いた。
「そっかぁ~わかったわ!」「何がだよ」指を鳴らしたトニヤにウィッツが訊ねる。
「だから、そんなアムロがティファの側にいるってことは……」「ティファの安全確保の為に投降したということですね」「敵陣に伏兵を置いたって訳か」
「べ、別に俺もそれぐらい分かってたぜ」「ついでにティファを助け出してくれると楽なんだけどなぁ~」「馬鹿ねぇ、それじゃあガロードの立場ないじゃない」
暗く沈みかけていたフリーデンが少し明るさを取り戻し始めていた。




252 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/06/27(日) 01:49:49 ID:???
「違うな。彼はニュータイプではない」「そうですか。ですか並ならぬパイロットです」
フォートセバーン市長であるノモアは、ティファとアムロの身体調査をカリスに報告していた。
「私達の目的の為に、ぜひ味方に引き入れるべきです」「だが、ジュラッグのパイロットは死んでいなかったのだろう?」
「はい、喜ばしいことです……(ッ!)……ですが、殺すこともできたのに敢えてそれをしなかった技量を認めるべきです」
ノモアの脳裏にあったのは、人を殺せない男が役に立つのか?という疑問だった。それをカリスはNTの力で読んだのだ。
「兎に角、ティファも彼も僕に任せてください。我々の理想を必ず理解して貰います」
「アムロという男はいいが、ティファは駄目だ」ノモアはじっとカリスを見つめる。
「しっかりとデータを取ってからでないと、お前と彼女の力が、どういう形で共鳴するかわからんのだ」
自分に反感の心を向けはじめている少年に、ノモアは理解を求めるように諭した。
「世界統一のためだ。個人的な感情は捨ててかかってくれ」


今頃キッド達はデスマーチだろう……軟禁されているアムロはそんなことを考えていた。
GXを始めMSは酷いダメージだったし、フロスト兄弟が襲いかかってくる可能性を考えると
ノンビリと修理をしている訳にもいかない。メカニックの辛さはカラバやロンドベルにいたアムロにはよく分かる。
「失礼します。お食事をお持ちしました」フォートセバーンの自衛部隊の制服を着た少女がトレイを持って部屋に入る。
何か聞き出せないかと、アムロは2、3、会話を持ちかけた。
「ユウリ=アジッサ?」彼女の名前を聞いてアムロは眉を顰める。
「何か?」「どこかで会った名前だと思ってね」「駄目ですよ、そういうの。私には恋人がいるんですから」
そういうつもりじゃない……とアムロが困っているとカリスが現れた。
カリスは彼女を下がらせるとアムロに問う。なぜコクピットを外したのかと。
「個人として人を殺すだけの悪辣さは持ち合わせてないだけさ」アムロはそう答えたが
実際はこの世界でイレギュラーである自分が人を殺す影響を考えて、だ。
「ヒューマニズムですか」「いや、ただのエゴだよ」
余裕があるならそうするだけで、それに引っ張られて自分が死ぬつもりはない。
「ティファとはもう話したかい?」「貴方には分かるはずです。NTに距離は関係ない」「俺はNTじゃない」
やはり黒幕がいるな、とティファと会うのを止められているらしいカリスをアムロは見上げた。
「僕にはあなたがニュータイプでないというのは信じられないのですが……
 今回はそういう話をしにきたのではありません。貴方に僕たちの力となって欲しいのです」


その頃、フリーデンはアムロの予測通り、フロスト兄弟の攻撃を受けていた。
さらにその苦衷の中でキャプテンであるジャミルが不在。
ロアビィとウィッツは劣勢に立たされていた。


「僕はこのニュータイプの力で平和を、幸福な世界を勝ち取ります。それが力を持つ者の使命であるからです」
アムロは首を振った。カリスの理想はアムロには決して受け入れることのできないものだ。
NTによる使命を認めるのは、シャア=アズナブルによる粛清を認めるのと同意義だ。


ジャミルはガロードを連れてGコンを氷った湖の上に投げた。
戻る気があるなら取ってこいと告げる。取りに行けば氷が割れるかも知れない
だが……「"特別な力"はいらん」……ガロードは走った。


「なぜです!多くの人を救うことができる社会を何故貴方は望まないのです!
 ……貴方は所詮バルチャーなのですね。新しい人類になる資格のない人間だ!」
アムロは哀しそうにカリスに向かって告げた。


第十一話「エゴだよ、それは」






257 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/07/03(土) 01:43:30 ID:???
復活したガロードとGXの新装備・ディバイダーの活躍によってフロスト兄弟は退けられた。
さらにキッドの開発したシミュレーターで訓練を積み、対カリスに向けてフリーデンは準備を整えるのだった。
しかし、その準備は容易には進まず、一方のカリスもまた同胞であるティファとの会合を阻まれていた。
「少し痩せましたか?」「さあね。鏡を見る機会がないからな。ティファは大丈夫かな?」
「丁重に扱うよう命じています」「カリスは知らないのか?」
沈黙したカリスに対して、アムロは続けた。
「ティファのこと、気にしているよな?」「……肯定しましょう。彼女は僕と同じNT、選ばれた人間だ」
「それは違うな」アムロは即座に否定した。
宇宙に進出した人類が意識を拡大させた結果がNTであるならば
それは広大無辺な真空の闇の中で人が他者を求めた証左に違いない。
そう、だからシャアはNTになりきれなかったのだ。
だがシャアはNTを求めた。他人を拒絶しながら、人の温もりを求めていたのだ。
「このままではキミは取り返しのつかないことになる」
「それは貴方のニュータイプとしての力ですか」「いや、経験だよ」
「大人ぶるんですね」「大人だからな」「だから愚かなんだ、古い人類は」
カリスのその言葉に、アムロはこの世界の本質を覗き見た。
戦後に生まれた人間は、憎んでいるのだ。この荒廃した世界を造った過去を。
「僕には力がある……だから失敗などしない」


ニュータイプと戦う力、ティファを助ける力、ガロードは力を求めていた。
だが彼は自分の限界を知っている。それでも止められない衝動をジャミルは許した。

単身フォートセバーンに潜入するガロード。
そこで彼はエニル=エルとノモア市長の会話を聞いてしまう。
エニルの父とノモアが元・宇宙革命軍の軍人、ノモアは技術者であったこと。
そして戦争が終わっても彼の中の戦いは終わってないこと。
「市民達には平和を謳い、カリスの前では世界統一を唱え、訴えていますが……
 私の真の目的は、地球人類の粛清にあります」
その為の『ライラック作戦』……15年前に失敗したノモアの悲願、
NT用巨大モビルアーマー・パトゥーリアとベルティゴ5機によるニュータイプ部隊の降下作戦である。
今、そのパトゥーリアはフォートセバーンの地下に眠っている。
そしてそのパイロットは……
「正直困っています。ティファとカリス、どちらをパイロットにするか……」
「カリスという子は、博士の『作品』なんでしょ?」
「そうです。私の最高傑作です。今までこしらえた中では最も能力が高く、乱れも少ない……
 人工ニュータイプとしては、ほぼ完成体と言って良いでしょう」


ガロード不在のフリーデンにオルバ=フロストが強襲する。
自分のミスで兄を傷つけた事への苛立ちと、兄を傷つけたフリーデンへの憎しみを乗せて。

一方その頃、フォートセバーンでは……
「ざわついた空気を感じる……来たのか、ガロード?」
アムロは部屋を脱出していた。彼は病気のフリをして門番を騙したのだ。
その為にワザと運ばれていた食事を食べるフリをして捨て、絶食し顔色を悪くしていた。
アムロは直感だけでガロードの元へ向かおうとしていた。
おそらくそこにはティファもいる。ティファがいるなら自分を導いてくれている筈だ。
かつての自分がホワイトベースの仲間達を導いたように。




258 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/07/03(土) 01:45:17 ID:???
「お前がニュータイプだと思っているその力は、人間によって造られたもんだったんだぞ!」
「そう。僕は、元は普通の人間だった。でも、僕は力が欲しかったんです。
 だから、ノモア博士にお願いして人工ニュータイプとなった」
「なんだって!?」
「昔の僕は、平凡でつまらない人間でした。でも、僕はこの世界の変革を願って止まなかった。
 その為には力がいる。人を超えた力が必要だったのです」

「カリス、君は……」
ガロード、ティファ、カリスの集まる場所へ、アムロもまた引き寄せられる。
そこで語られる、カリスの真実。カリスの願い。
「誰にだって経験があるでしょう。"人を超える絶対的な力を手にしたい"って思ったことを……
 僕はそれを実践したまでです。いつの日か、選ばれた心正しき者が僕のようにニュータイプと同じ力を持つようになる。
 そうなれば、この世界には真の意味で平和な千年王国が築ける……僕はその大いなる計画の先兵なのです」
「確かに、俺も力が欲しいと思った……
 けど、違う! それってなんかわかんないけど違うだろ!?」
「カリス、NTの力は他者を越える為の道具じゃない!力をそういう風に使うことで平和などつくれないんだ!わかるんだよ!」
「ではティファ、彼女は何のためにこの力を得たというのです。あなた方は彼女を否定するのですか?」
自然環境下にあって、ニュータイプの発生はありえない……ノモアにそう教えられていたカリスは
ティファに向かって語る。彼女も人工ニュータイプである、自分の同胞であると信じて。
だが、ティファは生まれたときからその力を持っていた。純正のNTなのだ。
「馬鹿な…それじゃあ君は……僕は……」
「カリス、邪念を捨てるんだ!!」
悩乱するカリスに、アムロが叫ぶ。
フォートセバーンの吹雪が、キリマンジェロを思い出させる。
黒いガンダムに乗った強化人間の少女の事を。
彼女を救えなかったカミーユの姿を。
「そこまでだ。君たちは知りすぎてしまったようだ……」
ノモアとエニルが銃口を構える。さらに外ではアシュタロンが街に雪崩れ込んできていた。
ガラスが割れる。それは千載一遇の脱出のチャンスに思えた。
だが、カリスの存在がガロードの足を躊躇わせる。
「カリス!来い!俺と一緒に!!」
動揺するカリス……しかしエニルの銃弾は容赦なくガロードを狙い……
「舌を噛むなよ!」アムロは即座にガロードとティファを抱えて飛び出した。
そうしながら、その冷静な自分の行動をどこか情けなく思っている。
カリスを救う事をあっさりと諦めた自分の行動に。




第十二話「人は過ちを繰り返す……まったくっ」






263 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/07/05(月) 02:12:11 ID:???
アシュタロンと戦うMS……それはGXだった。
「でも、いったい誰が!?」 「あの人です」
GXに乗るのはジャミル=ニート。コクピット恐怖症だった男だ。
「克服したのか、ジャミル……ガロードの影響かな」「へ?俺?」
アムロはGXの姿を見上げながら呟いた。
少年の心は、時として成人男子に伝染する……よくある例だ。

(ノモア市長は僕に嘘をついていた……でも市長は僕の全てだ。
 ……なら僕は……何を信じればいい……?)

ベルティゴでガロードを追いかけるカリスは、しかし混乱の中にあった。
ジャミルはアシュタロンをウィッツとロアビィに任せ、ガロード達の救出へと向かう。
「…とにかく今は、命令を遂行する!」
カリスの攻撃を、GXが防ぐ。
「GXに乗っているのは別のパイロットか!だが古き人類である限り、僕には勝てない!!」
ベルティゴのビットが展開する。だが、GXはそのビットを撃ち落とした。
「バカな…っ!もしや、あのパイロットもニュータイプ!?
 いや、違う!! ならば僕が感じるはずだ!!」
カリスの焦りは悲鳴に近い。
「凄いな、ジャミルは……勘を殺してビットを撃ち落としている」
精神波でコントロールされていても、動いているのは物理的な物体……ならば予測ができる。
「ガロード、よく見ていろ。お前にも出来るはずだ」
「俺も……ハッ!見える!俺にも見えるよ、アムロ!」

「うぅぅぅぁあああっっっ! はぁっ、ああぁぁぁぁぁっっっ!!!」

(ベルティゴから敵意が消えた……?)
代わりにアムロが白い魔神から感じたのは混乱と苦しみだった。
それは理知的なものではなく、生理的なものだ。
その正体は『シナップス・シンドローム』
人工ニュータイプであるカリスに起こる死に等しい苦しみであった。
本来は月に一度の周期でしか起こらず、事前にノモアの処置を受ければ痛みも殆ど無い。
だが、今回はティファとの接触によって早まったようだった。






264 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/07/05(月) 02:14:20 ID:???
ベルティゴは撤退し、アシュタロンも復活したシャギアがオルバを制し撤退を促した。
そしてフリーデンは久々にフルメンバーが集まったのだった。
しかし、それを祝うにはガロードの持ってきた情報は楽観的ではなかった。
「マッドサイエンティストだな」アムロもNT研究所に入れられた経緯もあり、あまりいい感情は持っていない。
「いや、過去の亡霊だ」ジャミルは当事者だけに根底に流れる憎しみを理解していた。


パトゥーリアを見上げるノモアはエニルに語る。
「カリスは純粋だからな。説得は難しいが、欺くのは容易い。
 "パトゥーリアが動く時こそ、戦後世界に真実の平和をもたらす戦いの始まりである"
 と、常々教えてある。死んでいった戦友と同じ苦しみを、地球の奴らにも教えてやる!」
そんな彼をエニルはこう評するのだった。「フッ…悪い大人だわ……」


アムロは戦いに向けてドートレスの装備に注文を付けていた。
「ベストはパトゥーリア起動前に決着をつけること。
 だが、パトゥーリアが動き出した場合、巨大MA戦を想定する必要がある」
戻ってみれば「百戦錬磨の軍人」という事になっていて(間違いではないが)
アムロはウィッツやロアビィに戦術支持をする立場に追いやられていた。
「……ガロード、聞いているか?」
ガロードはカリスと戦いたくないと答えた。
「カリスって奴の気持ちもわかるような気がして……
 誰だって人を超えた力が欲しいって思うこと、あるだろ!?
 俺だってあったもん。それのどこが悪いのか……」
そんなガロードにジャミルは答えを示した。
「……方向を見失った者には、時には拳を振り上げ、突き放す勇気がいる」
「それに、さ……ガロード、お前はカリスに勝ちたいんじゃないか?」
フリーデンに、たった一機の敵襲が告げられる。
ベルティゴが、敵を、GXを、ガロードを求めて来たのだ。
「ガンダムX、出るぜぇっ!」
(ガロード…。あの人を、助けてあげて…!)
「今度こそ、負けられない! アイツのためにも…俺は、負けられないんだぁっ!!」

「それでパワーアップのつもりですか! 子供騙しな!」
「くぅっ!思い出すんだ! あの時の、ジャミルの戦い方を!!」
雪原で二つの白い巨人が火花を散らしあう。
ウィッツが、ロアビィが、ジャミルが、アムロが、ティファが
応援する中、遂にガロードはビット攻略の感覚を掴む!
「僕が…負けてる…!? 人の力を超えたはずの僕が!!」
ビットを全て潰され、しかしカリスはビームサーベルを抜いた。
それに答えるようにGXもビームサーベルを抜き……
「うぉぉおおぉおおぉぉおおぉおおぉお!!!」
数合の斬り合いの後、立っていたのはGXだった。
「これでいいのです……人工ニュータイプの僕が、力の限り戦って
 普通の人間に敗北する……これで思い残すことはない……」
地に沈むベルティゴのコクピットの中で、カリスは呟く。
「あの時、僕は市長の心を感じた。そして全てを知ってしまった……
 僕は……ただ市長の憎しみを晴らすための道具にすぎないと…!」
カリスは拳銃から薬莢を抜くと、やがて現れるであろう勝者に向けて構えた。
「僕は本当は弱い男だから、君に手伝ってもらうよ、ガロード……
 これで僕を造るために死んでいった者達の魂も救われる……さぁ、ガロード。愚かな僕を撃て!」

戦いの結末を見ていたアムロはホッと溜息を吐いた。
これでカリスは、カリスを大切に思う者達を道連れにしなくて済む……と。
フォートセバーンの市民も、自衛軍も、カリスを必要としていたのだ。
誰よりも純粋に平和を求めるカリスを。それを見てきたアムロは分かる。
そんな彼らをノモアの狂気に巻き込む事はカリスにとってもよくない。
だから彼自身の為にも、今を生きている者達の為にも……

第十三話「カリスは生きなきゃならない」





278 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/07/23(金) 01:33:24 ID:???
銃口を向けられたガロードは即座にカリスに撃ち返した。
その行動はAWに生きる者の習性であるといってもいい。
カリスはそのままフリーデンに収容され、手術を受けることになった。

艦長室でアムロは壁を叩いた。
「俺は……何のためにこの世界に来たんだ!」
自問をするアムロの姿をジャミルは黙して見ていた。
「別の世界にきてまで、何も変えられずに!」
「テクスはいい医者だ」
カリスが死ぬことはない……とジャミルはアムロに告げた。
「カリスは潔癖すぎる。急ぎすぎただけなのに、失敗をああやって償おうとするのは間違いだ」
「そうだな……そうだと、思いたい」
ジャミルは濁した。彼もまたNTとして生きて過ちを背負った人間だ。
そして長い償いの旅をしている。
ジャミルの視線を受けづらく、アムロは窓の外を見た。
そこにはフリーデンを出るガロードとティファの姿があった。


カリスはフリーデンから逃げ出していた。
目的地があるわけではない。敢えて言うならば自分の死だ。
カリスは極寒の雪原で死に絶えようと外に出たのだ。
だが、その小さな、血の巡りが悪くなり白くなった身体をガロードが抱え起こした。
「自分で選んだんだろ!? 自分で望んでニュータイプになったんだろ!!
 死ねば全部チャラになると思ったら、大間違いだからな!!そんなやり方…俺は絶対認めないぞ!!」
そのガロードの言葉は、カリスの心も抱え起こした。

「3人揃ってのこのこ出てくるとは、手間が省けるわ!」

そこへ、エニルの指揮するカリス奪還の舞台が襲いかかる。
「させるか!」「アムロ!?」「いけ、ガロード!」
アムロはドートレスでジュラッグの部隊を相手にしながら
戦場をガロード達から遠ざけようと動いた。
エネルギー不足はバックパックの追加で解決している。
「ちぃ…それではもう戦えない、撤退しろ!」
だが、カリスを取り戻そうとするジュラッグ部隊は執拗に食い下がる。
「なんとしてもカリス様をっ!」「カリス様を取り返すんだ!!」
両腕を切断されてなおも、身体ごと当たりにきて戦おうとする。
「カリス!」「しまった!」エニルがカリスを攫う。
「返せ…カリスを返せよ!アイツ、やっと笑ったんだ! ちょっとだけど、初めて笑ったんだ!」




279 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/07/23(金) 01:37:55 ID:???
パトゥーリアが起動する。
ノモアの15年の憎悪と、憐れな少年を糧に。
朱色の巨躯が二つに割れ、ビームの洪水が街に降り注ぐ。
「自分の街を燃やしちゃっても、全然意味ないじゃない!」
「戦争の亡霊が、取り憑いている…。奴の目的は、全地球人類に対する復讐だ」
アムロはMSデッキに向かった。観戦をしている場合ではないのだ。
ガロード達も続く。ジャミルの出撃命令を待つまでもないだろう。戦うしかないのだ。

「克目せよ地球人類!! これが、お前達が宇宙に住む民にもたらした苦しみだ!
 お前達は血と炎と無意味なる死を宇宙にもたらした! その罪を、今こそ償うのだ!
 カリス・ノーティラスの力ある限り、何人たりとも我らの復讐を止めることは不可能なのだ!」

パトゥーリアのオールレンジ攻撃をアムロはかわしながら反撃する。
「スゲェ…」「練習してたわけじゃないよね?」「よぉし、アムロに続くんだ!」
ビーム砲を散らしながら、火の海と化すフォートセバーンでジュラッグが動くのをアムロは見つけた。
アムロはジュラッグに近づくと、向けられた銃口を手早く撃ち落とし、ビーム砲の死角に誘った。
通信をしてみればフォートセバーンの自衛軍も混乱しているらしい。
アムロは彼らを怒鳴りつけ、戦場から離れて市民救助に動くよう命じた。


一方、ガロード達に加勢が現れる。
ベルティゴに乗ったジャミルとティファだ。
ティファが告げる。カリスの心が消えていくと。

「程なく、カリスはパトゥーリアそのものとなる! 私の求めた真のニュータイプになるのだよ!」

(宇宙革命軍はNTを主義にしていたと聞いたが、これではまるっきり戦争の道具だな)
ノモアの悪意を感じながら、アムロは考える。
「ジャミル、何故ティファを連れてきた。この悪意は毒だ」
「私がお願いしました……。私が導きます。あの人のところへ」
パトゥーリアがカリスの力で動いているなら
カリスを目覚めさせることができれば、戦いを終わらせられるかも知れない。
ジャミル達はカリスの元へ、ガロードを運ぶ決意をする。

火線を潜りぬけ、GXの三日月型のビームがパトゥーリアの表面を穿つ。
「目を開いて、周りを見て!」「カリスゥゥーーッ!!」
ティファが、ガロードが、カリスの心へ向かって叫ぶ。
発射態勢に入った荷粒子砲の砲門を、アムロがバズーカで潰す。
アムロがMA戦を想定してキッドに用意させた装備だ。
(カリス、皆キミの為に戦っている……)
「人の善意を無視するヤツは一生苦しむぞ!」
GXを背後から襲うビーム砲を撃ち落とし、アムロは叫んだ。



280 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/07/23(金) 01:39:44 ID:???
ガロードはカリスを取り戻し、ノモアはパトゥーリアと共に沈んだ。
エニルは姿を消し、そして目覚めたカリスは……

「やっぱ、帰るのか…あの街に…」
「はい。僕には全てをフォートセバーンの市民に知らせる義務があります。
 もし許されるのなら、街の復興に一生を捧げるつもりです」
白き道を進むカリスの背中を見送るガロードに、テクスが告げる。
カリスの背負った十字架は、フォートセバーンの復興だけではない。
シナップスシンドローム……もはやそれを和らげる技術者も、研究所もない。
カリスはその苦しみと一生闘わなければならないのだ。
それはニュータイプに幻想を抱いた彼が背負った重たい十字架なのか。

「俺の中にもアイツがいた! 誰だって力が欲しい!誰の中にもアイツがいるんだぁっ!!」

嘆くガロードをジャミルは制す。それがカリスが自分で選んだことだと。
「希望は、あります」
そしてティファはそう力強く言った。その言葉の通り、歩くカリスは笑顔だ。

(ガロード、ティファ、僕は生きるよ。生き抜いてみせる!)

「そうだな、希望か……」
それまで沈黙を守っていたアムロは、そう呟いた。
「アムロ?」「いこう、俺達も進まないとな」
NTは同じNTを、強化人間を救うことはできない……
そんなジンクスをこのAWで振り払ったのかも知れない
アムロはそんな事を考えていた。
その原動力になったのは……アムロは少年と少女を見つめた。


第十四話「君達に逢えて、本当に良かった」




290 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/02(月) 00:25:44 ID:???
「お使い?」
ウィッツとロアビィが休暇を申請し、許可された今
GXと自分のドートレスしか戦力がない状況で、まさか自分が買い出しにいかされるとは
思ってもいなかったアムロは思わず上擦った声を上げた。
自分よりはるか年下のキッドにお使いと言われたのもあるが。
「パトゥーリアとの戦闘で資材が無くなったのか……」
「いんや、足りなくなったのは食料品ね。はいコレ、買ってくるもののリスト」
まてまて、そういうのはサラ辺りから指示されるものじゃないのか、とアムロの表情に対しキッドが説明する。
曰く、クルーのリクエストを集めていたので最後に回ってきたメカニック組からアムロへという経路である。
(俺は聞かれてないぞ……)
さらに物資購入の地点の立地上、フリーデンでは入れないのだ。
……すでにドートレスの背中にはコンテナが搭載されている。アムロは昔、資料で見た陸戦型ガンダムを思い出した。
「あと実のところ、物資補給より交易が重視なんだよね」
そこの果物類は高級嗜好品として高く売りさばけるらしい。
ので、運ぶ途中に狙われる危険もあるのでアムロが適任……と。
「まあいいさ。暇だし」「うん、人選の一番の理由は暇なヤツだからね」「………」


アムロが降り立ったのは寒冷地帯の中で、近くを走る火山によって暖められた地下水の恩恵を受けて
豊富な食料資源を生産している自治体である。
フリーデンと面識があるアフランシという顔役に会ったアムロはコンテナに交易品を詰め終わり、一息ついた所だった。
「こいつは寒冷地仕様だ。ここじゃ使い物にならないんだから、このぐらいだな」
「冗談は休み休み言いなさいよ。寒冷地用のMSってだけでも買い手なら付くわよ。わざわざ汎用に直して売る気?」
MSの売買もやっているらしい……とアムロの目に付いたそのMSはついこの前戦ったばかりのものだ。
「ジュラッグ? フォートセバーンのMSがどうしてこんなところに?」
フォートセバーンのMS……その言葉にアムロに振り向いた(ジュラッグの持ち主らしい)女性に、見覚えがある。
「……ノモアと一緒にいた?」「フリーデンの!?」
エニル=エルだ。どうやらノモアの元から逃げ出すついでにちゃっかりとジュラッグを失敬してたらしい。
「ちょうどお昼とはいえ、鉛弾を食事に選ぶつもりはないな」身構えるエニルをアムロは牽制する。
次いで適当な食事処を差して彼女を誘った。


「君は革命g…」「余計なことは言わないで頂戴」
ガロードから聞いた情報と確かめようとして、エニルに遮られた。
「それとも私を魔女狩りで殺すのが目的なのかしら?」「いや、すまない。常識がなくて」
宇宙革命軍は地球の敵、という事らしい。ノモアが15年、地球連邦を宇宙革命軍の敵と思い続けたように。
そこら辺の憎しみの深さというものは、別世界の人間であるアムロには計り知れないものがある。
注文したミートソースに付いてきたサラダを囓りながら、アムロは思った。
「宇宙の状況を知っていたりしないか?」
アクシズを宇宙で止めようとして、いや止めて気がついたらAWの地上にいた。
単純に過ぎる考えではあるが、宇宙に元の世界に戻るカギがあるのではないか……アムロはそんな事を考えていた。
「残念ね、私は宇宙のことなんて何も知らないわ」
「帰りたいと思わないのか?」
「生まれも育ちも地球なのに?」
自嘲するようにエニルは語った。父親が宇宙生まれであることだけで、彼女は平穏を、家族を失ったのだ。
だから彼女は独りだ。宇宙は遠く、地球は自分を受け入れてくれない、だから独りで強くなったのだ。
「けど拍子抜けね。貴方だけなんて」
「ガロードがいたら君は……」
「そうね、この街を火の海にしてでも……」
「そんなことをすればこの大陸では生きていけなくなる」
ここは攻めるに易く守るに難い。その上、一度荒れれば再び農業拠点として復活するまで十数年を要する。
それらの条件により、暗黙の了解としてバルチャー同士で争いを持ち込まないことになっている。
フリーデンが直接乗り込まなかったのは余計な刺激を与えない為でもあるのだ。
そんな場所で戦いを起こせば、他のバルチャーから制裁を与えられるのは必然である。
「無茶な事をして……命を大事にするべきだ」
「そう? そういう貴方は命を大事にしてきた人には見えないけど?」
"ヤツを仕留めなければ死にきれるもんじゃない"……かつて放った言葉をアムロは心の中で反芻する。
シャアの暴走は確かに食い止めたという実感がある。だから今の自分はいつ死んでもいい……
そう自問すると、そうだと答え返す自分がいるのではないか……アムロは爪を噛んだ。

291 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/02(月) 00:33:13 ID:???
「いい歳してやめなさいよ、そういうのは」
指摘され、アムロは視線を逸らした。
「違うな。シャアもララアも、いい加減ここまでまとわりついてはこないさ……」
「え?」「いや、俺の話さ」
NTの怨念ともいうものがあるのなら、あの少年・カリス=ノーティラスを救えた時点でそれは断ち切った筈だ。
ガロードとティファが、(彼らは意識などしてないだろうが)断ち切ったのだ。
「もう少し、未来を信じてもいい筈だ。希望はあるんだから……」
それはアムロが自分に向けて放った言葉だった。
しかしその言葉はエニルを漣のように打ち続ける。
「私は……」

突如、轟音が響く。

床から感じる震動は、大地が起こしたものではない。人が造った巨人の足音だ。
「ヒッヒッヒ……エニルゥ……ひでぇじゃねぇか、俺を見捨てるなんてよぉ」
不可侵領域であるこの場所に、バルチャーが侵入してきた。
それはエニル=エルにとっての過去の亡霊だ。
「ザコット!?」
「全く……お前はいつも要領がいいんだからよぉ……お陰で俺は身体半分ズルズルだぜ……へへへ」
半身を醜く爛れさせたザコットが、MSを連れて街を踏み歩く。
「まあアレだ。世の中全部燃やしちまえば、イーブンってもんだろ!なぁっ!!」
ドートレスの両肩にドータップ二機を付属させた魔改造機・ドートレスジャグラーが炎を吐く。
「ちぃ……正気か!」
「この世界に正気なんざあるわきゃねぇだろがぁ!!」
ドートレスに乗ったアムロが、ザコットに攻撃する。
しかしコンテナを背負ったドートレスの動きは鈍く、逆に押し倒されてしまう。
流石に建物に突っ込むのは回避したアムロ。
「ちぃ……これじゃあ赤字だよ!」かわりにコンテナを潰してしまった。
「協力してくれるなら、赤字は帳消しにしても構わない」
「アフランシか。いやな色のMSに乗っている」「発注したときは白だったんですが……ッ!」
街の自衛団MSが出撃し、ザコット一味に戦いを挑む。
アフランシのMSは一角獣のような角がある赤い機体だった。
「報酬が出るなら悪くないわね」
「エニル=エル!?そのジュラッグではムリだ」
エニルもジュラッグで駆けつけるが、ジュラッグの寒冷地用の調整はここでは逆にデメリットだ。
それでなくてもフォートセバーンから乗り続けてきたらしいジュラッグにはガタが見える。
「ここは俺に任せて下がれ!」
ザコットの部下のファイヤーワラビーに組み付かれるエニルは、しかし猛る。
「そうはいかないわよ。これは私が呼んだ地獄なんだから……
 私はいつだって、地獄を振り払って生きてきたんだから!!」
エニルは相手のビームサーベルを奪い抜き、MSを一刀両断にする。
「私は……エニル=エルよ!!」
ザコットを狙い、コクピットをためらいなく串刺しにするエニル。


アフランシは律儀な男で、本当にアムロが駄目にした物資分を無料で用意してくれた。
この信用がこの自治体を成り立たせているのだろう。
「これでなんとか仲間に面目が立つよ」
戦闘後で煙が立つ街の中、アムロはアフランシと握手を交わした。
「エニル=エルの居場所を知らないか?」
「報酬を受け取ったらスグに去っていったと思う」
アムロは己の手を見た。アフランシのように、エニルとも手を繋ぐことができればよかったのだが。
自分はガロードのように上手くはないらしい……
アムロはもう一度、焼けこげた街を見渡した。
いい加減この荒廃した世界を見慣れていて、この街の活気を見たときはこの世界の天国だな、とすら思ったものだ。それが一瞬でこれである。

この時代を生きるエニル=エルが呼び水となった地獄、そしてその地獄から彼女を引き上げることができなかった自分……
アムロは帰りのドートレスの中で呟いた。


第十五話 「天国なんてあるのかな」





300 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/10(火) 23:36:41 ID:???
朝、アムロが食堂に向かうとロアビィとウィッツが何か討論をしていた。曰く、フリーデンの食事事情について。
ロアビィは概ね是、ウィッツはもっと味付けが濃くて量があるのがいいとか。アムロはジオン勢力圏でのホワイトベースをふと思い出した。
タムラ料理長とブライトの困った顔……「何を笑ってるんですか?」とサラに訊ねられてバツが悪いことこの上なかった
幸いにして(?)ティファの食事を選んでいるガロードに皆の興味が集まったからよかったのだが。
「自分の気持ちが決まってるんなら、ちゃっちゃと動いちゃった方がいいかもよ?後で泣き見るよりはね…」
「でも、『時間が解決してくれるまで動かない』っていう方法もあるわ」 「だけどよぉ、たまに時の流れってのは残酷だぜ……」
ウィッツの言葉に、アムロは少し昔を思い出した。

――貴方は来るのが遅すぎたのよ……――

その言葉はアムロの心臓に霜のように張り付いている。
歩みを阻害するものではないが、踏みつける度に音を鳴らす。
この霜はいつまでも溶ける気配がない。



ティファが新たに向かう場所としてキャンパスに描いたのは海岸と竜の頭のような形をした岩だ。
こればかりは地図にも載ってないので足で探すしかない。
フリーデンのMS隊が海に沿って探索を繰り返す日々が始まった。

「すまんな、勝手な艦長で……」

パイロットの疲労を感じたアムロは休憩を提案しにブリッジに向かい
中でジャミルとサラが会話しているのを立ち聞きしてしまった。

「確かに私にも刻が見えた。人としての未来を感じたのだ。だが実際はどうだ。私は人類を滅ぼす銃爪を引いてしまったのだ。
 だからこそ、知りたいのだ。ニュータイプは本当に人の未来を創るのか、その真実を見届けたいのだ」

「刻か……」アムロは呟いた。
確かにアムロは刻を見た人間だった。だがそのNT同士の邂逅を未来というならば、彼は過去へ帰ることを選んだ人間だ。
かつてパプティマス=シロッコがシャアをして「NTのなりそこない」と評したが、ならばアムロ自身もそれに近い。
「…大丈夫ですよ、キャプテン!」サラがジャミルに答える。
「それに、今更暇を出されても困ります。帰る所も、待ってる人もいませんから。
 私だけじゃありません。この船にいるみんながそうなんです。ここが、私達にとって帰る場所なんですから……」
(この船が……)アムロにとっても帰る場所ではある。
ただ元々のフリーデンクルーほど、心をジャミルに預けるには積み重ねた時間は多くない。
その辺りはウィッツやロアビィも、そうだろう。
この荒廃した世界に生きる人間は常に孤独な力と郷愁の思いを原動力にしている。
「あれ? なぁにしてんのさ」
ロアビィがアムロに声を掛ける。振り返ったアムロは、ブリッジのサラが強ばる気配をアムロは背中越しに感じた。
「……出場亀になるのかな、これは」困ったように頬を掻いたアムロは、ロアビィが手に持っている紙袋に気付いた。
「なんだい、それは」「今度のお仕事って海でしょ? だから、気を利かせたってワケ」



「ぷわはぁ~、あはは~! 気ぃ持ちいぃ~! サラも早くおいでよ~!」 「オッケー! そ~れっ!」

「いいよね~…」 「ホントにいいよな~…」「エロだよ、それは」
ロアビィの提案とはつまり、海なのだから泳ごう……とそういう訳である。
その為に女性陣の水着まで用意していきたというのは流石というべきか。
「ん…?」
アムロの脳裏にNT特有の直感が過ぎる。
「ティファ?」
その呟きに追従するように、ガロード達の視界にボートで外海に向かうティファが現れる。
「あの子、沖へ向かってるわ!」 「そんな! オルクに見つかったら大変よ!」

砂漠化した内陸部に比べ、比較的早く復興し始めた沿岸部と共に海はかつての平和を取り戻しつつあるかに見えた。
だが、それらを略奪することによって生活の糧を得る者達がいた。それが『オルク』と呼ばれる戦闘武装集団である



301 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/10(火) 23:38:58 ID:???
ティファを連れ戻そうとアムロ達はフリーデンへ駆け込む。
「あ~ダメダメ! レオパルドは飛べないし、カナヅチだから!」
が、ロアビィは出端を挫かれた。そしてアムロは……
「……ドートレスは汎用じゃないのか?」
「汎用機だけどガンダムほど出力がないから海じゃ殆ど役立たずだよ……そのままじゃね」
ニヤっと口を上げたキッドに対し、アムロは眉間に皺を寄せている。
「足が……ないみたいだが」「あんなのは飾りだって、ノンプロにはそれがわからないんだよね~」
だからといってドートレスの下半身を丸ごとドータップにするのはどうなんだ……アムロは心から思った。
だいたいドータップ自体、元々宇宙用でシーバルチャーが海中用に開発したものである。改造の改造なのだ。
まあ同トレスするのにタップは必要不可欠ではあるが。あとクリップ。閑話休題。

不承不承マカイゾードートレスで出撃したアムロはジャミルから通信を受けた。
「水中戦の経験は?」「あるよ」「流石だな」「だが今回はティファの保護を最終戦、だろ」
アムロ自身に経験があっても、経験がないウィッツとガロードを率いて戦うのは分が悪いのだ。
「ああ、要になってくれ」「了解。という訳だ、指示に従えよ、ガロード、ウィッツ」

ジャミルの懸念通り、この海一帯にもオルクが存在した。
その首領の名前はドーザ=バロイ。カミーユみたいな声をもつ男である。


「ティファ!」オルクに追われるティファの姿をガロードが視認する。
「んっ……他に誰かいるのか、ティファ?」感応の答えを得ぬまま、アムロも戦闘に入る。
海に引き摺られたガロードに対し、ビームの威力半減を警告するアムロは
オルクのドーシートの伸縮する腕をかわす。
「そんな不格好なMSの相手なんかするな!ガンダムを狙え!ガンダムを!」
「好きでこんなMSに乗っているかよ!」
オルクの言葉に苛立ちながら、アムロは自分に向かってきたドーシートのエンジンをビームサーベルで貫く。
海中でも密着していればビームサーベルも使い道はある、そうガロードに教えて見せたのだが……
「見て無いじゃないか!」
当の生徒はドーシートに羽交い締めにされていた。
「ガロード、振り切れないのか」「やってるけど……こいつら、ガンダムよりパワーが上だってのかよ!」
水中ではそうなのだろう……アムロは埒もない答えを心の中で呟きながらGXの救出に向かう。
だが、GXに向かい、魚雷は放たれた……
「ガロード!!」
GXに向けられた魚雷は4基……だが、アムロが戦闘海域に向かう頃
カメラが捉えた陰は10や20では済まなかった。
「イルカ……?」
その海の住人達は魚雷を取り囲みながら嘶きを上げる。
それはアクティブホーミング――自ら音波を発し、その反射から目標を割り出す魚雷、を混乱させた。
イルカは超音波で会話する生き物だからだ。
(なぜ……?)と考える余裕は戦場にはない。逆をいえばそのような疑問は死に繋がる。
呆けていたドーシートのパイロットがその事に気付いたのはアムロに撃破された後だった。
「ウィッツ、ティファは確保したか?」「ああ、そっちは大丈夫か?」
「ああ。ガロード、撤退するぞ、いいな!」「了解!」「後でディバイダーとマシンガンは拾っておけよ」「うへぇ…」
ドーザも今回は遭遇戦と切り替え、撤退をし始めていた。
(あのイルカ……)
あのイルカの群からは確かに意志を感じた。
感じはしたが、しかしあの中にその意志の発現者は存在しない……
アムロはそのように感じた。そしてティファは自分より多くを見通しているだろうとも。


302 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/10(火) 23:41:56 ID:???
その夜……アムロはフリーデンのデッキでハロのメンテをしていた。
潮風がアムロの天パをさらにキュルキュルにしている。
「ハロ!ハロ!アムロ、バーリィ?」
どうにもウィッツが変な言葉をハロに教えているらしい。
ちなにみメンテ中に気付いたが、見たことのないパーツや配線の形が変わっていたのはキッドの仕業だろう。
(GXか……)
ディバイダーとマシンガンを拾って帰ってきたようだ。
「ニート!ニート!」
来客にハロが跳ねる。
「静かにしろ、夜なんだぞまったく……起こしたか?」「ハロの遊びで目が醒める程、神経質にはできてない」
生真面目なまま、ジャミルはアムロに答えた。
「お前こそどうしてこんな時間に?」「夢をみたから……かな」「夢? 予知夢か?」
ジャミルはアムロが別の世界でNTと呼ばれたことを知っている。
NTの見る夢には予知夢のような性質があるのはティファは実証している。
「いや……俺がみる夢は昔のことだよ」「……そうか」
ジャミルも同じような経験があるのだろう。
「白、だよ」「どういう意味だ?」「俺の見る夢は、白いのが出てくるのさ」「白い悪魔……それが異名だったな」
アムロはジャミルの言葉に笑った。
「いや、違う。動物さ……でも、今日見た夢は違う動物だった。白いイルカだったよ」
「イルカか……戦闘に介入してきたそうだが」「意志を感じた。こっちのNTは動物を操れるのか?」
「そんな事例は聞いたことがない」「だろうな、ティファとは違った感触だったから……また特別待遇か?」
ティファは何か理由があるのだろうが、勝手に行動しフリーデンクルーに迷惑をかけた。
これは普通ならペナルティがあるはずだが、なにぶん"特別な"ティファの事だ。
「どうするべきだと思う?」「おいおい、いつから俺がフリーデンのキャプテンになったんだ?」
今更フリーデンのクルー達がティファを特別扱いすることに反感を持つことはないだろう。
「もう少し、心を開いてくれれば……いや、だからといって受けとめてやれるかと言えば違うか」
クェスの父親役はできない!とシャアに対して開き直ったことのあるアムロである。
「我々も成長が必要ということか」
「いい歳してな……ははは……」
男二人で月見はいい加減いいだろうと、アムロは立ち上がって艦内に戻ろうと足を進めた。
「ハロ!ハロ!エネルギー感知!」
ハロの声に、そしてジャミルの顔に、アムロは振り返る。
海の果てに天から降りる一筋の光……
「サテライトシステム……」
海水を飲んで喉を焼いたような、苦汁に満ちた呻きをジャミルは残した。
「ああ……確かにあれは……






 
       サ テ ラ イ ト シ ス テ ム
第十六話「白鳥のような美しい導き……」








313 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/16(月) 02:02:19 ID:???
いつのまにか予告の人復活してるじゃあないか

314 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/17(火) 00:35:54 ID:wjTGMM92 [1/1回発言]
>>313
そして、最早あらすじ予告ではなくなっている罠

315 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/17(火) 01:00:00 ID:???
それが良いんじゃないか

316 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/25(水) 00:37:25 ID:???
海の向こうにサテライトシステムの光を確認したフリーデンは太平洋の渡海を決定した。
その準備の為にジャミルはシーバルチャーを呼び、物資を集めた。
「これで何とかなりそうだよ、レオパルド」「俺のドートレスもなんとかしてくれ、キッド……」
そこでガロード達はオルクが販売している『Dナビ』の存在を聞く
それは戦時中に開発された高性能海中探査システム。
ドーザ・バロイが昔の研究者使って、一手に作っている、生きたイルカの脳を使った生態レーダー。
「奴らがD(ドルフィン)ハントした後は、海が一面真っ赤に染まるって話だ」


そしてそのDハントから味方のイルカを救う白いイルカ
それはこの海域ではすでに伝説になっていた……
「特殊な能力を持つイルカ、か……」 「たぶん、環境変化による突然変異だと思われますが」
「NT……かもな。イルカの」アムロは呟いた。「そんな話は聞いたことがないが、人間だけにNTが存在すると決まったわけじゃない」
そうなると「NTは宇宙に出た人間の革新」という定義も崩れることになる。それもいいだろう。
結果としてその定義がジオンの選民思想を生んだのだから、アムロとしては否定されて然るべき定義であった。
アムロは知るよしもないが、UC後半には「地球の大地で育ったものこそ強いNTとなる」という思想すら登場した。
アフランシ=シャアやウッソ=エヴィンこそがこの思想によって育てられたNTである。

「そんなことはどうだっていい! 問題なのはその白いイルカが特別な力を持っているために、
 オルク達に狙われてるってことなんだ! これって、まるでティファと一緒だろ!!
 特別な力のために狙われて、誰にも心を開かなくなる……ティファも白いイルカも、同じだったんだ!」

「優しいな、ガロード。その感じ方を大事にするといい」「あ、いや……」
ガロードはバツの悪そうな顔をすると頬を掻きながら答えた。
「知らなかったら、俺もただスゲーイルカがいるってだけって思ってたかも」
「知らなかったら?」
「俺…見たんだ……白いイルカが、ティファといるところを……
 白いイルカは、ティファにも心を開かなかった。"人間を憎んでる"って、ティファがそう言った。
 それでシーバルチャーのおっさんの話を聞いて、だから白いイルカを守ってやらなきゃって思って!」
(だから、守らなきゃ、か……)
白イルカを取り巻く現状と、白イルカを守ろうとすることは直接は繋がらない。
ティファを重ねているとはいえ、白イルカを守ろうと言えるガロードは強く、優しい。
そしてティファや白イルカを守る理由にNTを挟まないのが、ガロードの良さだった。
「……ガロードの話は、本当です」「ティファ!?」「彼女は、自分達の世界を脅かす人間を憎んでいます。固く、心を閉ざして……」
「そうだな。それで、ティファ、君はどうしたい?」言葉を失うティファにアムロが訊ねる。

「助けてあげて! 彼女は今、仲間を守って必死で戦っている!」

「行こうか、ジャミル」「場所が分かるのか?」 「私が、導きます」
ティファの言葉にジャミルがフリーデンを発進させる。
シンゴが声を張り上げて舵を切った「フリーデン、針路変更! ティファ、先導頼むぜ!」

317 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/25(水) 00:41:11 ID:???
レオパルドはまだ改修が済んでいない。
アムロのドートレスは……「バズーカか」ライフルの代わりに水中で有効な実弾を装備し
エネルギーパックを水中用のモーターに差し替えている。
「あの魚雷パック、持っていくぞ」「重たくなるぜ?」
機動性の高いシンプルな機体がアムロの好みだったはずだ。
「いや、初っ端で散撒くだけさ。数を減らせたら儲けもんだ」
当たらなくても敵MSを散開させることができる。
単騎でも水中用に作られた彼らに分があるのに、纏めてかかってこられると厄介だ。
「よし、GXと、エアマスター、ドートレスを出せ」
ジャミルの声が船内に響いた。


「ガロード、相手はDナビを装備してる。水中での機動力は向こうが数段上と考えた方が良い」
「了解……って、アムロどこだ!?」
僚機を見失ったガロードの上で爆発が起こる。
「上!?」「よそ見するなガロード!」
アムロが水面ギリギリを動いていたのには理由がある。
上空のエアマスターを撃ち落とそうとドーシートが水面に上がってくるのを見通していたのだ。
同時にGX程、水中で対応しきれないアムロの機体は水深が浅い処で動き回るのが一番いい。
(ウィッツには悪いが、餌になってもらうぞ……)
アムロは撃ち尽くしたバズーカを投げつけて怯む相手を死角から斬りつける。
(白イルカはいるのか……?)


白イルカは逃げることなく、この海域に留まり続けている。
「……なぜ逃げないの?」
その存在を只一人感知できるティファは、フリーデンの艦橋から訊ねる。

「えっ?……そうよ、人間はあなた達と違って、殺し合いの出来る生き物なの。
 "なぜ"って…? それは……あなた自身が確かめて」

(嫌われているかもしれないな、白イルカには……)
アムロはドーシートの伸びる腕を避け、逆に切り落とす。
「異世界まできて、MSで戦いをやってる俺には!」

――なぜ貴方はこうも戦えるの? 貴方には守るべき人も守るべきモノも無いというのに!――

(ララア、君の言っていたことは正しい。人は守るべきものの為に戦うんだ。
 だから、もう僕にまとわりつくな! 俺は戦っているんだ!!)
背後にエアマスターの存在を感じる。水中に叩き落とされたのか。
「固まれ!」
敵の数はそれなりに減っているが、しかし厳しい……レオパルドの改修はまだか……
アムロが汗を流した時だった。
「バカ! のこのこ出てきたら意味ねぇだろ!」
「こいつが噂の白いイルカか!?」
「待て、敵の動きが……」
白イルカの額から稲妻が奔る。
それはDナビにされた同胞の脳に語りかける彼女の力。
オルクのMSや母艦にはDナビの回路から、データが逆流している。

318 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/25(水) 00:42:39 ID:???
「我慢していた分、た~っぷりお返しさせてもらうからね!」
「レオパルド……改修が終わったのか!」
水中用に改修されたレオパルドが魚雷を撃ち出し、動きの止まったドーシートを撃墜する。
戦況は逆転した。
ガロードは空中に躍り出ると高出力のディバイダーを水面に向けて放ち、ドーシートをあぶり出すと、尽く撃ち抜いた。

「いいセンスをしている……」
その姿を眺めながら、アムロは呟いた。
「戦闘力の高いパイロットをNTって呼ぶ奴もいたが……」
ガロードは、その資格があるだろう。
アムロのドートレスの横を白イルカが泳ぐ。
「強い人間なんだよな、ただの」
白イルカに語るように、アムロはコクピットの中で口を開いた。
NTは一瞬で全てを把握するがそれだけで、そこから何を為すかは本人次第だ。
ガロードは一つずつ知って、聞いて、考えて、動き出せる。
(ララア、君は出逢うのが遅すぎたといったけど……)


落陽が穏やかな海に浮かぶ。
イルカ達はフリーデンに挨拶をするように跳ね泳いでいた。
朱色の光は、サイコフレームの緑色の光よりも力強く
それは痛いぐらいに、生命の力を主張していた。
「アイツ、何か言ってきたのか?」
「ええ……」
ティファが白イルカの言葉を代弁した。

「自分達の住む世界は、新しい時代を迎えている。
 希望は、決して捨ててはならない。なぜなら……命は変革する』

「ガロード?」
「ん?」
「明日から、食事、届けてくれなくていい……私が、行くから」

そんな二人を見て、アムロは心を決めた。
「アムロ?」
それに気付いたのはジャミルだけだったろう。
だが、ジャミルにしてもアムロが肌身離さず持っているサイコフレームの意味は知らない。
それでも、彼の様子をみれば、そのT字の翠色の物体が大事なものだと分かる。
それを……アムロは海へと投げ捨てた。
「……いいのか?」
「いいんだ」
アクシズを押し上げたサイコフレームの光はNTの光ではなく、人間の光だった
命が変革するなら、それはNTじゃない別の何か……本当の意味でのニュータイプかも知れない。



第十七話「こんなもの無くったって、人は生きていけるさ」







324 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/28(土) 02:40:08 ID:???
大戦末期、地球連邦軍の中に、ある作戦を推し進める一派があった
ニュータイプ研究機関によって極秘裏に進められていたこの作戦、オペレーションネーム『L』



アムロは夢を見ていた。

星がきらめき、鮮やかな紫皚々たる深い雲の中
流れる刻の中で、しかしいつもこの場にいる白鳥の女性は居ない。
代わりに聞こえてくるのは子守歌だった。
ベルトーチカ? 赤子をあやしているのか?
それとも、母さん? 抱かれているのは、俺?
金色の髪が海原のように流れた。
セイラ=マスの色よりも、赤みと深さがある金髪は海のような温かい情懐を感じさせた。
『彼女を安らかに眠らせてあげて欲しい……』
「誰だ!?」
振り返る。
光の中心に人の影。
シャア…カミーユ…ジュドー……アムロ=レイ

「ッ!!」
アムロは目を覚ました。
そこはもはや見慣れたフリーデンの自分の部屋。
困らない程度の衣類と、好評を得て二号機の制作が決定した作りかけのハロ
「……なんて夢だ」
アムロは起きあがると、汗を掻いたランニングを脱ぎ捨てた。
着替えながら考える。今のは予知夢だろうか?
こちらの世界のNT――ティファなどは予知夢が普通であるというが、アムロの世界のNTはエスパーではない。
アムロが囚われていたララアの夢も、アムロ自身の精神状態が見せていたものに過ぎない。
「定期診断の時にテクスに聞いてみるか」
夢診断は精神科の範囲だが……と、押し付ける事をテクスに悪いと思いながらアムロはジャケットに袖を通した。



「へえ、ティファが……」
荷物運びを手伝った、という話をテクスから聞いてアムロは思わず呟いた。
「あの子は今、心を開き始めている。部屋に閉じこもる事よりも、誰かと一緒に行動する事に、喜びを感じだしているんだ」
ガロードは心配気だったがな、とテクスが付け加えるとアムロは笑った。
「ティファを見てるとそういう気分にはなる」
ガラス細工のような……という形容詞がよく当てはまる、儚げな少女の印象は今も変わっていない。
「しかし大切に想うのと、大切にするというのは、似ているようで違う。
 ガロードもだが、お前やジャミルにも一応釘を刺しておく方がいいかもな」
「はは……実は子供の扱い方はよく分からなくてな」「ハロ!ハロ!」
「子供扱いは怒るぞ」「ハロ!ハロ!」「それも含めて、さ」「兄弟は居なかったのか?」「ハロ!ハロ!」
「ん……居なかったな。二親は、生きて俺を育ててくれた分だけ贅沢は言えないが、子供の俺自身は幸福は感じなかった」
ホワイトベースの頃、キッカ達の面倒を見ていたのはフラウで、自分は上手くあやせた記憶がない。
そういえばフラウみたいな子はフリーデンにはいないな……とアムロは考えた。
「お前、いい加減煩いぞ」「ハロ?ハロ?」アムロは二号機を軽く蹴っ飛ばした。「アシモトカ!゙オルス!ハロッ!」
「アムロ、ここに居たか」「ジャミル?」「MS隊の補給の事でな、意見を聞きたい。船長室で待っていてくれ」
アムロは頷く。テクスに夢の事を話したら、それはNTの領分かも知れないと言われたこともある。
ジャミルに心当たりがないか聞いてみるのもいいだろう。
「ジャミルのヤツ、頼ってるな。MS隊の補給の事なんて、今までは一人で決めていたんだが」
「ワンマンに成らざるを得なかったんだろ」「元パイロット同士、話が合うか?」
「それは分からないが、俺もジャミルを頼ってるからイーブンさ」
アムロは大仰に首を竦めてみせた。
「しかし金髪の女性の夢か。知っているか、アムロ? この海域はローレライの海と呼ばれているそうだ」
「そういうのは若い連中に話してやれ。娯楽になる。じゃあ、俺は船長室に」
「それでは私はロアビィの黒星を一つ増やしにいくとするか」
テクスは立ち上がると、医務室に行き先を告げたメモを残して鍵をかけた。

325 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/28(土) 02:48:47 ID:???
船長室に入ってはみたが、主は不在だった。
キャプテンとなれば色々忙しいのだろう。アムロは待つことにした。
「ハロッ!ハロッ!」「おいこら、走り回るな……」
アムロは二号機の制作テーマを『自由奔放』にしたことを後悔した。
「技術屋が芸術家の真似をすると手痛いことになるって、こういう……あっ!」
ハロはジャミルの机に飛び乗り、盛大に引き出しをぶちまけた。
「ったく! お前も片づけるの手伝えよな」「ハロッ!ハロッ!」
親の命令に従い、アームを伸ばしたハロは、高級そうな万年筆を取り上げた。
それは表面のすり減り具合からいって、ジャミルお気に入りのモノだろう。
ベキッ!
……折りやがった。なんつー握力をしているんだ。いや、そこはロボットだから良いとして
なんで力の調整ができないんだ? A.それはまだ作りかけだから
「ハロ?ハロ?」
……否、だんだん確信犯に見えてきた。スクラップ決定、アムロの中で判決が下った。
それはそれとして、引き出しを戻し、中にモノを詰め込みながら、瞬間接着剤がどこかにないかと姑息な事をするアムロ。
「ん?」
写真立てを見つけた。使ってないものかと思ったら、中に写真が入っている。
写真を入れた写真立てを閉まっておくとは、面妖なこともあったものだ……
アムロは自らの興味から、その写真を見た。もはやハロよりもタチが悪いが、自覚は無い。
「若い頃のジャミルか……」
今よりも一回り小さく、輪廓に幼さを残している少年ジャミルがそこにはいた。
顔に傷も無く、目も(今の目はサングラスに隠れて分からないが)キラキラしている。希望に満ちていた。
着ている灰色の軍服は、おそらく新連邦のものだろう。
敬礼だけは世界が変わっても違わないようだ。
「ハロ!」
突然のハロタックル。攻撃力4000ぐらいありそうだ。
「何するんだ、ハロ!」「ハロ!ハロ!」
アムロの出場亀を叱責しているのかも知れない。だがアムロは自覚がない(二回目)
「コイツ……絶対バラしてやる……」
ハロと衝突した額を撫でながら、その拍子に落とした写真立てを拾う。
「って、壊れた!?」
写真立てが2つに別れ、中の写真が飛び出る。
冷静に見れば、留め金が外れたたけ……アムロは安堵の溜息を吐き、写真を拾った。
「ん?」
写真は折り曲げられていた。開いてみると、ジャミル少年の隣には女性が一緒に映っている。
成熟した女性の身体、ジャミルと同じ地球連邦軍の制服、真っ赤なルージュ、知性を感じさせる眉と瞳……
そして、流れるような金色の髪。
「………ッ」



ローレライの海と呼ばれる海域、女の幽霊が海へ生者を引き摺りこむと言われる海域
本来ならオルクでも近づかないと呼ばれる海域で、彼らは活動していた。
「しかし驚いたな。『ローレライの海』の底に、こんなお宝が沈んでいたなんて…いったいどこで情報を手に入れた?」
マーカス=ガイ。オルバ=フロストの依頼を受け、巨大な棺桶を引き上げているオルクのリーダーだ。
(上手くいったよ、兄さん……)
オルバが見下ろすその棺桶の中身……それは15年前の遺産、12のシ者。
(フラッシュシステムに対応したGビットは、我々にとって必要不可欠な機体だからな……)
だが、墓碑銘に書かれていない死者の名前……それこそがこのローレライの海の主役であった。
「ミスター・オルバ! これは何だ…?」
それを彼らが知るのはまだ先の話である……

326 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/28(土) 02:50:42 ID:???
「ローレライの海へ向かう? マイクロウェーブの先じゃなくてか?」
アムロの問いに、ジャミルは頷いた。
「ティファがそう言い出したのか!?」
ガロードの問いにジャミルは再び頷いた。
「待て、ジャミル。確か大型のハリケーンがこの海域を走っていなかったか?」
アムロの言葉に反応したのはトニヤだった。
「"超"大型のハリケーンとローレライの海で出くわすわよ!」
「……ジャミル、地球の激しさを知らない宇宙生まれじゃないだろう?」
「私はケチな地球生まれだ。壊した万年筆の分、働いて貰うぞ」
「グゥの音もでないよ」「パー!パー!ハロッ!」「お前は誰に似たんだ!」
アムロはチョキでハロの目を潰した。「ハロ!?ロウガフーフーケン!?」



フリーデンの接近を確認したマーカスは、部下を差し向ける。
迎撃に向かおうとするガロードを引き留め、ティファは言った。
「これから先、何があっても驚かないで。私を信じて! 私は、『私』だから!」

結局、ジャミルに夢の話は言い出せなかったな……アムロはドートレスの操縦桿を握りながら考えた。
「俺のドートレスとGXは水中用のハイパーバズーカだ。ロアビィ、水中戦は馴れたか?」
「OK、俺達ばっか海ん中でウィッツに悪いね」「上からだって、魚雷の迎撃はできるぜ?」
「お待たせ!」「遅いぞガロード。ティファと抱擁は勝ってからにしろ」「そ、そんなことしてねーって!」
正規軍人ではないMS乗り達の纏め役も大分板に付いてきたアムロが、ガンダムを率いて海へと出る。
「ほら、おいでなすった!」
ウィッツが魚雷を叩くと、ガロードとアムロが海中で散開し、水中用MSに近接戦闘を挑んだ。
水中での機動力と攻撃力が発揮されるミドルレンジでの戦いは避けなければならない。
接近戦ならば、ガンダムのパワーで押し込むことも可能だった。
さらにガロードは相手のMSにビームサーベルの出力口を密着させ、斬り咲いた。
「水中で、ビームサーベルだって使いようだってね!」
「なんだガロード、前の戦いでちゃんと見てたんじゃないか!」
「へ? 何のこと?」「……自分で辿り着いたならそれでいい」
アムロとしては少し寂しい。
「ガロード、先行しろ。敵の母艦があるなら叩きにいけ」
「いいのか?俺で?」「そう判断した」「わかった!」
GXが泡を立てて荒れ狂う暗闇の海を進んでいく。



327 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/28(土) 02:51:55 ID:???
水中戦も三度目、たった三度で驚くほど上達した。
今のガロードならそこら辺の水中用MSに後れを取ることはないだろう。
アムロはもう見えなくなったGXにそんな思いを浮かべながら、ドーシートⅢを切り裂いた。
(ハリケーンが来ている。フリーデンは姿勢制御で手一杯だ。守りを厚くする必要がある)
魚雷の数が増えているように感じた。
向こうも遠巻きに攻めているのか……ガロードはまだ敵の頭を叩けないでいる?

――でもその前に、フリーデンを沈めよう……兄さんに内緒でね

「この邪気……ッ!」
GXが向かった先、おそらく敵の戦艦がいるであろ場所から、アムロは敵意を感じた。
それは以前にも戦ったことのある……
「確か、フロスト兄弟と……魚雷ッ!」
殺意の乗った魚雷はNTであるアムロが落とすに容易い。
それを不意打ちでGXをアシュタロンのアトミックシザースにて捕まえ
勝利宣言と共に魚雷を発射させたオルバが予測するのは難しかった。
アムロが敵にガンダム(それも水中も戦闘領域であるアシュタロン)が居たことを読めなかったように
オルバもアムロの技量を(腕が立つとは理解していたとはいえ)読み切れてなかったのだ。
だが、GXを捕らえたオルバが未だ優位にある。
「ガロード!」
アムロは逡巡する。ガロードを助けに向かうか否か。
ガロードを助けに向かえば、ウィッツとロアビィは魚雷を捌ききれずフリーデンが窮地に陥るだろう。
だが、ここでフリーデンを守っていれば確実にガロードは殺される。
6:4、いや7:3でアムロはガロードを見捨てることを考えた。
それは戦争の中で生きてきた人間の哀しい性だ。
魚雷の第二射がフリーデンに向かってくる。
『大丈夫、彼女が力を貸す……』
「何ッ!?」

その瞬間、ローレライの海にある全ての機械が息をひそめた。

「今、俺の心に触ったのは、誰だ……」
優しく、温かく、そして寂しい、女性だ。
『彼女はルチル=リリアント……かつて、ジャミルと同じ時を過ごした、仲間……』
(語りかけてくるのは……ティファ? 一瞬、別の……男を感じたが……)
疑問と同時に、別の確信がアムロの脳裏を過ぎった。
あの写真の女性……それがルチル=リリアントなのであろうという確信だ。




第十八話「ジャミルの、仲間……」







332 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/30(月) 23:00:06 ID:???
オルバ=フロストとマーカスらオルクを退けたアムロ達はフリーデンに帰還する。
キッド達メカニックが修理に駆り出される中、気絶したティファが眠る医務室に集まる主要メンバー。
「ルチル=リリアント……知っているんだな、ジャミル」
「ルチル=リリアントは、早い時期からニュータイプとして覚醒したため
 連邦軍の教育士官となって、ニュータイプパイロットの養成を行っていたのだ」
ジャミルの説明を受け、サラが想像した。
「では、その彼女が、オルクの潜水艦に捕らえられているのでしょうか?」
だからティファとシンクロし、助けを求めた……トニヤが続け
「だったら話は決まった! 早速そのルチルって人を助けよう!」
躊躇うことなく、ガロードが言った。
「………」「なんだよ、アムロ?」「……いや」
見捨てていい少年じゃない――アムロは再認した。
「彼女は革命軍との戦いの末、精神を破壊し尽くされたと聞いている」
「精神……?」アムロの脳裏にカミーユ=ビタンの幻影が過ぎる。
「その通りよ」ティファが起きあがる。しかし、それはティファでありティファではない。
ティファの身体を借りたルチル=リリアントは、その訳を語り始めた。
「ジャミル、『Lシステム』っていう言葉を聞いた事あるでしょう?」

Lシステム……
ルチル=リリアントの精神をフラッシュシステムの応用で増幅する物で、
一定範囲内の電子機器等を用いた兵器を使用不能とする兵器。

「本来の私は、もう存在していないのも同じなの。ただあるのは、戦いに対する嫌悪だけ。
 でも、機関の人間は、戦いを憎む私の心まで利用したわ」
ルチルは哀しげに喘いだ。
「もう私は、誰にも利用されたくないの」
それをジャミルはどのような顔で聞いているのだろうか。
ジャミルの背中を見、アムロは考えた。
「よーし! やろうぜ、みんな! ルチルさんを助け出すんだ!」
再び、ガロードが叫んだ。



マーカス一味を追う為、フリーデンの航海士シンゴ=モリは海流を利用するルートを割り出した。
その許可をジャミルに受ける為に、サラは艦長室へと足を運び、ドアノブを手に欠けようとして
すでに扉が開いているのに気付いた。中からアムロの声が聞こえる。

「大切な女性(ヒト)だったんだろ、ジャミル……」
「……言葉には、したくない思い出もある。彼女の事もそうだ。
 口に出してしまったら、何か大切なものまで消えてしまうような、そんな気が……」
「三十路男のセンチメンタルなんて聞いていられるか」
イラついている……アムロは自分でもハッキリと自覚できた。だが止めようもない。
結局、自分もまだ未熟なのだ。
「ジャミル、"あれ"はお前は言うべきだった!」
「"あれ"?」
「ルチルを救うってことだ。彼女も、お前の口から聞きたかったんじゃないのか!?」
押し黙ったジャミルに、アムロも暫く付き合った。
ジャミルの態度を批難はしたが、アムロがジャミルの立場だったとしたら同じ態度だったろう。
だから結局のところ、アムロは自分自身を詰っているのかも知れない。
「……綺麗な人だったな」「ん?」「写真を見た。引き出しの中の。……悪かった」「そうか」
別の世界に来たはずなのに、どうしてこう古傷を抉られてばかりなのだろう……
「気持ち、分かるよ……」
アムロはもし、自分をこの世界に連れてきた者がいるなら、そいつを殴り飛ばしたかった。
「ガロードからGコンを奪ってこい。今はお前がGXで出るべきだ」
「アムロ……」
「お前の、戦いだろ? ジャミル……」

333 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/30(月) 23:06:07 ID:???
アムロは作戦前にルチルと面会した。
身体を貸しているティファの事を考えて、作戦にはいるまでは医務室でテクスが付きっきりなのだが
別世界のNTであるというアムロの事情を知っているテクスは、許した。
「えっと……ルチルさん?」「ルチルでいいわ、アムロ」「……俺の事を?」「聞いていたから、"カレ"に……」
"カレ"と言うのに違和感を感じたが、時間もないことなので、アムロは自分の用件を伝えた。
「Lシステムを破壊した場合、君は眠りから覚めるのか?」
NTを閉じこめたシステム……アムロは自分のいた世界で、そのような例を聞いたことがある。
1年戦争の後、ニタ研で被検体のような扱いを受けた期間の事だ。
確か名前はEXAM。そう、ニタ研の中にそれに関わっていた研究者がいた気がする。
それに、それを連邦で運用していたモルモット隊出身のサマナ=フュリスは訓練学校の教官で
彼が育てた新兵を部下に持った事もある。直接の面識はないが、彼は卒業生に「絶対に生きて帰れ」と訓示を与えるらしい。
現場で戦う時間の方が長く、充実しているアムロにとっては、彼の方がまだ身近に感じる。
NT関係の実験などは逆に嫌悪感しか催さないのだが、記憶の糸と手繰ると
EXAMは元々はジオンのフラナガン機関が開発したシステムで、その開発に関わっていたNTの少女は
システムの起動と同時に意識を失い、植物状態になっていたが、EXAMの実験が凍結すると意識と取り戻したという。
そういう『前例』を、アムロは期待した。
「私の心は、もう僅かしか残っていないわ……」
ルチルは静かに答えた。穏やかにも、哀しげにも、苦しげにも見える。
「海の底は宇宙(ソラ)の色に似ていたわ」
「黒に?」
「貴方には宇宙が何も映らない黒には見えていないでしょう?
 貴方は宇宙には心が満ちていることを知っている人だもの」
知っている。けど、直視できる程の純粋さをアクシズを押し返したあの時まで、忘れようとしていた。
アムロは胸に締め付けられるような痛みを感じた。
「宇宙は、世界が違っていても変わらないのね」
ルチルはアムロの胸に手を当てた。ティファの小さな手が、ひどく大きく感じられた。
「私を呼ぶ人は、もういないけれど……」
「俺だってそうさ」
「違うわ。貴方は呼ばれてこの世界にきたのよ、アムロ。
 そして貴方の世界にも、貴方を呼ぶ人がいる。
 命を大切にしなさい。アムロ、貴方は帰らなければいけないわ」
「ルチル…ルチル=リリアント……」
シャアを止めて、それでアムロは自分の人生を一つ終えたという手応えがあった。
この世界に来て、時々、恐ろしいほどに元の世界に帰りたいと思わないでいるのも、それが理由だと思った。
そして、この世界で守るべき人も、モノも見つけたと思った。
だから……最近はこの世界で死んでもいいと考えていた。
「……もう少し、厳しい人だと想像していたよ」
「海で眠っていて、穏やかになれたのよ」
ルチルはクスリと笑った。とても魅力的な微笑みだった。



MSデッキでアムロはロアビィとすれ違った。
「少し気合いが入りすぎてないか?」
「そっちこそ、やる気満々って顔しているよ」 
いつも飄々としているこのフリーのMS乗りが、今日はピリピリと張り詰めた空気を纏わせている。
本人は隠そうとはしているし、ウィッツ辺りは気付かないだろうが。
「ジャミルに会わせてやらなきゃね。ルチルって女性(ヒト)に」
「ロアビィ……?」
「たとえ、どんな姿になってたってさ」
アムロが知る由もないことだが、ロアビィは恋人を失っていた。
それも、ロアビィがMS乗りとして外に出ている間に。
彼は故郷を失った。彼にとって帰る故郷とは、その恋人の事だったからだ。
「ああ……」
アムロはドートレスに乗り込む。GXにはジャミルが乗っている。

334 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/30(月) 23:15:11 ID:???
「へっ…今日は隊長面できなくて残念だったな、アムロ」
ウィッツが通信で割り込んでくる。
「肩の荷が下りて丁度良いさ」
「おい、俺達がお荷物だって意味じゃねぇだろうな」
「俺"達"じゃなくて俺"が"でしょ?」
「んだと?ロアビィ、テメェ!!」
アムロは笑った。戦闘前に入って平常のテンションに入るのは流石だ。
ウィッツもロアビィも、頼もしい仲間だった。
「……二人とも、死ぬなよ」
リュウさん、マチルダ中尉、スレッガー中尉……みんな戦争で死んでいった。
一年戦争を生き残ったハヤトも、ネオ・ジオンとの戦いで散った。
ケーラ=スゥも助けることはできなかった。
「そう言うアムロも勝手に死ぬんじゃねーぞ。
 ……死んじまったら、生きてるヤツに文句も言えなくなるんだからな」
ウィッツの言葉に、全くだとアムロは頷いた。
今頃、ブライトがミライさんに自分の事を過去形で語っているとしたら……それは面白くない。
(そうだな……戻ったら、久々にみんなに会いに行こうか)
ミライさんにフラウ、カイさんに……
「セイラさん……」
なんとなく疎遠になってしまった、年上の金髪の女性の名をアムロは口に出した。
いや、疎遠にしてしまった理由に心当たりはあるのだが、二十九にもなってそれを口に出すのは気恥ずかしい。
「ジャミルのせいだな」
「ハロ!ハロ!セイラサン!ジャミルノセイ!」
「おい、何時の間に乗り込んでいたんだ!?」
ハロ2号機が足元から転がり現れる。今更下ろすわけにも行かないし、演算処理の役には立つかも知れない。
そう、アムロは諦めて操縦桿を握った。
「アムロ=レイ、でます!」



アムロ達はジャミルの突撃を援護する。
それは必ずしも敵に勝つ最適の戦術ではなかったかも知れない。
だが、アムロ達の目的はジャミルとルチルを会わせることだった。
この戦いの主役はジャミルなのだ。
それに……
「へ……頼もしいじゃないの!」「ああ、ジャミルのヤツ、はりきってやがるな」
ロアビィとウィッツが語るように、GXを先頭にしたこの陣形も悪くない。
トップのジャミルの戦闘力が高いからだ。
ジャミルは戦えば戦うほど、動きが良くなっている……アムロは感じた。
戦いの勘を取り戻しているのだろう。
対して、マーカスの船はまだ修理が終わらず、速度が出ないでいる。
勝敗が決するのは時間の問題かと思われた……
しかし……
「二時方向に船影発見!」
トニヤの声に、敵の援軍を確認したアムロは、小さく驚いた。
アムロもこの世界でバルチャーと戦ってそれなりの時間を経たが
マーカスの援軍に現れた船の大きさ、数は見たことのない規模だったからだ。
「なっ…なんて数だ!」 「オルクっっつーのも、バカに出来ないもんだねぇ」
その船からぞくぞくとドートレスフライヤーが発進する。瞬く間に空は三ツ目の巨兵に埋め尽くされた。
「あれだけの装備を持っているのは……ッ」
「ジャミル、考え事をしている場合じゃないぞ」
叱咤しながら、しかしアムロも違和感を覚える。
敵の動きに統制が取れすぎている。それだけなら規模の大きいバルチャーには稀にあることだが
その行動が尽く合理的で、アムロも良く知っているものだった。
(軍隊……!?)

335 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/30(月) 23:22:19 ID:???
「ハロッ!アムロ!ミギ!テキ!」
「分かっている!」
振り返り、アムロは相手の頭を撃ち抜いた。
今度は左から仕掛けてくる敵にも反応する。
アムロは強かった。
だが、MSを撃ち落とす間、時計の針は確実に進む。それはジャミルとルチルの距離をひらかせた。
「まずい、艦隊と合流される」「マズイ!マズイ!」
マーカスを追おうとするアムロの背後をドートレスフライヤーが追いかける。
「くそっ!」
舌打ちし、振り返って撃墜しようとした時だった。
アムロが引き金を引くより早く、敵MSは爆散した。
「フリーデン!?」
それはフリーデンの主砲の攻撃だ。フリーデンが自らの危険を顧みず、戦闘区域に進軍してきたのだ。
「誰の判断だ?」フリーデンの甲板に降りたアムロが訊ねる。
「ジャミルだったら、きっとこうするだろ!」ガロードが答えた・
「いい度胸だ!」戦機を見極め、重要な時に死地に踏み込む胆力は、戦闘指揮官に必要不可欠の才能だった。
「キッド、アレを出してくれ!」
アムロに促され、メカニック達がメガバズーカランチャーを運び込む。
ドートレスの全長より長いそれを抱え、アムロは敵の大軍に向けた。
銃口の反対、銃底からはコードが伸び、フリーデンと直結している。
「シャアよりは上手くやってみせるさ……」「ハロ!ハロッ!」
コクピットのハロが仰角の修正を指示する。
アムロは唾を飲み込んだ。
「いけえぇぇぇぇーーーー!!」
高出力のビームが、雲を切り裂き、MSを飲み込み、空に穴を穿つ。
「ジャミルッ!」
アムロはジャミルの道をつくった。
「レオパルドはフリーデンを守れ! エアマスターは私について来い!」


フリーデンが走る。
フリーデンを守ろうとレオパルドが銃弾を散撒く。
ドートレスはメガバズーカランチャーを抱えながら、ビームマシンガンでレオパルドのフォローをしている。
GXの周りを衛星のように守り戦っていたエアマスターは、潮時とGXを先にに行かせ殿を買って出た。
「まだまだっ!」 「屁とも感じねぇぜこの野郎!」
GXがディバイダーを展開し、前面の敵を排除する。
しかし左右から敵が回り込み、その足は止まる。
だが、GXは猛ることを辞めなかった。
「ルチルは渡さん!!」
フロスト兄弟のガンダムも戦場に現れ、混戦はいっそう加速する。
「うっ……今日のGXは一味違うね!」
「オルバ!」
チャージが終わったメガバズーカランチャーがアシュタロンの爪先を焼き溶かした。
「ちぃっ…!」
アムロが狙撃に専念した分、フリーデンは被弾する。
揺れる艦橋で、しかし誰も悲観はしてない。
「大丈夫! まだまだ行けるぞ!」 「敵艦まで、あと2000!」 「よぉし! もう少しだぁっ!」

――ジャミルは、いい仲間を持ったわね

右翼から煙を噴いたドートレスフライヤーが、玉砕攻撃を仕掛けてくる。
「ちぃっ……」「シヨウフノウ!シヨウフノウ!」
MS本体はかわすことができたが、メガバズーカランチャーを失った。
さらによろめくアムロに、たたみ掛けるように敵が群がる。
「それが……どうしたっ!」
壊れたメガバズーカランチャーごと殴りつけ、敵を甲板に叩き沈める。
「ルチルッ!」
「ルチルさん!」
「ルチルゥゥーーー!」

336 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/30(月) 23:27:31 ID:???
――私なんかのために、みんなこんな必死でやってくれるなんて……私も、それに応えなきゃ……

ゾワリ…とルチルの隣にいたガロードは肌が栗立つのを感じた。
OTであるガロードが、はっきりと感じるほどのNT能力の発露。
「力を使います」
サラが驚く。Lシステムはすでに敵に無力化されている筈だ。
「別の力を」
それは一人では不可能だった。
正確に言えば、MSに乗っていない今のルチルには不可能……
『ジャミル、フラッシュシステムを使いましょう』
「フラッシュシステム?」
ルチルのジャミルへの感応を、アムロも感じ取った。2つの世界のNTは別物だが、重なり合う部分があるのか。
『大丈夫よ。私が、力になるから……』
ジャミルとルチルの意志が混ざろうとしている……だが、それは容易ではない。所詮、二人は別々の人間なのだ。
「うぅっ、ぐぅっ…だ、駄目だ! 君と一つになれない!」
『諦めては駄目! 思い出すのよ、あの頃を!』

その瞬間、光が奔った。
ジャミルとルチルの力が発露し、Gビットと呼ばれるこの世界の最強の兵器が飛び立った刹那の瞬間
アムロは夢を見ていた。
壊れたコアファイターから、飛び出した過去を。
蒼い、宇宙で、自分の名前を呼んで、待ってくれたホワイトベースの仲間達を。

「アムロ!アムロ!ナミダ!」
ハロに指摘され、アムロは自分が泣いていたことに気づいた。
それを拭い終わった頃には、戦いは終わっていた。
Gビットは圧倒的な力で、この海域を制圧してしまっていた。

――ジャミル、後始末をお願い……

敵が撤退し、戦いの残骸が浮かぶ海で、12の僕を従えた騎士はローレライの願いに頷いた。
「ああ、わかっている」と。
Gビット達は動かない。機械の傀儡は勝利に喜びも悲しみも持たない。
これは十五年前、とっくに朽ちていなくてはならない、人形だ。
「こんなモノは、もういらないんだっ!」
一つ一つ、ジャミルはGビットを撃ち落としていった。
僅かな感慨も感傷もなく、次々と……恐れと後悔が、彼を急かすのだろうか。
海鳥が一つ嘶く頃、海の上に立っていたのは盾を背負う、双眸の巨人だけだった。
「ハロ…」
アムロはコクピットで鳴く相棒の頭を、静かに撫でた。


337 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/08/30(月) 23:30:11 ID:???
        ――また逢えて嬉しいわ、ジャミル――
      ――これでもう思い残す事は、何も無い――

          ――これで全てが終わるわ――

       ――どうせ僅かな心しかない私だもの――
       ――私が死んだら、元いた海に沈めて――
  ――海の底は、静かで安らいだ気持ちでいられたから――

  ――なんだか眠くなってきたわ……もうそろそろね……――
          ――とっても気持ちがいい……――

 
          ――まるで、夢を見てるみたい――


 ――私、嬉かった……大人になった、貴方に逢えて……――
  
           ――さようなら、ジャミル……――




Lシステムから解放されたルチルの身体は、ジャミル達が改めて埋葬した。
棺の中、生前のままに美しい金色の髪が夕日に反射している。
彼女の遺言通り、その棺は海へと沈められた。
「あの人は、幸せだったのかな……?」
ポツリとガロードが呟いた。
「さぁな…」
「知っているのは、本人だけさ」
ウィッツとロアビィが答えた。
「だけど…」
ティファが紡ぐ。
「あの人を受け入れている間、私は、暖かく安らいだ気持ちでいられました」
それはルチルの為に闘った、フリーデンの、ジャミルの仲間達には救いだったろう。
「キャプテン……」
「すまん……しばらく、一人にしておいてくれ……」


アムロは空を見上げた。
夕焼けの赤は夜の青と混ざり合い、紫色のグラデーションを描いている。
「………」
今日、自分達がルチルの名前を呼んだように、あのア・バオア・クーの戦いで
ランチに乗っていたセイラさんやブライトは自分の名前を呼んでくれたのだろうか?
アムロは想う。
そうだろうと。
だから、自分はあの時、帰ることができたのだ。

――今も?

アムロは空へ問いかけた。
答えは返ってこない。
だが、ルチル=リリアントはアムロに一つの指針を与えていた。

――もし、貴方が帰ることを望むのならば、その道は……




第十九話「宇宙(ソラ)へ……」








346 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/09/06(月) 23:45:31 ID:???
"セインズアイランド"
大小6つの島からなるこの群島は、航海上の拠点として
シーバルチャーやオルク達に支配される事なく独自の発展を遂げた。
コロニー落としの被害を免れたエネルギープラントは、海に生きる者達にとっての生命線となり
交易で栄えるこの島は、戦後有数の海上商業都市となっていた。

治安が回復し、法整備が行き届いたこの島には入国審査があり
入国管理局のマイルズ=グッドマンによる監査を受けたフリーデンはこの島に寄港した。
彼らが大地を踏むのは、実に一ヶ月ぶりのこととなる。

買い物を終えたトニヤは、紙幣が本当に使える事に驚いたと感想を洩らしながら
アムロに荷物を押し付けた。二人はフリーデンの買い出しに出ている。
「すっかり荷物持ちだな」「いいじゃない、デートだと思えば」
「そういう男に見られていたのか、俺は」「あはは、私、結構アムロの事好きよ?声とか」
アムロは車のトランクに荷物を詰め込みながら、トニヤに訊ねた。
「サラの代理だろ、俺は」「ん、分かる?」「気付いてないのはウィッツぐらいじゃないのか」
ジャミルに好意を持つサラは、フリーデンに残っている。
ガロード、ティファ、キッドやウィッツ、ロアビィはアムロ達と同じく買い出しだ。
「進展、あると思う?」「ジャミルとロアビィが階段から転げ落ちれば、かな」
「何ソレ?」トニヤにアムロは笑った。「大昔の映画に、それで人格が入れ替わるのがあるのさ」
助手席のドアをトニヤの為に開くアムロ。トニヤは頬を掻きながら、提案した。
「これから個人的なショッピングの時間が欲しいな~なんて」
「ん……デートなんだろ?」アムロはドアを閉めた。


10も年下の女性に、海風が靡く風光明媚な町を連れ回されるのも
悪くないなんて思う、29歳のおっさんであった。

……となると思っていたのに
「どうしてこうなった」
アムロは呟いた。絡められた腕が脇に当たる。
「ど~ぉ? いい飛びしてるでしょう?」
「ア、アア、ソウデスネ……」
銀色の長髪を靡かせ、真っ赤なルージュを引いた口で
セインズアイランドを生業にするシーバルチャー・ルマーク=カウトが
自作のMA・エスペランサをアムロにアピールしてくる。ついでに本人も。
(こんな事になるなら、服の一つや二つ、買ってあげれば良かった……)
買い物に悩んだトニヤが道をうろうろと回るのに付き合っていたら
自分が昔乗っていたRX78によく似たMSが立っているのを見て
思わず足を運んできてしまった結果である。
MSの入国規制を行っているセインズアイランドで、生のMSが立っている筈がなく
これはただのモニュメントであり、物好きが作った「オダイバーガンダム」であった。
そこでその物好き、ルマークの一目惚……営業にあったのだった。
そんな訳で、船に乗せられ、もはや逃げる場所もなく、セインズアイランドの沖合いで"彼"の作ったMAを見ている。
MA・エスペランサ自体はアムロの目から見ても中々いいMAだ。
アムロを見て一目でMS乗りと見抜いたルマークは、それなりのキャリアと実力を持つシーバルチャーなのだろう。
だが、自分が居ないことに気付いたトニヤによるヘルプをアムロは期待していた。それも可及的かつ速やかに、である。

その頃、トニヤはエニル=エルとランチをしていた。


347 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/09/06(月) 23:48:52 ID:???
夜の街にパ~っとやっていたウィッツは、橋の下でリバースしていた。
相棒のロアビィから見ても、明かにオーバーペースで酒を飲んでいたので
ウィッツの姿は当然かつ妥当な結果であった。
そんなにウィッツが酒を煽ったのはトニヤが原因だろう。
新しいドレスを着てどこかへと出かけてしまったのだ。
男ができた、とMS乗り二人は勘違いした訳で、トニヤの事を憎からず想っているウィッツは荒れたのだった。
「俺ってば面倒見いいんだから」と、失恋野郎の為に飲み物を買っていた時である、
はだけた胸元にキスマークを付けたアムロが逃げるように走っているのを見かけたのは。
「おやおや、ご盛んなようで。夜もエースってね。……ちょっとオヤジ臭かったかな」
つーかハメ外しすぎでしょ、とロアビィは思った。
アムロはタキシードにシルクハット、マスクまでしていたからだ。



ウィッツは誤解している。
トニヤが向かった先は「ライラック」
エニル=エルの店であり、会うのは彼女本人だ。
トニヤが来ているドレスも、エニルによって譲られたもの。
気のあった二人は、ディナーも一緒にしていたのだ。
「『結婚』!? って、あなた結婚申し込まれてんの!?」
「あたし、ついこの間までモビルスーツ乗りやってたのよ…」
「女の過去は、言わなきゃ無いのと一緒よ!」
自身の過去と幸せについて悩むエニルに、トニヤは語る。
「今の時代って幸せ掴むのも、不幸せになるのも、全部自分自身のせいだと思うのよ」
 アタシは自分の思うように生きる。自分で選んだ道を歩くの!
 原因は全部自分だから、失敗しても誰にも文句言えないけど……でも成功したら、幸せ独り占め!」
トニヤは明るく、しなやかで強かった。
その太陽のような輝きに、エニルは揺り動かされた。
自分の船に来ない?と誘うトニヤに、エニルは心が躍ったのだ。
それはアムロには出来ないことだった。
「すまん、匿ってくれ!」
ガラガラと、ベルを鳴らして男が店に入り込んできた。
「あっ、ごめんなさい! 今日は貸切…っ!?」
エニルはギョッとした。何事かと振り返ったトニヤも絶句した。
半裸のタキシードを着た仮面の男が突っ立っていたからだ。
エニルは思わず警察の電話番号が頭に過ぎったし、トニヤは銃を入国の際に預けさせられたことを悔やんだ。
「……って、アムロ!?」
「トニヤ?どうしてここに!」
それはトニヤが聞きたい。というより、どうしてそんな格好をしているのか。
答えはトニヤがすっかりアムロの事を忘れていたからである。
そしてアムロがモテ男だからである。生物学的に男の女達が経営する夜の街で。
「ゴメンゴメン、てっきりフリーデンに帰ったかと……」
「フ、フリーデンに帰ったらぐっすり眠れるって保証はあるのか……
 生身でスカート付きに襲われる怖さを、知っているのか!!」
「は、はいぃ?」
「もう怖いの、いやなんだよ……」
と、アムロは彼らに着せられたタキシードを脱ぎ捨て、変装の為に顔にテーブルクロスを裂いて撒いた。
礼服仮面から月影の騎士へのジョブチェンジである。
「あ、これはテーブルクロスの代きn……エニル=エル!!?」
「また…プッ……逢えたわね……プッ……」
エニルはアムロを突き飛ばすと、店の外へ駆け出していった。
入れ違いに入ってきた彼女の恋人・マイルズがアムロの姿を見て
変質者がエニルを襲ったのだと勘違いし、アムロはその日の夜を留置所のコンクリートの床で過ごした。

348 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/09/06(月) 23:52:14 ID:???
車の中で一通り笑ったエニルは、その後虚脱したようにハンドルにもたれ掛かっていた。

ガロード=ランがいる。

その事が、灰を被って燻っていた火種にドロドロとした熱を加えた。
だが一方で、トニヤの作った爽やかな風が灰も火種も全て吹き飛ばしてくれる……
そんな期待をしていた。憎しみと友情が縄のように絡みあい解けることはない。
気がつけばフリーデンが寄港している港まで来ていた。
夜が、明け始めていた。




「あの人は、来ません」
翌日、出港を前に波止場に立ち続けているトニヤに、ティファは告げた。
ティファのNT能力は絶対だ。
「間違いないの?」
寂しそうにトニヤは聞き返した。
エニルを知っているようだったアムロは、留置所から帰ってきて以降
自室でトランクスとランニングだけで布団を被って不貞寝をしている。
というかガクブルザクグフドムゲルググしていた。
「アムロ!アムロ!」「ゲンキ?ゲンキ?」心配するハロ1号と2号を蹴っ飛ばす。
「ヤツが来る…フラッシュバックにヤツの影っ!」アムロは悲鳴を上げた。
フリーデンの医師・テクスはウィッツには二日酔いの、アムロには睡眠薬を用意した。
フリーデンが出港する。
「あとヒトフタマルで、外洋に出ます」
「高熱源体、接近!」
海上を滑るように回り込み、フリーデンと距離を縮めてくるMA
それはエスペランサだ。
「なんでアムロとウィッツがいないの!」
「グロッキーなの。男には色々あるのさ、少年!」
ガロードとロアビィが出撃するが……「速い!」
エスペランサはフリーデンの回避も、ガンダムの攻撃も許さず、懐にまで入り込んだ。
だが……
「………」
モノアイを光らせ、艦橋を睨んだエスペランサは、その蒼い機体を翻してどこかへ消え去ってしまった。
「……あの人です」
ティファが静かに言った。
エスペランサに乗っていたのはエニル=エルだった。
彼女は再び戦いの世界に舞い戻ったのだ。



その頃、アムロは、ベットから転げ落ちて床に頭をぶつけていた。



第二十話「これじゃ道化だよ……」






421 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 03:09:38 ID:???
戦後15年……
ようやく環境の安定した地球では、人々はかつての暮らしを徐々に取り戻している。
大規模シェルターによって数万単位で生き延びた人々は、幾つもの小さな独立国家を形作っていた。
世界人口9800万人……これは、戦前の百分の一にも満たない
だが、それでも尚、かつての栄光と権力を取り戻そうとする者達がいた。
政府再建委員会――戦後の地球を統一し、新連邦政府を作るため発足された組織である。
そのメンバーの多くは、旧連邦の政府関係者、軍上層部、産業界のリーダー達であった……


フリーデンはサテライトシステムのレーザー回線が使用されたと思われる海域を調査していた。
だが、戦前の海図しか持たない彼らにとって、それは至難の作業であった。
ティファのNT能力も、その存在を探知することはなかった。
キッドの話ではサテライトシステムの認証にNTが必要なのであって、認証さえ済ませればマイクロウェーブの使用にNTは要らない。
とすれば目的地にはNTは存在しないのかも知れない。
だが、仮にNTが存在しないとしても、サテライトキャノンのような兵器が存在するという脅威に代わりはない。
どのみち、避けて通る場所ではないだろう。
MSによる探索から戻ったアムロはコクピットのハロ二号機を叩いた。
遊戯室のマスターをやっているハロと違って、この二号機は戦闘のサポートとしてアムロのドートレスのコクピットを根城にしている。
「なんだとぉ!? ティファに、『ちっとも変わってねぇ』って言われたってか!」
格納庫にウィッツの声が響く。どうもガロード関連の話のようだ。
「『男として成長してねぇ』って言われてんのと一緒だろ! なぁ?」
「まっ、そうなるかな~? 俺だったら落ち込んじゃうよ~?」
二人の言葉に肩を下げるガロード。
「そうなのか……アムロもやっぱそう思う?」
と、最後の望みを最年長の男にかける少年に、アムロは少し考えて答えた。
「進化と進歩は少し違う、かな」テクスみたいな物言いだと、アムロは少し思いながら続けた。
「前者は望む望まずに関わらず起こってしまう事があるけど、後者は自分が望まないと手に入らない」
「それって、つまりティファは俺の事……だぁぁぁあ~~」
頭を掻きむしりながらガロードは地団駄を踏んだ。
「ぼ~っと突っ立っているとティファに置いていかれるぞ、ガロード」
「う……アムロはやっぱスゲーなぁ」ガロードは天を見上げ嘆いた。
「やっぱり俺、成長してないのかぁ~~!?」

ただの少年だったアムロ=レイは、戦いの世界に引きずり込まれ、生きるために進化せざるを得なかった。
大なり小なり、ニュータイプと呼ばれた人間はそういうものだろう。
ジオン=ズム=ダイクンの定義によれば、宇宙環境に適応した人類、それがニュータイプであるからだ。
結果として認識力の拡大、時にエスパーのように他人と繋がることのできる能力を手に入れた者が現れた。
が、その力と、それを持つ人間の精神は必ずしも比例しない。
人の肉体が進化したところで、人間の精神が進歩しなければ、それは悲劇にしかならない。
なまじ、お互いの事を知ることができる分、その傷は遙かに大きい。
アムロとララアも、カミーユとハマーンも、邂逅の先には決裂が待っていたのだ。
後の世に「ニュータイプという者は個人的には不幸だった」と言われる由縁の一つにはそういう理由もある。
一個の人間として強く、優しく進歩しなければ、ニュータイプという進化は袋小路に陥るのだ。
その意味で、ニュータイプを「争わないで済む人間」と定義した連邦のレビル将軍は本質を突いていたのかも知れない。
アムロが知る由もないことだが。
だからアムロは経験としてニュータイプを過大評価していない。
あるいは、ジュドー=アーシタに続いて、シーブック=アノーやアフランシ=シャアのような人間がもっと早く現れていれば
今少しだけ、ニュータイプという存在に期待をかけていたのかも知れないが。
シャアともジャミルとも違う「ニュータイプ」をアムロは価値観として持っている。

422 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 03:13:37 ID:???
ここにもう一人、「ニュータイプ」に想いを抱く者がいる。
アイムザット=カートラル――政府再建委員会の諜報総括官である。
委員会はアフリカ地域を統合し、小国が乱立するアジア地域に軍を伸ばしていた。
バルチャーが跋扈する北米大陸は無法地帯として、委員会側は重く見てはいない。
アイムザットはその北米大陸の調査を管轄していると共に、あるプロジェクトの責任者でもあった。
それは、ジャミル達の目指す人工島・ゾンダーエプタで建造されている新型ガンダムの事だ。
しかしアイムザット程のガンダム、そしてニュータイプへの執着は、委員会の高官は持っていないようだった。
「確かに、ニュータイプやガンダムは有効な戦力だ。だが、ガンダム1機だけでは世界は動かせん。
 我々が欲しているのは、あくまで利用価値のあるニュータイプと、象徴としての強大な力を持った新しいガンダムなのだ」
太平洋を移動するフリーデン――かつての英雄・ジャミル=ニートが率いる、ガンダム3機を要し、ティファ=アディールというNTの少女を保護している艦
戦局を換える切り札であるそれを、高官達はただの敵、駒としてしか認識していないことに、アイムザットは愕然とした。
「どちらにしても、君はGビット回収に失敗している。その事を忘れて貰っては困るな」
「援軍は回そう。あの島は我々軍部にとっても大切な施設だ。だが、私が指摘しているのは、君の指揮管理能力なのだよ……」
アイムザットは委員会から指揮権を奪われ、軍の特殊工作部隊が派遣される。
新型MSバリエント共にフリーデン捕獲作戦の指揮を執る男、その名はカトック=アルザミール。
戦前から軍に身を置く、歴戦の男である。
彼はその経歴に相応しく、(その人を食ったような態度からは想像できないが)作戦の準備を手際よく行う。
漁師に化けてフリーデンに潜入し、制圧するという奇策である。カトックの巧緻なところは魚醤を浴びさせることで設定に説得力を与えたことであった。
一方でフロスト兄弟は、その様子を眺めながらこの作戦の後を考えていた。
「今回の作戦が成功したら、アイムザットを切る。その反対なら、まだあの男の部下を演じ続ける……」



しかしカトックの「経験」はティファの「能力」によって破られる。
バルチャーに襲撃された漁師を装ってフリーデンに乗船したカトック達は、ジャミルらに銃口を向けられていた。
「軍人か?」ジャミルは問う。
そこへティファが敵意を察知し、それを報せに駆け込んできた。
その敵の正体が自分達を援護する委員会のMS部隊だということをカトックは知っている。
つまり、ティファの能力は精確であり、本物なのだ。
(そうか、俺達もこうして見破られたってわけかい……)
カトックは年端もいかない少女を睨んだ。


ティファが予知するまでもなく、アムロはドートレスのコクピットで敵襲に備えていた。
非武装の船をシージャックするだけでも難しいのに、バルチャー艦であるフリーデンを内側からだけで制圧するのは不可能だからだ。
必ず外から揺さぶりがある……ティファの「能力」でカトックらの行動を知った時、アムロやジャミルは「経験」からそれを予想した。
そうと分かっていながらカトック達にジャミル自ら対峙したのは、フリーデンの人手不足もあるが、
敵が軍隊であることをジャミルが疑っているからだろう……アムロは結論づけた。
フリーデンが揺れる。敵はフロスト兄弟のガンダム……そして謎の新型MSだ。
同時にサラから連絡が入る。――カトック達に逃げられ、ジャミル達は艦内で銃撃戦に入ったと。
オルバが駆るアシュタロンが一気にフリーデンに接近する。
アムロは出撃と同時に対艦用ミサイルを改造したグレネードをアシュタロンに向かって投げた。
「ふ…子供じゃあるまいし」グレネードを半身で避けたアシュタロンに
「オルバ!」シャギアが吼えた。
ドートレスのライフルがグレネードを撃ち抜き、空中でアシュタロンを巻き込んで爆発を起こした。
「く…やってくれる!」「あのドートレスのパイロット、手練れだな。オルバよ、私の援護を頼む」
ダメージを受けたアシュタロンに白兵戦は厳しいだろうと、シャギアは断じた。
後続のバリエントが追いついてくる。フリーデンのガンダムも発進したようだ。
「バリエントか……新型の性能、見定めさせてもらおう」

423 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 03:18:18 ID:???
委員会はドートレス系とは別に連邦の主力となりえるMSの開発を考え、幾つかの試作機を造っていた。
機動性に特化したNRX-007や防御に特化したNRX-010、火力に特化したNRX-011のように
このNRX-009を与えられた機体は簡易トランスシステムによる降下戦を想定した機体であり(制空権に特化したMSはMRMA-006が存在する)
いわばGW-9800ガンダムエアマスターの血統に属すると言えるだろう。この血筋はNRX-0015ガンダムアシュタロンに帰結する。
本来試作機であったバリエントであるが、その優秀性から量産が決定し、今は試作機ナンバーを外され、NR-001を与えられている。
「モビルスーツの性能も戦い方も、今までの連中と全然違う!」
ガロードが叫ぶ。
バリエントのビームライフルを立て続けに防いでいたディバイダーが耐えきれず、煙を上げた。
数が多く、機動力もあるので回避一辺倒で切り抜けるのは難しい。
防御を織り交ぜながら引き付けてハモニカ砲で一掃するだけでもガロードはよくやっていると言えるだろう。
「ガロード、相手はおそらく軍隊だ。フォーメーションがある! 一体一体に気を取られ過ぎるな!」
忠告は出すが、むしろ一対多の戦いの方がガロードはセンスがある、とアムロは見ている。
パイロット同士、シミュレーターで訓練をしたときも(MS乗り達はゲーム感覚だったが)普段よりも弱く感じた。
群れないで一人で生きてきた事や、本人の高い順応性からくる把握力、それに常に数の上で劣勢だったフリーデンでの戦い
それらがガロードを乱戦向きのパイロットへと進化させたとアムロは見ている。
が、あくまで一対多としては優れているが、味方である自分たちと歩調を合わせる、寡兵対大軍の戦いは上手いとは言い難い。
これはこの世界のMS乗り達全体の傾向ではあるのだが(ロアビィはその性格と機体上、他の二人よりは上手い)
アムロは軍人として半生を過ごしてきた男なので、その点で至らない仲間達のフォローに回る部分が多い。機体がドートレスということもある。
それは本来のアムロの適正ではない。
アムロこそはまさに単騎で敵を圧倒する能力があり、背中に援護を受けるべき存在なのだ。
今のアムロはフットボールで例えるならば、前線でボールを持つべきストライカーが、後方でボランチとして献身的に動き、ボールを捌いているようなものであった。
ただし、今のアムロはそれが悪くない。
「シャアの暴走を止める」という強力なモチベーションが無い今のアムロは、ゴールへの欲求が低いストライカーであるからだ。
「ウィッツ!」接近戦の武器がないエアマスターにヴァサーゴが密着するように戦っている。
「アムロ!ヘルプ!イソゲ!」アムロはウィッツが距離を取れるよう、ビームライフルのトリガーを引いた。
「軍だか何だか知らないけど、なめんじゃねぇぞぉっ!!」
一方、ガロードが十字砲火を避けながら、バリエントのお株を奪い上空からビームの雨を降らせる。
刹那、背後にまわったバリエントにも反応して撃ち落とす様はエースの貫禄すら見せた。
「腕を上げた、ガロード……ん!?」
フリーデンの壁が内側から爆破されていた。カトックの部下が立て籠もった部屋から脱出した後だ。
カメラを望遠モードに切り替えると、泳いでいる人影が見えた。ジャミルは逃げられたようだ。
同時に敵MSの撤退が始まる。「イタミワケ!イタミワケ!」「ああ、そうだなハロ」
戦いの終焉にホウとハロの頭を撫でたアムロだが……

「戦闘には、誤射はつきものでね……」

「何? 今、何をした、黒いガンダムのパイロット……ッ!」
アムロを悪寒がすり抜けていった。
それは脱出したカトックの部下を殺したオルバ=フロストの悪意、
フロスト兄弟が垣間見せた冷酷な野心であった。

424 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 03:20:04 ID:???
部下を先に行かせたカトックは、しかし自身は逃げずに踏みとどまった。
その顔は死に場所を探している男の顔だと、追いつめたジャミルには分かりようがない。
「話してもらおう! 今、我々の知らないところで、世界がどう動いているかを。
 地球連邦が、また動き出している……そうなのだろう!?」
銃を向けるジャミルの問いにカトックは答えなかった。
答える義理はないし、軍人として答える事はできない。
死ぬときは軍人か……と当たり前の事を考えてカトックは笑った。戦後も軍人として危険な任務にばかり就いてきたのだから当然だ。
死に場所を求めていたのもある。とはいえ、部下を持つ身なので命を投げ出すことはしなかった。
理に合わないと思えば命令違反も上官へ発砲もした。それは命を預かる隊長としてのカトックの在り方だった。
そして今、作戦に敗れた。しかし部下達を逃がすことには成功した。
望み通りの「負け」だ。
カトックはオルバの味方殺しを知らない。
軍人として戦いに敗れて死ぬ……良くも悪くもない人生だった。
カトックは己を振り返った。
「"俺には良い所が二つだけある"……死んだ女房の口癖だ」
しかし振り返って尚、出てくるのは軍人としてのカトックではない。
「"酒を一滴もやらない所"……それと、"諦めの良さ"だそうだ」
カトックは隠し持っていた手榴弾を手に握った。
「でも、それより悪い所もあるんだとよ。それは、"俺が嘘つき"だってことだ…」
ジャミル=ニートに殺されるよりはカトック=アルザミールに殺されて幕を閉じたい……
それはジャミルには矜恃に見えるであろう。だが、それはカトックの善意だ。
その理由をただ一人知っているNTの少女が部屋へと乱入する。
「あばよ!」「だめぇぇっ!!」
屈強なカトックの身体に、精一杯の力で組み付くティファ。
「あなたは生きなきゃだめ! だめです! 生きなきゃ…だめ!」
その必死な姿に、カトックは思わず心が揺れた。
「何故だ!? 何故俺を死なせん!?」
少女を見下ろし、カトックは問う。
「あなたは……優しい人だから」
そこには純粋で力強い眼差しがあった。



「……何か、ざわつくな」
フリーデンに着艦したアムロが、艦内に感じる空気を感じ取る。
「どうしたんだ、アムロ?」
「いや……」「ガロード!トップスコア!トップスコア!」ハロがガロードに告げる。
「ばーか、俺がゲテモノガンダム引き付けたからだろ」
「いやいや、GXのハモニカ砲が優秀なんでしょ?」
とガンダム乗り二人が負け惜しみを言うが、ガロードは(珍しく)調子に乗る様子は見せなかった。
「俺、強くなってるのかな……?」
ガロードの問いに、アムロは頷いた。
だがガロードは納得のいかないようだった。
「俺は……アムロに勝ちたい」
「………!」
「あ、MSだけの事じゃなくてさ、なんつーの? 男として?
 アムロや、ジャミルに勝てるぐらいになれなきゃ、ティファを守れないっていうか……」
「ふ……どこかの誰かと似たようなセリフを言う」
「モノマネ!モノマネ!」「ええ!? 真似?! 誰の!?」
アムロはランバ=ラルの事を思い出していた。
自分が、乗り越えたいと思った男の姿を。
今、自分がラルほどの男になれているか自信はない。
しかし、ガロードには自分やジャミルのような苦悩や挫折を味わって欲しくはない。
ガロードが自分に勝ちたいと願うならば……
アムロはこう願うのだ。



第二十一話 「俺は……ガロードに負けたい」






428 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 16:13:52 ID:???
アムロとカトックどちらも敗北を望んでいるのに
アムロのほうが遥かにかっこいいな


429 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 19:54:50 ID:???
トレーズ「かっこいいだろう?」







434 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 23:14:30 ID:???
以前の戦争でジャミル=ニートは軍に英雄と呼ばれていた。
連邦に勝利をもたらす英雄・ジャミル=ニート。
弱冠15歳のニュータイプ戦士
今、それを知る者とジャミルは対峙している。
「俺達一般兵の間でも、評判良かったぜ。…コロニーが落ちる前まではな!」
捕虜となったカトックとの尋問で、ジャミルは彼に詰られた。
「"ニュータイプの保護"か………笑わせる。
 あの戦争でトラウマ背負ったのは、ニュータイプだけじゃないのと違うか?」
カトックとジャミルの溝は埋まらないまま、何度目かの尋問は終わった。
誰もいなくなった部屋で、すり切れた写真を見ながらカトックは呟いた。
「また死に損なっちまった……こうなると、次の戦争を待つしかないか……」
そう、自分に言い聞かせるのに、少女の言葉が耳元に残っている。
――あなたは、生きなきゃだめ!



「苦戦しているようだ」テクスはアムロに語った。
そう言われてもアムロには答えようがない。
アムロも軍にいた。ジオン残党狩り部隊であるロンド・ベルであれば、尋問の手腕は多少、持っている。
「俺に手伝えって?」「そんな事は医者は頼まんさ」
テクスが年季の入った酒をアムロに渡す。
「情報も必要だが、解かり合うことも大切にしたいのだそうだ」
「ジャミルらしいといえばジャミルらしいが」
「その甘さ、長所なのか短所なのか……慰めてやってくれないか」
「サラが立候補すべきだな」「こういう時に、女性はダメだろうな」「確かに」
だがアムロは酒瓶を受け取らない。
「付き合いはそっちの方が長いだろう」
「私も軍属の身だったからな」
そうか、とアムロは納得した。
アムロは軍人で、戦争を知っている。だがこの世界の連邦軍は知らない。
ジャミルからみて共感と気安さを両方持っている、希有な存在だった。
「アイツにとって、いい機会なのかも知れないと思ってな」
「ん?」アムロは酒瓶を受け取った。テクスが隠し持っていたのだ、それなりの値はするだろう。
「連邦軍が現れたことで、アイツは自分を見つめ直す機会を得たのかも知れん
 ……そういう余裕は今までなかったからな。今も、余裕があるとは言えないが」
NTの事と、軍の……戦争の事は重なる部分もあるが、本来は同一ではない。



一方その頃、ゾンダーエプタに偶然にも接近したエニル=エルは、そこで新型のガンダムを見てしまう。
軍の警備隊のバリエントを引き離し、逃亡するのはエスペランサの性能と、彼女の腕による。
だが、フロスト兄弟の駆るガンダムまでは振り切れずにいた。
「いい加減にして欲しいわね!」
深夜に始まった逃走劇は、日が昇っても続いている。
このタフな精神力も、彼女の強さだと言えるだろう。



「だから、まずフォーメーション崩しが先決だと思うんだ!」
ガロードが先導してロアビィ達にバリエントへの攻略方法を説きながら廊下を歩いている。
「カシキリ!カシキリ!」
目的地である娯楽室の前には、この部屋のマスターであるハロが立ちふさがった。
理由を尋ねるよりはやく、彼らはガンダムのメンテを終えたキッドに掴まった。
「さ、皆さん、お仕事!お仕事!」
カトックから情報を得られない以上、足で探すしかない。
MS乗り達は海へと繰り出すのだ。
「索敵終わったら、アムロも呼んで考えようぜ」
「アムロだって元軍人なんだろ?考えるどころか攻略法知ってるんじゃねーか?」
「15年前からフォーメーション変わってないような奴らなら、対処する必要もないんだけどねぇ……」
「ウィッツ…」「可哀想な目でみるんじゃねぇ!」「ハロケッタ!アムロニダッテケラレタコトナイノニ!」

435 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 23:16:51 ID:???
娯楽室のバーカウンターで男二人がグラスを傾けていた。
「英雄…かっ」
ジャミルのグラスを持つ手が強くなる。
アムロは隣でグラスをあおった。
「英雄か。俺の世界にもそういう男が一人いたよ」
「お前自身のことではなく、か?」
「軍隊の……人を多く殺した英雄とは違うな」
敢えて、アムロはそんな言い方をした。
「少なくとも、人が望んだ英雄は俺じゃなかった」
アムロ=レイはアースノイド、スペースノイドを含めた地球圏の中で、一人の人間でしかない。
自分を一人の人間として思えばこそ、連邦を中から変えていきたいと思った。
一人で変えるのではなく、自分と同じ願いも持つ者達と一緒に、だ。
「だがニュータイプだった」
「それは……」
ジャミルの言葉に、アムロは押し黙った。
確かにアムロ=レイは一人の人間だった。UC0079~0093という舞台の上で、主役を演じた事はない。
だが、歴史の中で、アムロ=レイは最初のニュータイプとして記憶されていくだろう。
地球圏の中で主役を演じてきたシャア=アズナブルが、しかし本人はニュータイプにはなりきれなかった事と対であるように。
「少年の日の私は、ただ一人で戦争すら終わらせられると、信じていた!
 自分が英雄であることを、疑いもしなかったのだ!!」
それはそうだろう、とジャミルの叫びをアムロは思った。
Gビットとサテライトキャノンという力を持っていれば、15歳の少年がそう思うことに何の疑問もない。
周りの人間も、少年のことをそう持て囃しもしたし、望んだはずだ。
「……お前の世界の英雄は、どうなったのだ?」
「俺が……殺したよ」
グラスの中の氷が崩れた。
「アイツは急ぎすぎた……俺は、俺達は、アイツに地球連邦の、俺達の代表になって欲しかった。
 だが、アイツは内側から変えることより、外から壊すことを選んだ」
シャア=アズナブルは人がやらないことをやる才能があった。奇才と言っていい。
だが、彼は結局、彼の父・ジオン=ズム=ダイクンができなかった、『連邦政府の議員としてスペースノイドの自治独立の承認』を父の代わりにやろうとはしなかった。
一人の男として一人の女と愛し合い、家族を得るという行為すらできなかった。
そういう男だから、アクシズを落とした。
スペースノイドが生きるコロニーではなく、アクシズを落とす
それはシャアがジオン公国の再来ではなく、スペースノイドの為に立ちあがった証左である。
彼のスペースノイドへの思いは真摯であったし、彼が受ける期待を叶える方法も、役割も、演じて見せた。
そういう事ができてしまうシャアは、やはりララアが言ったように純粋なのだ。
純粋さ故に、奇術じみた生き方しか、考え方しかできなかった。
戦争を通じてでしかアムロに恨み言を吐けないのも、その亜流であるかも知れず、とどのつまり普通ではない。
そして常人と違うのが英雄であるならば、シャアは確かに英雄なのだろう。
「ジャミル、俺はその時代を知らない。けれど、お前は英雄なんかじゃなかったさ」
「………」
「その時代に、力も、役も、英雄として用意されて生まれてきたということがあっても
 お前自身はそうじゃない。そうじゃなく生まれ育ったと、今のジャミルを見て俺は言えるよ」
艦内が慌ただしくなる。
フロスト兄弟によって攻撃を受けたエニルを、ガロード達が保護したのだ。
そしてエニルによってガンダムの存在が、エスペランサのフライトレコーダーからゾンダーエプタの存在が分かった。
アルコールを抜くために、ミネラルウォーターをジャミルに渡すアムロ。
「この旅は、NTを保護する旅じゃない。お前自身の旅なんだ」
「……付き合わせて、済まないな」
ミネラルウォーターを受け取ったジャミルが、渋い顔で答えた。
「馬鹿を言うな。好きで付き合ってるんだ。
 俺には俺の旅もある。ガロードや、ティファにだって、そうあって欲しい。
 俺みたいな大人は、子供にそういう期待を強く持ってしまうな。
 ま、そっちを優先させる時がきたら、遠慮無く抜けさせてもらうぞ」
自分は元の世界に帰る、そうローレライの海で誓った。
だから今は旅の途中、そしてこの旅にある内は守るべきものの為に戦う。
アムロは、そう決めた。
そういう男でなければ、ガロードも背中の追い甲斐がないだろう。

436 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 23:20:54 ID:???
フリーデンはゾンダーエプタへと出航した。
サテライトシステムに対する警戒から、島への到着時刻を月の入りの後に設定している。
その為、ジャミルは今一度、カトックと向き合う時間を作ることができた。
「あれから考えた……それに仲間が教えてくれた。
 私がニュータイプの保護を唱える、本音の部分にあるものを……」
悲劇を繰り返したくない……それもジャミルの本音だ。しかし
「ニュータイプにこだわり続けることによって、自分の過去の傷を塞ごうとしている……
 ただ、それだけなのかもしれない……」
ジャミルが話し出してから、カトックは初めてジャミルに目を合わせた。
「アンタ、意外に弱い男なんだな。
 ……死んだ女房がよく言ってたよ。"他人の前で弱みを見せられる男は、本当は強い男だ"ってな」
態度が軟化してきたように見えたカトックだが、続いて出た言葉は拒絶だった。
「気持ちは……解からんでもない……
 だが! 俺はあんたを認めない! 俺はニュータイプというものが憎いんだ!
 ニュータイプにこだわる連中も虫が好かん!」
それは、カトックが一兵卒として泥にまみれて戦ってきた男であり、そんな男達を知っているからであった。
だが、それだけならカトックはジャミルを面罵しなかったであろう。
エリートとしてMSに乗って戦う彼らに嫉妬や不平さを内心覚えることはあっても、理性のある大人であるし
それに歩兵とMSが戦場では両方必要であるという事を理解できる軍人でもあったからだ。
「アンタらは……いや、アンタはあの悲劇を引き起こした!!」
この世界の、さらにある世代以上の者にしかわからない共通の景色をジャミルは突きつけられた。
「革命軍は連邦側のコロニーを制圧し、コロニー落とし作戦を実行した。
 それに対して、アンタらはどう対処した!? 同じ連邦のコロニーに対して、銃爪を引いただろ!!」
ジャミルは顔を背けず、カトックの罵倒を受けていた。
ジャミル=ニートはこの叱責から逃げる資格はないのだと、彼自身が分かっている。
「だから、俺は死ぬまで……アンタらニュータイプを認めない!」
艦内に、ミーティングの招集アナウンスが響いた。
カトックは道を空ける。これ以上の会話は、ない。
ジャミルも何も言わず、ドアへと歩を進めた。
「あの島、ゾンダーエプタと言う……」
その背に向かい、カトックは思わず口にしていた。
それはジャミル一人に責任を向けた罪悪感ではないか……カトックはその考えを振り切って、ことさら残酷に言い放った。
「そこでアンタを待ってる奴がいるよ」
「一体誰が?」足を止めるジャミルに、カトックは唇を曲げた。
「15年目の亡霊」



軍主導の作戦が失敗し、アイムザットは対フリーデンへの作戦指揮権を取り戻していた。
彼はゾンダーエプタにフリーデンが接近しているという報を聞き、出動命令を出した。
フリーデンもまた、この展開を予測していたのでMSを出撃させる。
戦いの勝敗を握るのはサテライトキャノンである。
ゾンダーエプタに深入りしすぎれば、フリーデンはその餌食となるだろう。
「フリーデンはこの位置で固定。敵を殲滅し、月が沈むのを待つ」
「フリーデンを狙え。月の出ている間に、サテライトの射程範囲内に誘い込む」
互いの戦術の下に、個々の戦いがある。
ガロード達は、敵に対抗するフォーメーションを実践しようとしている。
「ハエ共は俺が叩き落す!」「おこぼれはこっちが面倒見ましょ!」
アムロの役割は敵に突入し、戦闘のラインを下げさせないことだ。
エアマスターとレオパルドによる敵の掃討も、レオパルドがフリーデンの甲板で戦う都合上、
敵を野放しで進めると二機が捌ききれずに本丸のフリーデンが危険にさらされる。
その為に敵の全体の流れをコントロールするポジションが必要になるのだ。

437 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 23:22:38 ID:???
アムロはこれをガロードにやらせようとした。
GXの耐久性、機動性に加え、ディバイダーのハモニカ砲での掃討力があり、中に突入して相手を攪乱するのに向いている機体だからだ。
さらにもう一つ、敵の最高戦力であるフロスト兄弟のガンダムを引き受ける役割が必要になる。それはアムロが引き受けるつもりだったからだ。
なぜならばアムロの機体はドートレス。フリーデン側の最弱戦力である。
最高戦力に最弱戦力を当てるのは戦術における一つのセオリーだ。
最弱戦力を犠牲にすることで、常に他の部分で一つ上の戦力を相手に向けることができるからだ。
チューンアップしているとはいえ、ドートレスでガンダム二機を相手にするのはアムロでも厳しい。劣勢に立たされるだろう。
だが、死なないで戦い続ける自信がアムロにはあった。だからその作戦を提案した。
異を唱えたのはガロードだ。
だが、ガロードもアムロのMSパイロットとしての腕に異を唱えたのではない。
「俺にやらせてくれ。アイツらのガンダムは俺が止めてみせる!」
ガロードはそう言い、事実フロスト兄弟二人を相手に互角以上に戦っていた。
「フリーデンには指一本触れさせない!」
「コイツ! 僕達二人を相手にしながら!」「馴れとは恐ろしいものだな……」

ガロード達の戦いは続く。
そしてカトックの戦いもまた、始まっていた。
「フッ……船を出せ!」
ガムの中に隠し持っていた爆破装置で、カトックは監禁されていた部屋を脱出、
銃を奪い、フリーデンのブリッジに乗り込んだ。
「これで、月の出ている間にDXに対面出来る」
「ダブルエックス?」
銃口を突きつけるカトックに、ジャミルは聞き返す。
「そう。新連邦が極秘に開発した新しいガンダム……それがDXだ」

人質を取られたフリーデンは月の入りを待たずに発進する。
「何があった?」ウィッツが仕方なしにフリーデンを護衛するように位置を取る。
「ブリッジと連絡はとれないの?」ロアビィの問いに、皆無言で答えた。
「アムロ、見てきてくれ!」ガロードが決断した。
この戦場だけに限定するならば、フリーデン側にはそれぐらいの優位があった。
「分かった」アムロは短く答えて、フリーデンに着艦した。
ガロードの視界にはゾンダーエプタが見え始めていた。

艦内の雰囲気に違和感を覚えたアムロは、銃を構えながらブリッジへと移動した。
「何故こんな真似をする? 軍人としての任務に忠実なタイプには見えんが」
ブリッジの入口に背を当てて、中を伺う。
どうにも、捕虜に船をジャックされてしまったらしい。
「死んだ女房と……死んだ女房や子供と、同じ気分を味わってもらう……」
ジャミルに気を取られているカトックに、アムロは狙いを定める。
銃は……得意ではない。
「俺の家族は、あのコロニーにいた!」
「!?」
「お前が破壊した、あのコロニーにいたんだよ!!」
そこで明かされた事実、ブリッジに張りつめた雰囲気に、アムロは射撃のタイミングを失ってしまった。
「俺はいつ死んでもいい。そこが戦場ならばな。
 だが、お前達も道連れだ。サテライトキャノンを向けられる恐怖を、味わうがいいさ……」
モニターにゾンダーエプタの拡大図が映し出される。
新たなガンダム……ガンダムDXにサテライトシステムのマイクロウェーブが降りる。
アイムザットからの通告が入る。
『フリーデンの乗組員に告ぐ! ただちに武装を解除し、我々に全面降伏せよ!
 返答は3分以内! 回答が無い場合は、攻撃を再開する!』
だが、これはブラフ。
有線制御によってマイクロウェーブを受信しているだけにすぎず、未だDXはサテライトキャノンを使用できる状態にはない。
だが、他の人間には使えずとも、ジャミル=ニートには効果のあるハッタリだ。

438 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 23:25:26 ID:???
(撃つのか、本当に!?)
その、他の人間であるアムロは逡巡する。
確かに敵MSはサテライトキャノンの射程圏外へと退避した。
今、フリーデンを乗っ取っている男は死兵であるらしい。
条件は確かに揃っている。
威嚇射撃がないのは?GXのサテライトキャノンは連射が効かない。新型もその欠点は解消できなかった?
それなら複数生産すれば……いや、もし複数生産しているならば隠す必要がない。
アムロは直感的に、あれはブラフではないかと感じている。だが確証がない。
もし勘が外れていたら……例えカトックを撃ってももうサテライトキャノンの射程内なのだ。
フリーデンが撤退の動きを見せた時点でサテライトキャノンが発射されるだろう。
しかし、ゾンダーエプタ側がフリーデンのブリッジを把握している様子は見受けられない。
ならばカトックからジャミルを解放する事は損にはならない筈……アムロは銃を再び構えた。

「迷っているなら、いい事を教えてやるよ」

絶妙のタイミングでカトックがジャミルに語りかける。
「あのDXという機体、あんたが昔乗っていたGXを回収してこしらえたそうだ」
「何だと!? ……それで、『15年目の亡霊』なのか…!」
「そうだよ。アンタはもう一人の自分と戦ってたのさ……
 GXという、もう一人の自分とな……」
黄金に輝きを発するDXの後ろで、コードに繋がれた頭と腕のないGXが骸のように横たわっていた。
「キャプテン…」
サラたちがジャミルを見つめる。そこにはジャミルへの労りと信頼、覚悟があった。
彼女たちはジャミルがどのような選択をしても、後悔はないだろう。
「……降伏する!」
オレンジ色のバルチャーサインが飛んだ。
「完敗だ……捕虜になれば、どうなるのか……"明日の夕日は、見れない"かもな……」
ジャミルの言葉に、サラ達は目を合わせる。
そこへ、
「おっと! ……なんだ、嬢ちゃんかい」
ティファがキャンパスを持って駆け込んできた。
シンゴが叫ぶが、元よりカトックに彼女を傷つける気はない。
だが、彼女が持ってきたキャンパスを拾って、彼は目を見開いた。
「あなたのために、描きました」
母親と娘の絵。手を取り合い、笑い合う、平和な絵。過去の絵。
カトックの妻と娘の絵だった。
「私は、あなたに信じて欲しい……」





440 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/13(水) 23:28:05 ID:???
ティファがブリッジに駆け込む頃、既にアムロは動き出していた。
まず自分の部屋に散らばるジャンクパーツを(涙をのんで)全て海に投げ捨てた。
工具と衣類は自分と背丈が似通ったメカニックの部屋に突っ込んだ。
ポケットに入っていたセインズアイランドのスカート付きの口紅やイヤリングをこれ見よがしにデスクの上に置くと
今度はベットの上にエニルの着ていた服を探し出して(トニヤの部屋にあった)無造作に置いた。
最後に医務室でテクスと口裏合わせをすると、娯楽室の床を外した。
この部屋はロアビィによって改装されたばかりで、むりやり水を引いたりもしているので、こういう部分が存在する。
「ハロ!ハロ!」「お前も一緒に来る気か? 静かにしろよ」

飛びこんできたハロを抱えて、アムロは床に潜った。
ふぅ…と一息吐く。
「亡霊を退治するんだ、こっちも死人にならなくちゃな」
ハロ相手に、そんなことを語って気を紛らわせてみせた。
「アムロシボウ?アムロシボウ?」
「死ぬっていうより、最初から居ないフリだけどな。死んだフリはシャアの方が上手い」
影武者の使い方はハマーン=カーンが上手かった。が、それは上手くない方がいい。
「死なないことと、生きるってことは違う……」
あのカトックという男は、いつ死んでもいいと言った。それは生きた命ではないだろう。
シャアが連れ出したという本物のミネバ=ラオ=ザビはちゃんと生を実感しているだろうか?
暗闇にいると、そんな事も考える。
(ニュータイプ、15年前の英雄、ザビ家……)
その役を与えられた人間の未来は……





第二十二話「……シャアにはならないさ」






446 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/15(金) 01:29:54 ID:???
フリーデンを接収したゾンダーエプタの兵士が、艦内を歩き回っている。
足音を聞きながら、アムロはハロを抱き、呼吸を低く、見つからぬように気配を殺していた。
フリーデンは陸上戦艦ではアルプス級と呼ばれる中型クラスの戦艦だ。
だが、水上航行をも可能とし、単艦で太平洋を横断する馬力を持つ。
復興を掲げはするものの、未だ戦力は万全とは言い難い新連邦軍にとって、ガンダム三機だけでなく、フリーデンそのものも貴重な戦力だった。
「おい見たかよ、ガンダムだったぜ」「ガンダムなら見慣れているだろ、フロスト大尉の」
「馬鹿! 昔の大戦で使ってたヤツだからいいんじゃないか」
ゾンダーエプタの兵士の会話が聞こえる。
「ハシャいでいるのはお前ぐらいだぞ。パイロットは前の戦闘でやられたガンダムには殺気立ってるし、
 メカニック連中はDXに加えて整備調整しなきゃならないガンダムが増えたって嘆いていたぞ」
「ガンダムだからなぁ」「なんだそりゃ」「ドートレスやバリエントなんかとは整備の手間も違うってことさ!」
「それは分からんがよ、バルチャーの変な癖が付いてるって整備兵がぼやいてたのは聞いたぜ」
「自警団みたいなのはMSも平均化して揃えるからそのまま接収して使えるが、カスタムするバルチャーはな」
「バラして部品にするしかないってな。そういえば変なドートレスもあったか」「ああ、さっきみたら頭と腕が外されてた」
キッドが聞いたらスパナを持って格納庫に殴り込みに行きそうな話だ。
それは兎も角、兵士の会話からアムロは自分のMSを失った事と、ガンダムが無事であることを知ることができた。



捕虜となったフリーデンのクルーは3つに分けられた。
パイロットであるガロード達およびフリーデンの頭脳といえるブリッジクルーやメカニック主任のキッドらは、他のクルーと分けられた。
そしてかつてのNTの英雄・ジャミル=ニートと、戦後発見されたNT・ティファ=アディールだ。
二人は貴重な戦力であり、広告塔であり、研究対象だった。
それ以外の乗員はアイムザットにとって価値はない。
DXの情報機密保持の為に、銃殺刑を委員会に申請していた。
だが、ガロード達には幸運にも、委員会の命令は現状待機であった。
それは最高審議会の長・フィクス=ブラッドマンが新連邦政府樹立宣言を行うと宣言したからだ。
ゾンダー・エプタにいるアイムザットには予測が付かないことであったが、アジア方面の抵抗が激しいのがその理由である。
今再び、新連邦という巨大な組織が歴史の表舞台に立つ……その勢いをもって地球を席巻しようということであった。



足音が少なくなった……一通りフリーデンの調査が終わったのだろう。
ハロの時計機能をみると、時間は夜、警戒は弱まっていると考えていいだろう。
アムロは床を押し上げて外へと飛び出した。

一方で、ガロード達もまた、脱出の機会を狙っていた。
シークレットコマンド――万一、ブリッジが占拠された場合、緊急時にのみ使われる暗号。
『明日の夕日は見られない』とは『明日の夕方、日没と同時に各員、逃亡作戦を起こせ』という意味なのだ。
その為に、ガロードは通気口に潜り込み、基地の構造を把握する工作活動に入った。
MSハントを生業に身一つで生き抜いてきたガロードは、この手の仕事が上手い。

447 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/15(金) 01:31:58 ID:???
「明日の夕方、ここから逃げるって?」
エニルは医務室のベットの上からテクスに尋ねた。
アイムザットも怪我人を放置するようなルールのない軍隊に席は置いていない。
後に処刑するとしても、処刑には処刑の作法がある。
だから命に責任を持つ艦長として、医者として、職務を全うしようとするジャミルやテクスの主張を受け入れ医務室を用意させた。
「ブリッジの連中から聞いた。間違いない」
シークレットコマンドのことを、テクスはエニルに告げた。
このエニル=エルにはアムロの影武者という役をやってもらっている。
でなければ彼女が艦にいた理由、つまりエスペランサのパイロットであるということで
フリーデンとは別件で彼女はすぐさま殺されかねないという事もある。
ジャミルは自分の元にいる窮鳥を見捨てる事はないだろうが、決定権はジャミルにはないのだ。
故、彼女をクルーとしておいた方が治療をする事ができるし、アムロとしてもエニルは奇貨だった。
アムロがフリーデンのクルーであることはフロスト兄弟には知られているが、MSパイロットであることは知らない。
オルバが潜入したときも、偶々外にでていたのだ。
で、あればエニルがドートレスの正規パイロットである、という話には違和感がない。
実際、アムロの代わりにドートレスに乗って、ガンダムと戦えるだけのMS操縦技術もあるだろう。
そしてパイロットとして出撃し、負傷した為にフリーデンにドートレスは降りた、という筋が完成する。
しかし、それは彼女が寝ている間に決まったことで、彼女としては預かり知らぬことだった。
確かに治療を受けるには、今はそれが正しいのだろうが……エニルは考えていた。



ジャミルとティファはアイムザットの用意した夕食に招かれていた。
この席で、ジャミルは新政府の真意を尋ねた。
また戦争を、またNTの利用を考えているのか、と。
その為に、脱出のシークレットコマンドに一日おいたのだ。
「しかし、君と私は根ざしているモノが同じなのだ」
非難を向けるジャミルに、アイムザットは確固たる意志を持って答えた。
「私も君と同じ世代だ。多感なあの時期にあの戦争を体験した者は
 “ニュータイプ”という言葉の呪縛から逃れる事は出来んのだよ」
「レディがいらっしゃるのに、もう少し座を盛り上げるのがマナーってもんだ」
ジャミルとアイムザットの間に割って入ったのは、現在のNTではなく、招かれざる過去の軍人だった。
最も歳長けた男は、座興としてある物語を口にした。それは二人の男の愚かしさを笑う話だ。
その話に、アイムザットという男は不興を露わにし、ジャミルという男は自戒の念を見せる。
だがカトックは二人を見ず、ティファの前に並べられたカップを取り、中身を飲み干すと慇懃無礼に笑った。
「こちらのレディは退屈してらっしゃる」
言葉ではなく、行動で、もう一つ座興として少女の為に道化て見せた。
「ごちそうさん」
つられてティファが笑顔を見せる。
その少女の笑顔は、自分が今飲み干したコーヒーよりもずっと身体に染みいったようにカトックは感じた。
「ほぅ…いい笑顔だな」カトックは目に焼き付けるように少女の顔を覗くと、その場を後にした。



汚れ塗れになったガロードが、仲間達にゾンダーエプタの内部について見てきたことを語る。
「武器弾薬はここ。まずここで武器を調達する」
「でもって、こっちの格納庫に忍び込んで、俺達のガンダムを奪回する」
ガロードに続いて、ロアビィが脱出の手順を語った。
しかしその案には不安がある。ガロードはGコンの存在を挙げた。
GXはサテライトキャノンという兵器を持つが為に、安全弁としてGコンが存在している。
それはディバイダーとなった今でも残っているままだ。
そしてそのGコンが取り外されていた場合、GXは動かせない。
「なぁに、そん時はエアマスターとレオパルドがあるぜ」
ウィッツは楽観的に語るが、しかし確かに現状それしか手はなかった。
そして、それは命がけである。

448 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/15(金) 01:34:12 ID:???
カトックは一人、部屋でティファの描いた絵を眺めていた。
写真が色褪せて、枯れ剥がれていく度に、妻や娘も過去の事になっていく気がした。
そうして、幸せな記憶は忘れていき、失った悲しさだけが残っていくのが辛く、
NTを憎むことで忘れないように、死に場所を求めることで苦しみから解放されるように、願い生きてきた。
だが、今、この手の中に鮮やかな妻と娘の姿がある。

カチャ…

銃鉄の音がカトックの背中を睨む。
「無粋だなぁ」
カトックは振り返らずに答える。視線も絵に落としたままだ。
「仲間の居場所を教えて貰う」
銃を構えたまま、アムロはカトックとの距離を縮め、後ろ手でドアを締めた。
「あんたもNTをどうこうしようってクチかい。……話をしたら、普通の人間と変わらんのになぁ」
だが、彼女の知らないカトックの妻と娘の絵を描けるのはNTの力なのである。
「仲間の居場所を知りたいといった……その絵は?」
アムロはティファがキャンパスを抱えていたのを見ている。
「ティファの絵か」
そう、NTの力でモチーフを知ったとして、これを描いたのはティファという一人の少女の優しさなのだ。
「……これぐらい年頃の娘がいたとしてもおかしくない」
「そうだな。そういう風に見える」
ああ、だからラルさんとハモンさんは自分を気に懸けてくれたのか、とアムロは僅かに感慨に耽った。
その隙を、歴戦の軍人であるカトックは見逃しはしなかったが、しかし動かなかった。
「大人なら、大人の役割を果たすべきだ」
「俺は軍人だ。戦争が否定出来ん」
カトックは自分の主張を口にし、キャンパスを丁寧に机の引き出しにしまった。
もしアムロの銃が火を噴き、自分の身体を貫いたとしても、この絵が返り血で汚れるのだけは許せなかった。
その行動に、アムロはカトックが何かを抱え、揺れ動いているのではないかと、初めて気づいた。
「それで満足なのか」詰め寄るアムロに
「ガロードとかいう小僧と同じことを言う……そう、あいつもティファと同じ年か……」
「だから巻き込むべきじゃない。戦争や連邦、NTなんかに。
 NTを貴方が恨むのを、その怨念を捨てろと言う若さは俺にはない。俺も軍人だ」
一年戦争の頃はホワイトベースという特殊な環境で、アムロは十代の一兵士だった。
だがグリプス戦争、ネオ・ジオン戦争を通じて、MSの小隊長として様々な人間と一緒に作戦を行ってきた。
だから、言えない。
「貴方の家族を殺したのはジャミルでは無いはずだ」
一年戦争以来、戦場で最も勇敢に戦う連邦兵は実はスペースノイドだと言われた。
ジオン公国が「スペースノイドの自由」を掲げる度に、彼らは歯を食いしばって戦った。
なぜなら彼らはジオンのコロニー落としの為に殺されたコロニーの住人の類縁だったからだ。
だからジオン公国の憂国の志士、解放の戦士という気風を誰よりも唾棄した。彼らがそれを気取る資格など、ない。
そうやってジオン公国が、ジオンの残党がスペースノイドの為という欺瞞の旗を振る度に、本当の自由・解放が困難になると憂いた。
故に彼らはスペースノイドの未来の為に、ジオンを叩き潰そうとした。
仇をとり、汚名を濯ぎ、そして戦果によって新たな居場所を、未来を得ようとした。
だが、連邦政府は与えなかった。
彼らは勇敢で、哀しかった。
憎しみで戦うな、憎しみは連鎖する、と彼らに説くことができるだろうか?
それは報われないから戦うな、と彼らに説くことができるだろうか?
彼らはその言葉を理解しても、拒絶する。そして分かり合えず、傷つけあい、ついには互いに壊しあう。
人間の心というのはそういうもので、どこかで折り合いをつけていくしかない。
それを知っているニュータイプというのがアムロであり、他を探せばジュドーであった。
故に彼らはNTではなく人間として生きることを選んだと言える。
「コロニー落としに使われたコロニーは、革命軍に制圧された段階で、全ての住民は死んでいる……違うか?」
アムロは自身の世界の経験から、推測を立てた。
それは正しかった。

449 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/15(金) 01:36:22 ID:???
「貴方は……直接銃爪を引いたニュータイプ、ジャミル=ニートを恨むことで、家族を失った心の傷を癒そうとした」
それを当時最新鋭のGXを駆り、エースパイロットだったジャミルが知らない筈もないだろうと、アムロは考えた。
なのにそれを言わないのを見て、アムロはカトックの言い分が正しいのではなく、
ジャミルがカトックの心を理解し、同時にGXの銃爪を引き、戦後を作った自分の罪の一つとして受け入れているからだと感じた。
そういうジャミルは好きだが、状況による。
「満足だろうな」
カトックも、そしてジャミルも、だ。
「満足な…もんかよ……」
項垂れるカトックに、アムロは思わず銃を降ろした。
人に説教をできるほど、アムロも次の世代を守れたとは言えない。
(人の気持ちは繋げることができるって、知っていたのにできなかった)
アクシズを押し返す光の中で、チェーンの、クェスの、ハサウェイの叫びが聞こえた気がした。
シャアと戦うことを選んだアムロが救えなかった人達の叫びだ。
そうやって、矛盾に満ちた幾億もの光が、世界の片隅で生まれては消えていく。
「人間は、なりたい自分が分かってるのに、なれないんだよな……」
それでも、サイコフレームの起こした人間の光は、暖かかった。



エニルは何度自分に問いかけたのか、分からない。
アイムザットの前に立ち、自分の選択がもう引き返せないと分かっていて、考えてしまう。
フリーデンクルーの脱走の情報を教える代わりに、自分とトニヤの身柄を保障させること。
少なくとも、フリーデンクルーの脱走計画よりは、それを阻止するほうが成功率が高い。
だが、それは本当にトニヤの……自分の為になるのだろうか。
トニヤは言った、幸せも不幸せも自分の力で手に入れる、それが自分の生き方だと。
今、自分がこういう方法でトニヤを助けることは、彼女の生き方への冒涜ではないのか。
トニヤが生き残ったとして、彼女は仲間を失うだろう。
大切な人を失う辛さを、自分は知っているのに、友人に同じ道を歩かせようとしている。
もしトニヤと自分が逆の立場ならどうだろう。
可能性が低くても、全員が助かる道を選ぶのではないか。
――もう少し、未来を信じてもいいはずだ。
フリーデンの赤毛の男の言葉が今頃になって脳裏に響く。
「さ、話してもらおうか? 連中の逃亡計画とやらを」
アイムザットに促され、エニルは決意がつかぬまま、その内容を話した。
話しながら、エニルは思う。
エニル=エルがなりたいエニル=エルは今ここにいるのだろうか、と。



カトックはアムロの事をアイムザットに告げなかった。
そのアイムザットは、フリーデンクルーの脱走計画を口実にクルーを殺害する腹積もりだ。
アイムザットは委員会を無視して、独自にニュータイプ研究所とコンタクトを取るつもりのようだが、それはカトックには興味の無いことだ。
だが……
迷いを持ったまま、カトックはティファの部屋を訪れた。
この少女は貴重なNT、殺されることはないだろう。だがガロードは……
ドアノブを持つ手が止まる。
ティファの能力の前に、嘘は効かないかも知れない。ガロードの死を知り彼女は哀しむだろう。
それ以上に……自分の中の迷いも見透かされてしまうのではないか、という気がする。
NTの能力に対する恐怖に、カトックは頭をふった。
この扉の先にいるのはか弱く、そして優しい少女だ。
捕虜にされたとき、不安そうにガロードに寄り添う姿が思い出される。
――満足だろうな
ガロードが、アムロが放った言葉を、反芻したとき、何かに押されるように急いてカトックは部屋の中に入った。
「……どうした?」
少女は泣いていた。




451 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/15(金) 01:40:05 ID:???
「もう、みんなとはいられない……そんな夢を見たんです……」
少女の言葉を、夢だろうとカトックは切り返す。
「私の夢は現実です」
毅然と、少女は答えた。
「仲間だけではありません。あなたにも、もう会えなくなる……お別れです」
カトックとも別れるのが辛いのだと、ティファは言外に答えた。
「なぜ哀しむ。その夢が現実だとして、お前の仲間の仇だ!」
「……大切な人を失うことは辛いことです。あの人もそうです」
カトックがティファの指す人物を聞き返す。それはアムロの事だった。
「あの男もそうだというのか……」
「アムロは悲しみを乗り越えることができたから……」
自分も、この先過酷な未来があったとしても受け入れる、そうティファは達観しているのだろう。
「……っ!」
カトックは言葉を失った。
気付いてしまったのだ。この少女はニュータイプという重い力を"背負ってしまって"生まれ生きてきた。
決して望んでこの力を得た訳ではないのだ。そして、それでもティファという少女は清冽な心根を捨てずに生きてきた。
「……なら、一つだけ言っておく。お前らの艦長は、俺の家族を殺したってのは嘘だ!」
カトックは必死に悪役を演じようとした。でなければ自分が捨ててしまったものを直視できない。
それはアムロの予測した通りの事だ。コロニーの住人を殺したのは革命軍だということ。自分の慰めの為にジャミルを恨んだこと。
……そしてジャミルがそれを知っていたことまで、"ティファは分かっていた"。
「ジャミルが、俺の気持ちを分かっていたと言うのか!?」
その事実は、ティファのようなNTでなくとも察することができる。それはアムロが証明した。
カトックもまた、真実を知った衝撃からすぐに立ち直ったのはそこに思い至ったからだ。
「……お前、前に言ったな。"信じてほしい"と。どういう意味だ?」
「人の…心です……」



ガロード達は、ガンダムを回収することが出来ず、連邦兵の攻撃を受けていた。
計画が洩れたのはエニルがしたことだと、テクスは銃を突きつけられながら知った。
だが、銃口はテクスだけでなくエニルにも向けられたのだった。

援護を受け、仲間達から離れティファを探すガロードの前にアムロが現れる。
「アムロ!」「ガロード、ガンダムはこっちじゃない!向こうの格納庫に……」「なかったんだよ!」
カトックから得た情報が偽だった?アムロの疑問は、ガロードによって逃亡計画が洩れていた可能性を聞き、払拭される。
「どこにいるんだ、ティファは!」「どうしたんだ、ティファ。俺に居場所を教えてくれ」
アムロの焦りに、ガロードは怪訝な顔をする。
アムロがまるでジャミルのように、NTの力でティファと交信できるかのような台詞を吐いたからだ。
(ティファ……君は助けを求めていないのか!? 諦めたのか……?)
結局、アムロ達は兵士を一人掴まえて、アイムザットがティファやガンダムと一緒に船で脱出を謀っていることを知った。
ハロがコードを延ばし、専用エレベーターのロックを解除する。
「このエレベーターから港に直行できる」
エレベーターにガロードを乗せたアムロは、扉を閉めようとした。
アムロはテクス達の救助に向かうつもりだ。
それに、生身の戦闘ではガロードのお荷物になるとアムロは考えていた。
できれば、自分に情報を教えてくれた歴戦の兵がガロードを助けてくれることを信じて。


452 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/15(金) 01:42:13 ID:???
ガロードは出航する船を追いかけた。タイミングは一足違い。
人間の走力では追いつけない。だが、自分の姿を認めたティファが叫んでいる、助けを求めている。
「ティファァァァァァァァァァーーーーーーーーー!!!」
船のコンテナに陣取ったフロスト兄弟のガンダムがガロードを狙った。
「どうやら君の完敗だな」
アイムザットは艦橋でジャミルに勝ち誇った。

瓦礫と炎と霧に包まれた港で、ガロードは立ちあがる。
手詰まりか。いや、諦められる筈がない。
ガロードは船を探す。そんな少年の前に、男は現れ、尋ねた。
「お前さん……未来を変える気、あるかい?」



銃を突きつけられて歩くテクスは、同じ姿の隣のエニルに言った。
逃亡計画を話すべきではなかった、しかし後悔はしていない、それが医者としてはベストの答えだったと。
エニルは笑みを零した。これがトニヤの仲間かと。
そして罪滅ぼしを……彼女は胸元のボタンを外した。
自身の胸の谷間に仕込んでいた閃光弾で場を眩ますと、エニルは手際よく兵士を気絶させていった。
「!!」しかし、タイミングがわるく通りかかった兵士がそれに気づき銃を向ける。
エニルは死を覚悟した……が、次に聞こえたのは自分を貫く鉛玉の音ではく、兵士が倒れる音だった。
「ずいぶんとセクシーな格好をしているな」「この前の貴方ほどじゃないわ」
兵士を気絶させたアムロに、エニルは皮肉を返す。



アイムザットの船を、小型の船艇が追う。
その中で「なぜ俺に手を貸す?」
アイムザットの船の背中――コンテナを睨みながら、ガロードは尋ねた。
「未来なんかが見えてたまるか。ニュータイプとやらの鼻を明かしてみたい。それだけだ」
生き生きと、船の舵を握るカトックは答えた。
「くるぞ!」
コンテナの上からフロスト兄弟が攻撃を仕掛けてくる。
それを卓越した操縦技術でカトックは避けてみせた。
的が小さいこともある。オルバは苛立ち、アトミックシザースで直接攻撃をかけようと飛び出した。
コンテナの防衛が薄くなる。それがコンテナに取り憑くチャンスだ。
ガロードは船の上からMSハントに使っていた吸盤銃を構える。
だが、シャギアのヴァサーゴが陣取ったままだ。
「ふっ……」ガロード達の意図を察したシャギアは逆に彼らを狩ろうとクロービーム砲を構えた。
「ナント―!!ナント――!!」
「なにぃ……っ!!」
本来味方であるはずのバリエントから体当たりをくらい、シャギアは呻く。
バリエントは拳をヴァサーゴの腹に押しつけたまま、その腕に隠したミサイルを発射する。
「兄さん!!」
「借りを返させてもらうわっ!!」
反転するアシュタロンの背中を、もう一機のバリエントが撃つ。
「なかなか、いい機体だわ。こっちが病み上がりなのが残念だけど」
バリエントのパイロット、エニルは痛む身体に歯を食いしばった。
「エニル、無茶はするな」シャギアに組み付いたバリエントの中でアムロが叫ぶ。
「基地のMSを奪ったか……だが、新型といえどガンダムに勝てるものではない!」
至近距離からミサイルを受けて尚無傷のヴァサーゴが、アムロのバリエントの腕をもぐ。
「まだだ!」「マダオワランヨ!!」ヴァサーゴの背面スカートからビームサーベルを奪い、斬りつけるアムロ。
「兄さん!」兄のサポートをしようとするオルバの背中を
「借りを返すって言ったでしょ!」エニルのバリエントが蹴り飛ばす。
「貴様ァァァ!!」激昂するオルバ。
その隙にガロードは吸盤銃をコンテナに取り付けることができた。
「助けて貰った借りは返したわよ、アムロ。私はトニヤを救いにいく」





454 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/15(金) 01:45:15 ID:???
「しまった! このぉっ!!」
離脱するエニルのバリエントを諦め、船に狙いを定めるオルバ。
しかし、カトックが一枚上手だ。ガソリンと手榴弾で船を時限爆弾に仕立てた。
ガロードとカトックが海に飛びこむ。同時に船の爆発がアシュタロンを吹き飛ばした。
「ええい、何をやっている! シャギア達に伝えろ! 本艦に帰投し、牽引ワイヤーを切り離せ!」
アイムザットの指示に、シャギアはアムロを引きはがすと、ガロード達が組み登ったコンテナを切り捨てた。
「ふふ……侮って後で痛い目に遭いたくないのでな。コンテナを破壊しろ!」
ヴァサーゴとアシュタロンがコンテナにビームを放つ。
「ガロードッ!!」「キケン!キケン!」
アムロのバリエントが盾になって割って入る。
コンテナは沈んでいったが、ガロードとカトックは無事だ。
海上に浮かんだバリエントは穴だらけで、起動する気配もない。
アムロも腕から血を流しながら、コクピットから身を乗り出す。
「アムロ!ケガ!ケガ!」ハロが心配そうにアムロの周りを跳ねた。
「ガロード、進め!!」アムロはずぶ濡れのガロードに叫んだ。
アイムザットが虎の子のDXを島に残す筈がない。まして沈める筈もない。
新型はアイムザットの船の中にある。ティファたちを助け、それを奪い、勝つ。
それが残された一つの光明だ。
ガロードは頷き、牽引ワイヤーのブイにしがみつく。船がこれを巻き取る。労せずして船に侵入できる筈だ。
「ガロード、ティファは助けを求めていたか?」
「え……あったり前だろ!」
「それならいい。ティファも運命を受け入れてはいないってことだ」
アムロは額に汗を掻きながら、カトックを見上げた。
「ガロードを、頼みます」
「ああ……」
カトックは短く答えた。
アムロは安心して倒れた。



「アムロ!アムロ!!」
暫くしてアムロは目を覚ました。
船はもう目視できないほどに遠い。腕の応急措置はハロがやったものか。
曇天の空をアムロは見上げた。もうすることがない。フリーデンの仲間の救助を待つだけだ。
「乗り越えなきゃ、ダメなんだ……」
空に向かい、アムロは呟いた。
ティファはアムロが悲しみを乗り越えたといった。
乗り越えることと受け入れることは違う。
ティファが悲しみを受け入れようとしているなら、アムロはそれが我慢ならなかった。
それは死んでいると同じだ。
アムロは地球にしがみついてた七年間を振り返った。
空を白鳥の群が横切っていった。

「もう一つの世界(あす)があるなら……想いのまま走ってみせる。俺は……」

ララア、シャア、戦友達、そして宇宙世紀のNTにアムロは誓った。




第二十三話「二度と迷わない魂で」







460 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/16(土) 00:08:58 ID:???
ジャミルとティファを監禁しようと、兵士達は二人をせっついた
「みんな、頑張ってる……」
ティファの言葉を、ジャミルは聞き返した。
「みんな、未来を変えようと必死で頑張っています」
ティファはもう一度、語った。
「……私も未来に逆らうか」
戦後を引き起こしたNTとしてではなく、一人の人間として、一人の大人として。
ジャミルは見張りの兵士の脳天にハイキックをぶちかました。
「いくぞ、ティファ」
銃を奪い、NTの予測した未来を乗り越える事に
「はい!」
ティファは力強く頷いた。

同じ頃、ガロードとカトックも後部デッキに乗り込み、DXを目指していた。
「なあオッサン! オッサンって意外とイイ奴だったんだな!」
「へっ…死んだ女房もそう言ってたぜ!!」
二人の歩兵としての戦闘能力は異常に高く、アイムザットと共に行動する兵士達をモノともしなかった。
それでも進行速度には限界があり、その時間がアイムザットに二人の目的を予測された。
その為、DXのある格納庫に先に狙撃兵を配置された二人は、足止めを食らっていた。
「お前、俺に命を預けられるか?」
打開策をカトックが提示する。それは経験に裏打ちされた発想ではあったが、奇策であった。
大丈夫か?と尋ねるガロードに、カトックは言い返す。
「"人を信じろ"って、ティファが言ってたぜ?」
ガロードは笑った。


一方、ジャミルはティファの導きであるモノが保管されている部屋へ来ていた。
それは……

「DXにも、Gコンがいるのか!!」

ようやくDXに乗り込んだガロードの窮地を救う為だ。
DXのGコンはアイムザットが所持している。
だが、互換性のあるGXの、かつてジャミルが使い、ガロードに受け継がれたGコンは、ティファの手の中にある。
二人は走る。ガロードに再び「力」を届ける為に。



アムロはフリーデンに回収された。
脱出の状況を聞くに、エニルの助けがあったとはいえ、ゾンダーエプタの静謐さが気になった。
ウィッツやロアビィはAWを生きる者として直感でそれを感じていたが、アムロはやや整理して考えることができる。
まずアイムザットが軍を離れて、独自にNT研究所なる勢力とコンタクトを取るとして、
アイムザットの船に乗り込んだ兵士はアイムザットのシンパ、私兵になったと考えるべきだろう。
だが、それはゾンダーエプタの総兵力の一部である筈だ。
だというのにアイムザットが島を離れてから、引き潮のように残存兵が撤退した。
ゾンダーエプタに残った兵士も全てアイムザットのシンパで、彼に合流しようとしているのか?
それは考えにくい。基地の駐留部隊一つ丸ごと反乱を起こすというのは、如何に軍隊が上官の命令遵守の組織であるとはいえ
反乱の頭にカリスマが無くては成功しないものだ。アイムザットにそのような魅力があるとは思えなかった。
もし基地の兵士全員に計画を打ち明けていたとすれば、反対派が出るはずであり、彼らが抑留されているならばこれを気に行動を開始する筈だし
反対派を予め粛正しているような雰囲気は感じなかった。
ゾンダーエプタに残っている兵士を欺いていると考えるのが妥当だが、それではこのタイミングで撤退を開始するのはおかしい。
フリーデンクルーは抵抗しているとはいえ、数ではゾンダーエプタの兵士の方が多いのだ。情報部であるアイムザットが機密保持を重要視しない筈がない。
ここでフリーデンクルーを逃すなら、わざわざ手の込んだ処刑計画など必要ないのだ。
簡単にバリエントを奪取できたことも気になる。幾つかのバリエントはアイムザットの船の中にあるが、運びきれなかったものを放置はしないだろう。
「……別系統の指令が出ているのか?」

461 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/16(土) 00:12:39 ID:???
ガロード、カトック、ジャミル、ティファらの抵抗で混乱する船の中で
戦いに加わること無く、その喧騒を不敵に笑う男達がいた。
暗がりの中で通信を行う弟。
「ゾンダーエプタからの撤退はそろそろ完了するよ、兄さん。もちろん『アイムザットからの命令』でね……」
アムロによる思わぬ抵抗はその二人を苛立たせはしたが、彼らの目的を妨げるものではなかった。
「海鳥の群れが来た時に、DXは誰の手にあるか、だな……」
兄は暗い喜びをその瞳に浮かべた。



「私も、未来に逆らいたくて……」
「うんっ!」
少女は手にもったGコンを少年へ託した。
この冒険が始まった日、彼女が少年を白き巨人の元へと導いたように。
だが、一つだけ違うことがある。
あの日、少年にGXを与えたのは、夢の導き。運命の誘い。
今、少年にGコンを与えるのは、少女の意志。運命へのあがらい。
その二人を挟んで、ジャミルとカトックは満ち足りたものを共に感じていた。
「いいもんだなぁ……」
カトックはようやく、自分の中で戦争を過去のものにできたと感じた。
きっと「貴方はいつも遅すぎるのよ」と妻は笑うだろう。
「ハッ!」
アイムザットの兵士の殺気にティファが反応する。
扉を背にしていたジャミルや、ティファが死角になったガロードは反応が遅れた。
ただ一人、カトックだけが飛び出せる位置にいた。
そしてカトックは自らの身体を差し出し、彼らを守った。
「やめろぉっ!」そう叫んだ。それは敵に対する哀願ではなかっただろう。
アイムザットの兵士達は、大なり小なりアイムザットに共感しえる部分があるから付いてきている筈だ。
カトックはNTが気に入らないと言った。だからアイムザットも好かないのだと。
しかし戦争という過去に拘っている部分で、アイムザットとカトックは同じだった。そしてこの場にいる兵士達も。
だからカトックは気付いて欲しかった。もう戦争は終わったのだと。新しい時代が来ているのだと。
その象徴であるガロードとティファを、自分たちの手で失うことをして欲しくなかった。
だから、止めた。
それは通じる筈もなく、カトックの身体は穴だらけになり、力を失った。
だが、守ることはできた。今度は。
望んだ自分になれたのだ。
「……ずっと……死ぬ場所を探してたが……これなら悪くない……」
ジャミルの背中をカトックは見た。彼はアイムザットらの攻撃を迎え撃っている。
ガロードとティファとの別れの時間を、守ってくれていた。
それが、大人のすることなのだろう。
「ガロードのこと、大事にしてやれよ……」
カトックの手を握るティファの手が強くなる。
強くなっているとカトックは思ったが、もう感覚が無かった。
「ガロード……お前、言ってたよなぁ……
 "今の大人は、お前らをごたごたに巻き込むだけだ"って」
「そんなことは今はいいっ!」
そんなこと、か……。そう、そんなことだ。
だが言わなければならないことがある。
「戦争も、ガンダムも、お前達からすりゃぁ生まれる前の代物だ
 ……振り回されるこたぁない。すきにしろ……
 ただし! これだけは……忘れるなっ!」
カトックはしっかりとガロードを見上げて、言った。

462 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/16(土) 00:15:18 ID:???
「過ちは……繰り返すな……!」
カトックは自分を振り返ったジャミルと僅かに視線を交わした。
NTでもなんでもなかったが、二人は確かに声なき言葉を交わした。
それは謝罪でも後悔でもなく、「二人と頼む」というカトックの言葉を、ジャミルは受け取った。
「じゃあ…な……」
何かが、カトックの身体の中から抜けていった。
NTであるティファにはそれを感じることができた。
それが、命であったか、怨念であったか、あるいは別の何かであったか、分からない。
しかし、それとは別にカトックの中に芽生え、留まった温かいものが、確かにあった。
「ジャミル……援護を頼む!」
確かにあって、ガロードに受け継がれたのだと。
ガロードが駆ける。
DXへ。15年前の悲劇を起こした力を受け継ぐ機体へ。
運命に逆らうGコン(ちから)を握りしめて。
「ダブルエックス……起動ッ!!」




フリーデンの医務室で、エニルと共にテクスの治療を受けていたアムロは、身体を震わせた。
「ドウシタ?ドウシタ?」アムロを心配するハロの頭を、彼は撫でた。
「優しい人がね、家族のところに帰ったんだよ。だから少し寂しくなった」
エニルが怪訝そうな顔をアムロに向ける。
「あの男か?」
アムロが別の世界のNTであることを、つまり人の死を察することができるという事に思い至ったテクスが尋ねる。
「俺に、ガロードとティファを……未来を頼むと言っていた」
アムロは一つ、溜息を吐いた。
「ダメだな……大人になると、涙の流し方が分からなくなる……」
その言葉にエニルは押し黙った。
自分は、逃亡計画を話したことを、どう明かし、どう償えばいいのだろうと。
「帳消しだろう」
テクスの言葉に、アムロとエニルが顔を見上げる。
「哀しいことを哀しいと言える代わりに、哀しさを別の何かに変えられるのなら、素直になれないことに苦しむ必要はない」
船が揺れた。DXに乗ったガロードがジャミル達を降ろしにフリーデンに着艦したのだ。

「うおおおぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ライフルもシールドも持たないDXだが、アイムザットの放ったバリエントの編隊をモノともせずに撃退していた。
「アシュタロンとヴァサーゴは何故出ない!? シャギアとオルバはどこへ行った!?」
アイムザットは焦りを隠そうともせずに叫んだ。
確かにフロスト兄弟は姿を消していた。それもかなり前から。
彼らが職務に忠実であるならば、アムロの特攻でダメージを追ったとはいえ、ガンダムで生身のガロードとカトックの侵入を防げない筈がない。
勝敗はDXの完全勝利に終わる。
しかし、ゾンダーエプタの向こうに機影が映る。
それは「参謀本部直属の極東軍! どうしてこんなところに!?」アイムザットは戦慄した。
彼に従った兵士達も、彼を振り返る。反乱が失敗すれば自分たちに未来はない。
戦力はDXも、バリエントも失っている。
残っているのは……
「海鳥達がやっと来たか……」
フロスト兄弟のガンダムである。しかし彼らこそ、参謀本部の軍を手引きした張本人であることは明らかだった。
兄弟に銃口を突きつけられたアイムザットが、彼らに裏切りの理由を問う。
「復讐、と言ったら見当違いかな」
『似て非なるモノ』と烙印を押された者の苦しみ……それがフロスト兄弟の行動理由だ。
「ニュータイプでもないお前達をここまで取り立ててやった恩を忘れて! カテゴリーFめ!!」
アイムザットが二人を罵る。それこそが兄弟の苦しみであると、アイムザットは理解できない。
普段、感情を露わにしないシャギアが目を見開き、臓腑を振り絞るように叫んだ。
「一つ言っておこう。未来を創るのはニュータイプではない。"カテゴリーF"と呼ばれた我々だ!」

463 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/16(土) 00:18:49 ID:???
サテライトキャノンのマイクロウェーブがDXへと舞い降りる。
黄金の羽根が粒子を吐き、その充電を主張した。
ガロードは躊躇う。
今、サテライトキャノンを使えば、敵の増援を全て消滅することができるだろう。
だが、今、この新しいガンダムで、人を殺す為に、憎しみの為に、サテライトキャノンを使えば、それは戦争の時と同じ使い方だ。
――過ちは繰り返すな!!
カトックの魂が、ガロードの中に焼き付いている。
それが、銃爪を引かせた。
「ガロードッ!」
ジャミルが叫ぶ。
ティファが、アムロが、フリーデンの仲間が、見守る中、サテライトキャノンの銀光は敵軍ではなく、
無人となったゾンダーエプタを飲み込んだ。
「敵が、後退していきます!」
島一つを蒸発させるサテライトキャノンの威力を見、敵は撤退を決意した。
それにはフロスト兄弟からの報告もある。
サテライトキャノンの光が海を支配する頃、二機のガンダムが空へと消えた。
アイムザットという、NTに幻想を抱いた男の亡骸を残して。






その日、世界に向けてブラットマンによる新政府樹立宣言が発表された。


         ――あの、忌まわしき大戦から15年……――
          ――ついに今日という日が訪れた!!――

アムロは、カトックが置き忘れていたティファの絵を持ってきていた。
彼の棺の中に、その絵を添える。

  ――混沌たる戦後は幕を閉じ、今我々の前にあるのは、輝かしき未来である!――

ルチルの時と同じように、また一人、過去を生きた人間をフリーデンは弔う。
斜陽の海に、棺が沈んでいく。

――しかし、世界はいまだに一つではなく、多くの混乱が人々の苦しみの根源となっている――
    ――だが、その苦しみも今日という日を境に新たな局面を迎えるだろう――

希望は決して捨ててはならない……NTの白イルカは語った。
過去に生き、未来を信じたモノ達の命の輝きは、
枯れることのない泉の中に溶けて新しい時代を見守ってくれると、アムロは信じたかった。

        ――我々は、死んでいった多くの同胞に約束しよう!――
         ――あの忌まわしき戦争を、二度と起こさぬと!――

サテライトシステムの光に導かれたフリーデンの海の旅は、終焉を迎えようとしていた。

        ――生き残った我々は、決して、過ちを繰り返さない!――
         ――新たな秩序が輝かしき未来をもたらすだろう――

ティファの心に、現在を信じる強さを、
ジャミルの心に、過去の後悔との決別を、
ガロードの心に、未来を切り開く決意を、
出逢えた人が与えてくれたすべてを勇気に変えて、この旅を終わりにしよう。


         ――私は今ここに、新連邦政府の樹立を宣言する!――

464 : 通常の名無しさんの3倍 : 2010/10/16(土) 00:21:05 ID:???



『貴方はまた一人旅立つのでしょう?』
アムロの心に語りかけたそれは、ララアの声かと思ったが、ティファの心であったようだ。
前を見据え、落暉を睨むガロードの背は大きく見える。
彼自身が越えたいと思った男達の背中であるように。それよりももっと先の一歩を感じさせるように。
そんなガロードとは反対に、等身大の少女がアムロを正視していた。
『悲しみからそっと守りたい、君達の未来を……。そう思ったからね』
この世界に自分がやってきて、帰るまでに、自分を迎え入れてきた人達に恩返しをしたいんだ。
アムロは風と光の中で微笑みを見せた。
『大丈夫だ、離れていても。僕達は感じあえる』





第二十四話『命を繋いだもの同士なんだから……』






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 音量調節ほか。)
その他こまごまと修正。
更新分はこちら
から完成版.zipを
落としてください。 

普通プレイの人、
応援してます。

20090809
日本視覚文化研究会
記事紹介ありがとうございます。
感謝感謝です。


20090809
ねたミシュラン

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記事の紹介
本当にありがとうございます。
この場を借りて
お礼申し上げます。
これからも
よろしくお願いいたします。


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オナシャス



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  /ヽ) / \
 < / ̄Y ̄丶>
`〈X  ≡  ム〉
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\幺ノノ i丶>/
 \マソ)ノソア/
  丶ミュZノ


なんかすげえ心温まるコメが多くて
涙がでちゃいました。
とりあえず
ずっと続けていくつもりなので
お手紙、コメントどんどんしてくださいね
くぎゅううううううううううううううえあああああああああああああああああああ
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